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辺境の王
ガゼン兄弟
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「俺の名はダグサス・ガゼンだ。隣にいるのは弟のウェルダ・ガゼン・・そう、ガゼン兄弟とは俺たちのことだ」
「まあ、偉そうに出てきて、そうじゃなかったらコントだな」
「ふっ・・面白い奴だな新国王。それにしても前王は聞き分けのいい男だったが、お前はそうではないみたいだな」
ダグサスは、挑発的な言葉で俺の腹の中を探っているようである。
「聞き分けはいいと思うけど、山賊にお金を渡すなんて選択肢を持ち合わせてないだけだ」
「そうか・・それは残念だ!」
そう言って手に持った巨大な戦斧を振りかざして俺の頭を粉砕しにくる。その攻撃の速さ、威力から見て、そこにいる誰もが俺の頭が吹き飛ぶと思っていた。
「な!?」
驚きの声を上げるダグサス。攻撃してきた戦斧は、寸前のところで俺の手によって防がれていた。あの攻撃を片手で防がれたのがよほどショックだったのか、彼は呆然と動きを止める。その隙を逃さず、俺が動き出したのを見て、弟のウェルダが声を上げる。
「兄者!」
しかし、その時には俺はもう、ダグサスの懐に入り込んでいた。そして渾身の拳をその腹にお見舞いした。
その重い一撃に、ダグサスは口から胃液を吐き出し悶絶する。そしてそのまま動かなくなった。
ウェルダがその光景を見て、すぐに巨大なハンマーを振り回して、兄を助ける為に突っ込んでくる。だが、その時には、彼の眼の前には棒切れを持った女剣士が立ちはだかっていた。アズキは、ウェルダの振り回す重そうなハンマーを棒切れで弾き飛ばすと、彼の首あたりにその棒切れで強烈な一撃を放った。ウェルダはそれを食らうと、白目をむいて気絶した。
圧倒的な強さのボスが、さらに圧倒的な力によって蹂躙される光景を見た山賊たちは、金縛りにあったようにその場から動くことができなくなっていた。そんな彼らに、裕太は声をかける。
「とりあえず全員整列!」
その声に逆らうことのできない山賊たちは、声に従ってぞろぞろと並び始める。よほどビビっているのか、気絶していた仲間も抱えて列に参加させる山賊たち。そして綺麗に全員が整列した。
そこでガゼン兄弟を起こしてみる。二人は気がつき俺の顔を見ると、後ろへ飛び下がった。
「ガゼン兄弟。相談があるんだけど聞いてくれるか」
ガゼン兄弟は無言で何度も頷く。俺は話を続けた。
「君ら兄弟と、後ろにいる部下全てを、俺の家臣に取り立てようと思うんだけどどうかな? 多分、みんな現状より高い給金を払えると思うし、これから俺はこの国をどんどん大きくしていく。ここの活躍によってはどんどん出世させていくし、給金も上げていくつもりだ。もし、俺の部下になるのが嫌なら、この国から出て行ってくれるかな、命は取らないよ」
俺が話し終わると、ガゼン兄弟はお互いの顔を見つめ、尻餅ついて座り込んでいた状態から、膝をつき、姿勢を正すと、こう宣言する。
「我ら兄弟、命ある限り、アースレイン王に忠誠を誓います」
兄弟の部下の山賊たちも、二人に倣って膝をつくと、忠義の礼を尽くした。こうして、俺は一気に兵力を4倍に増やすことに成功した。
山賊たちを引き連れて城に戻ると、ゼダーダンが驚きのあまり腰を抜かしてしまった。
「まさか退治するどころか家臣にするとは・・・」
さすがにそれは予想していなかったようで感心するより、ただ驚くばかりでった。しかし、これによって困ったことが浮上した。城が狭くて全員、中に入れないのである。
とりあえずは、入りきれない者は、城の前でテントを張って野営することになったけど、早急にどうにかしないと可哀想である。
「城の増築か・・兵舎を建設するか・・」
