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辺境の王
草原の戦い
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すぐに、ロント王国がアースレインに侵攻してきたと、裕太の下へ報告がやってきた。
「マジか・・・戦後処理とかで忙しいこんな時に・・で、敵の兵力は?」
「物見の兵の話では、騎馬兵が千騎ほどと・・・」
「全部騎兵なの?」
「はい。ロントは元々騎士の国と呼ばれるほど、騎兵を重んじる国ですので」
「それじゃ、早めに攻めてくるね。ゼダーダン。すぐに兵の準備をしてくれ」
「はい」
それにしても騎兵が千騎か・・驚異的ではあるけど、今のうちの兵力なら恐れることもないか・・
「エイメル。準備いいぜ」
アズキがやる気満々でやってくる。ガゼン兄弟とラスキー、それとファシーとヒュレルも出陣する。クリシュナは、デイラン共和国の動きが怪しいとの情報があったので、竜人族の部隊を率いて、デイランとの国境に行ってもらっている。
こちらで準備した兵力は二千、相手が騎兵千でも、十分に戦える戦力である。
ロント軍と相見えたのは、旧クショウの領内にある、ザガ平原であった。相手は全て騎兵である。馬の走りやすい平原は、敵に有利な地形に思われた。
「真面にぶつかると、騎兵の攻撃力でやられるぜ」
アズキが珍しく真っ当なことを言ってくる。確かに、このまま正面からぶつかるのは得策ではない。まあ、それは少し考えがあるので、その作戦をみんなに伝える。
「なるほど。ちょっとは考えてるじゃねえか王様」
アズキが意味やな感じで言ってくる。そんな彼女の反応は無視して、ラスキーに例のことをお願いする。
「わかりました、エイメル様、それでは、その手順で」
そう言うと彼女は、護衛の兵士を連れて、どこかへ移動する。
「アリューゼ様、アースレインの軍が現れました」
「そうか、こちらの情報は入っているだろうに、まさか平原で迎え撃ってくれるとは思わなかったな」
「そうですね。まさか、我らロントの騎兵の強さを知らぬとは思いませぬが」
そうアリューゼに話したのは天星騎士団の騎士団長である、ガイエルという男であった。ガイエルは2メートルを超える大男なのだが、その均整のとれた体格と、卓越した身のこなしで、その巨体を感じさせない動きをしていた。剣の腕も、アリューゼには及ばないが、辺境に名を馳せるほどの実力を持っていた。
アリューゼは、アースレイン軍を見て、勝機を感じていた。敵は確かに数は多いが、そのほとんどが歩兵で、騎兵の突撃で陣形が簡単に崩せそうに見えたからである。
「魚鱗の陣を組め、突撃して一気に叩くぞ!」
しかし、陣を整えたロント軍であったが、少しの変化に気がつく。風上の方から、うっすらと霧が流れ込んできたのである。その霧は、どんどん濃くなっていき、視界が見えなくなっていく。
「どうしますかアリューゼ様、霧が濃くなってきましたが・・・霧が晴れるのを待ちますか?」
「いや、それだと接近を許してしまうかもしれない・・接近されれば、騎兵の優位性を失ってしまう。そうなると数が少ない我が軍は不利になるのは明白だ。このまま突撃しよう。地形的に、今から移動するのは難しいから、奴らには避けることはできないだろう」
アリューゼは、周りの地形を見ても、歩兵ばかりのアースレイン軍が大きく移動できないことを理解していた。なので、見えなくても騎兵で突撃できると判断したのである。
そう判断してからのロント軍は早かった。すぐに加速して、アースレイン軍に襲いかかった。アリューゼにとって一つ誤算だったのは、霧の存在が、アースレイン軍よって意図的に作られたものだと予測できなかったことである。霧によって見えなくすることが目的だと気づいていれば、突撃の命令は出さなかったかもしれない。
ロント軍が、アースレイン軍の近くに来た時に、その異変が起こった。突撃するロントの騎兵が、次々と倒れていったのである。それは地面に掘られた無数の穴のせいであった。穴の深さは30cmくらいと深くはないが、加速して突撃してくる馬を倒すには十分の深さであった。
倒れた馬に、アースレイン歩兵隊の長槍が襲いかかる。次々と馬を殺され、もはや騎兵として機能しなくなったロント兵は、見えない戦場を散り散りに逃げ始めた。
「くっ・・・やられた・・まさか、敵にエレメンタラーがいるとは・・」
様々な気象を操るエレメンタラーは、大陸全土で見ても希少な存在であった。辺境ではロギマス王国に一人いるのは知っているが、まさかアースレインに存在するとは夢にも思わなかった。その、ロギマスのエレメンタラーが、アースレインのエレメンタラーと同一人物だとは微塵も考えていなかった。
ロントが敗走する中、アリューゼは数騎の騎士とともに、敵将の近くまで駆け寄っていた。それは逆転で敵将の首を狙うものではなく、味方を少しでも多く、敗走させる為であった。
アリューゼが、裕太の姿を見つけ、一気に近づく。しかし、それを、赤い鎧を着た女剣士に阻まれた。アリューゼは赤い鎧の剣士・・そう、アズキの攻撃を、馬上で受けたが、あまりの威力に、馬ごと後ろへ吹き飛ばされた。
倒れた馬を労わりながら、アリューゼは立ち上がる。そこへアズキが静かに歩み寄り、二人は、短く長い時間、お互いを見つめ合う。どちらかが少しでも動けば、そこから激しい激闘が繰り広げられるのは想像に足りる状況であった。