俺がそんなふうに考えていると、ゼダーダンが現実を教えてくれる。
「どっちにしてもお金がかかりますね・・残念ながらそんな貯蓄、この国にはありません」
「それじゃ、とりあえず、どっかでお金を借りようか」
俺が軽くそう言うと、ゼダーダンはさらに現実的なことを聞いてくる。
「返すあてはあるのですか」
「あるよ。一ヶ月後には返却できる」
もちろん夢子からの仕送りを当てにしての発言なのだけど、それを聞いたゼダーダンは納得したようにこう提案してきた。
「では、アルビオン家から借り入れしましょう」
「アルビオン家って何?」
「この国だけではなく、周辺国にも商業基盤を持つ大金持ちです」
「そんな大金持ちがこの国に住んでるの?」
「はい。しかし、一点だけ懸念点が・・・」
「何?」
「アルビオン家の現在の当主ですが、あのリュジャナ嬢でして・・」
「誰それ?」
「お忘れですかエイメル様、あなたの幼馴染でご友人だった方ですよ」
「ごめん・・・ちょっと昔の記憶が・・」
「リュジャナ嬢とエイメル様は、それはそれは仲が良かったのですが・・何があったのか、ある日から険悪な関係になりまして・・・エイメル様がルウガに行かれてからはお会いになってはないと思いますが・・」
「え? それじゃ、俺ってそのリュジャナに嫌われてるってこと?」
「はい。そうなりますね」
やばいな、嫌われている相手からお金を借りるのか・・すげー気まずいじゃないか。
「まあ、ダメ元で行ってみるよ。家はどこなの?」
「はい。この城の南の高台の裏手にございます」
「近いね。それじゃ、すぐに行ってくるよ」
「アルビオン家はこの辺境で絶大な影響力がございます。くれぐれもお揉めにならないでください。後々面倒でございます」
「うっ・・そうか気をつけるよ」
そう言うと早速、お金を借りるために、俺はアルビオン家へと向かった。場所は城の南の高台の裏ということでかなり近い。高台を回り込んで歩いても、20分ほどで到着すると思う。俺は、とりあえず借金するための言い方を考えながら、アルビオン家へ向かって歩みを進めた。
「まあ、偉そうに出てきて、そうじゃなかったらコントだな」
「ふっ・・面白い奴だな新国王。それにしても前王は聞き分けのいい男だったが、お前はそうではないみたいだな」
ダグサスは、挑発的な言葉で俺の腹の中を探っているようである。
「聞き分けはいいと思うけど、山賊にお金を渡すなんて選択肢を持ち合わせてないだけだ」
「そうか・・それは残念だ!」
そう言って手に持った巨大な戦斧を振りかざして俺の頭を粉砕しにくる。その攻撃の速さ、威力から見て、そこにいる誰もが俺の頭が吹き飛ぶと思っていた。
「な!?」
驚きの声を上げるダグサス。攻撃してきた戦斧は、寸前のところで俺の手によって防がれていた。あの攻撃を片手で防がれたのがよほどショックだったのか、彼は呆然と動きを止める。その隙を逃さず、俺が動き出したのを見て、弟のウェルダが声を上げる。
「兄者!」
しかし、その時には俺はもう、ダグサスの懐に入り込んでいた。そして渾身の拳をその腹にお見舞いした。
その重い一撃に、ダグサスは口から胃液を吐き出し悶絶する。そしてそのまま動かなくなった。
ウェルダがその光景を見て、すぐに巨大なハンマーを振り回して、兄を助ける為に突っ込んでくる。だが、その時には、彼の眼の前には棒切れを持った女剣士が立ちはだかっていた。アズキは、ウェルダの振り回す重そうなハンマーを棒切れで弾き飛ばすと、彼の首あたりにその棒切れで強烈な一撃を放った。ウェルダはそれを食らうと、白目をむいて気絶した。
圧倒的な強さのボスが、さらに圧倒的な力によって蹂躙される光景を見た山賊たちは、金縛りにあったようにその場から動くことができなくなっていた。そんな彼らに、裕太は声をかける。
「とりあえず全員整列!」
その声に逆らうことのできない山賊たちは、声に従ってぞろぞろと並び始める。よほどビビっているのか、気絶していた仲間も抱えて列に参加させる山賊たち。そして綺麗に全員が整列した。
そこでガゼン兄弟を起こしてみる。二人は気がつき俺の顔を見ると、後ろへ飛び下がった。
「ガゼン兄弟。相談があるんだけど聞いてくれるか」
ガゼン兄弟は無言で何度も頷く。俺は話を続けた。
「君ら兄弟と、後ろにいる部下全てを、俺の家臣に取り立てようと思うんだけどどうかな? 多分、みんな現状より高い給金を払えると思うし、これから俺はこの国をどんどん大きくしていく。ここの活躍によってはどんどん出世させていくし、給金も上げていくつもりだ。もし、俺の部下になるのが嫌なら、この国から出て行ってくれるかな、命は取らないよ」
俺が話し終わると、ガゼン兄弟はお互いの顔を見つめ、尻餅ついて座り込んでいた状態から、膝をつき、姿勢を正すと、こう宣言する。
「我ら兄弟、命ある限り、アースレイン王に忠誠を誓います」
兄弟の部下の山賊たちも、二人に倣って膝をつくと、忠義の礼を尽くした。こうして、俺は一気に兵力を4倍に増やすことに成功した。
山賊たちを引き連れて城に戻ると、ゼダーダンが驚きのあまり腰を抜かしてしまった。
「まさか退治するどころか家臣にするとは・・・」
さすがにそれは予想していなかったようで感心するより、ただ驚くばかりでった。しかし、これによって困ったことが浮上した。城が狭くて全員、中に入れないのである。
とりあえずは、入りきれない者は、城の前でテントを張って野営することになったけど、早急にどうにかしないと可哀想である。
「城の増築か・・兵舎を建設するか・・」
俺がそんなふうに考えていると、ゼダーダンが現実を教えてくれる。
「どっちにしてもお金がかかりますね・・残念ながらそんな貯蓄、この国にはありません」
「それじゃ、とりあえず、どっかでお金を借りようか」
俺が軽くそう言うと、ゼダーダンはさらに現実的なことを聞いてくる。
「返すあてはあるのですか」
「あるよ。一ヶ月後には返却できる」
もちろん夢子からの仕送りを当てにしての発言なのだけど、それを聞いたゼダーダンは納得したようにこう提案してきた。
「では、アルビオン家から借り入れしましょう」
「アルビオン家って何?」
「この国だけではなく、周辺国にも商業基盤を持つ大金持ちです」
「そんな大金持ちがこの国に住んでるの?」
「はい。しかし、一点だけ懸念点が・・・」
「何?」
「アルビオン家の現在の当主ですが、あのリュジャナ嬢でして・・」
「誰それ?」
「お忘れですかエイメル様、あなたの幼馴染でご友人だった方ですよ」
「ごめん・・・ちょっと昔の記憶が・・」
「リュジャナ嬢とエイメル様は、それはそれは仲が良かったのですが・・何があったのか、ある日から険悪な関係になりまして・・・エイメル様がルウガに行かれてからはお会いになってはないと思いますが・・」
「え? それじゃ、俺ってそのリュジャナに嫌われてるってこと?」
「はい。そうなりますね」
やばいな、嫌われている相手からお金を借りるのか・・すげー気まずいじゃないか。
「まあ、ダメ元で行ってみるよ。家はどこなの?」
「はい。この城の南の高台の裏手にございます」
「近いね。それじゃ、すぐに行ってくるよ」
「アルビオン家はこの辺境で絶大な影響力がございます。くれぐれもお揉めにならないでください。後々面倒でございます」
「うっ・・そうか気をつけるよ」
そう言うと早速、お金を借りるために、俺はアルビオン家へと向かった。場所は城の南の高台の裏ということでかなり近い。高台を回り込んで歩いても、20分ほどで到着すると思う。俺は、とりあえず借金するための言い方を考えながら、アルビオン家へ向かって歩みを進めた。
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