「マジか・・・戦後処理とかで忙しいこんな時に・・で、敵の兵力は?」
「物見の兵の話では、騎馬兵が千騎ほどと・・・」
「全部騎兵なの?」
「はい。ロントは元々騎士の国と呼ばれるほど、騎兵を重んじる国ですので」
「それじゃ、早めに攻めてくるね。ゼダーダン。すぐに兵の準備をしてくれ」
「はい」
それにしても騎兵が千騎か・・驚異的ではあるけど、今のうちの兵力なら恐れることもないか・・
「エイメル。準備いいぜ」
アズキがやる気満々でやってくる。ガゼン兄弟とラスキー、それとファシーとヒュレルも出陣する。クリシュナは、デイラン共和国の動きが怪しいとの情報があったので、竜人族の部隊を率いて、デイランとの国境に行ってもらっている。
こちらで準備した兵力は二千、相手が騎兵千でも、十分に戦える戦力である。
ロント軍と相見えたのは、旧クショウの領内にある、ザガ平原であった。相手は全て騎兵である。馬の走りやすい平原は、敵に有利な地形に思われた。
「真面にぶつかると、騎兵の攻撃力でやられるぜ」
アズキが珍しく真っ当なことを言ってくる。確かに、このまま正面からぶつかるのは得策ではない。まあ、それは少し考えがあるので、その作戦をみんなに伝える。
「なるほど。ちょっとは考えてるじゃねえか王様」
アズキが意味やな感じで言ってくる。そんな彼女の反応は無視して、ラスキーに例のことをお願いする。
「わかりました、エイメル様、それでは、その手順で」
そう言うと彼女は、護衛の兵士を連れて、どこかへ移動する。
「アリューゼ様、アースレインの軍が現れました」
「そうか、こちらの情報は入っているだろうに、まさか平原で迎え撃ってくれるとは思わなかったな」
「そうですね。まさか、我らロントの騎兵の強さを知らぬとは思いませぬが」
そうアリューゼに話したのは天星騎士団の騎士団長である、ガイエルという男であった。ガイエルは2メートルを超える大男なのだが、その均整のとれた体格と、卓越した身のこなしで、その巨体を感じさせない動きをしていた。剣の腕も、アリューゼには及ばないが、辺境に名を馳せるほどの実力を持っていた。
アリューゼは、アースレイン軍を見て、勝機を感じていた。敵は確かに数は多いが、そのほとんどが歩兵で、騎兵の突撃で陣形が簡単に崩せそうに見えたからである。
「魚鱗の陣を組め、突撃して一気に叩くぞ!」
しかし、陣を整えたロント軍であったが、少しの変化に気がつく。風上の方から、うっすらと霧が流れ込んできたのである。その霧は、どんどん濃くなっていき、視界が見えなくなっていく。
「どうしますかアリューゼ様、霧が濃くなってきましたが・・・霧が晴れるのを待ちますか?」
「いや、それだと接近を許してしまうかもしれない・・接近されれば、騎兵の優位性を失ってしまう。そうなると数が少ない我が軍は不利になるのは明白だ。このまま突撃しよう。地形的に、今から移動するのは難しいから、奴らには避けることはできないだろう」
アリューゼは、周りの地形を見ても、歩兵ばかりのアースレイン軍が大きく移動できないことを理解していた。なので、見えなくても騎兵で突撃できると判断したのである。
そう判断してからのロント軍は早かった。すぐに加速して、アースレイン軍に襲いかかった。アリューゼにとって一つ誤算だったのは、霧の存在が、アースレイン軍よって意図的に作られたものだと予測できなかったことである。霧によって見えなくすることが目的だと気づいていれば、突撃の命令は出さなかったかもしれない。
ロント軍が、アースレイン軍の近くに来た時に、その異変が起こった。突撃するロントの騎兵が、次々と倒れていったのである。それは地面に掘られた無数の穴のせいであった。穴の深さは30cmくらいと深くはないが、加速して突撃してくる馬を倒すには十分の深さであった。
倒れた馬に、アースレイン歩兵隊の長槍が襲いかかる。次々と馬を殺され、もはや騎兵として機能しなくなったロント兵は、見えない戦場を散り散りに逃げ始めた。
「くっ・・・やられた・・まさか、敵にエレメンタラーがいるとは・・」
様々な気象を操るエレメンタラーは、大陸全土で見ても希少な存在であった。辺境ではロギマス王国に一人いるのは知っているが、まさかアースレインに存在するとは夢にも思わなかった。その、ロギマスのエレメンタラーが、アースレインのエレメンタラーと同一人物だとは微塵も考えていなかった。
ロントが敗走する中、アリューゼは数騎の騎士とともに、敵将の近くまで駆け寄っていた。それは逆転で敵将の首を狙うものではなく、味方を少しでも多く、敗走させる為であった。
アリューゼが、裕太の姿を見つけ、一気に近づく。しかし、それを、赤い鎧を着た女剣士に阻まれた。アリューゼは赤い鎧の剣士・・そう、アズキの攻撃を、馬上で受けたが、あまりの威力に、馬ごと後ろへ吹き飛ばされた。
倒れた馬を労わりながら、アリューゼは立ち上がる。そこへアズキが静かに歩み寄り、二人は、短く長い時間、お互いを見つめ合う。どちらかが少しでも動けば、そこから激しい激闘が繰り広げられるのは想像に足りる状況であった。
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