上 下
5 / 38
胎動編

第5話 複雑な事情?

しおりを挟む
 先日は、部屋にある姿見の前で眠ってしまい、気が付くとベッドの上に戻されていた。

 まあ、生後半年ともなればハイハイでの移動も認められる年頃だろうし、不審に思われる事も無いだろう。

 今日はというと、奥の院と呼ばれていた人達が部屋に来て、私を取り囲んで談笑していた。

「あらあら、ボリスとセレイナに似て美人さんねぇ」
「髪は奇麗な土の属性が出ているけれど、この瞳の色は、たしかに雷や風ではないわね」
「この極光色は特異な魔法を使う者が多かったな。今でも聖地であれば何人か居るのではないか?」
「同じでは無いけど、似た様な色の子は居たわねぇ」

 どうやら奥の院と呼ばれていた人達は全員がエルフらしい。
 全員が全員、身体つきが細く、耳が横に長く、美形な顔立ちをしている。

 種族的な容姿にも驚きだけど、髪が真っ赤だったりエメラルド色だったり、紫色や黄色などカラフルな瞳の色をしているのが目を引く。

 ヘアカラーでも、ここまで奇麗に色を出すのって、かなり大変なんだけど。
 やっぱり、これがこの世界の人達の地毛や瞳の色なのかしら……?

「それで、この瞳の属性色が目に異常を与えているかって相談だったわね?」

「ええ」

「こうして、私達の事を興味深そうに見てるんだし、問題は無いと思うわ」

 ルインと一際豪華な服装のエルフさんとが今回の訪問の目的を話している。

 なんか、見比べてみると、他のエルフの人達の耳と比べるとルインの方が短い感じがする。
 もしかして、ルインはハーフエルフとか別の種族だったりするのかしら?

「では、問題は別に?」

「そうね。恐らく、この子は五感より先に、魔力を感じる事を覚えたのが原因ではないかしら」

「魔力感知を、先に? まだ精神も未発達な状態で可能なんですか?」

「可能か不可能かで言えば、この子が証明しているわ」

 そう言い、偉い人っぽいエルフさんは私の頭を優しく撫でた。

「本当に奇跡みたいな物ね。元々、私は……ティアル姫が無事に生まれる事は無いと思っていたのよ。リカルド王子の時もギリギリではあったけれど、今のボリスとセレイナは子を設けるには力が強くなり過ぎていたし」

「それは私も懸念していました。ですが、姫様は生まれて二日程で容態も安定なされましたので、王子の時より問題は無い物と……」

 ふーむ……

 思い返せば、あの転生したての時は、かなり苦しかったけど。
 やっぱり、あれは普通の事ではなかったのかな?

「生まれた時の状態も聞いてはいたけど、今は淀みなく魔力を制御しているみたいだし。溢れ出る魔力を本能的に危険と察して、それを抑え込んだのでしょうね」

「でも、それが目の状態と何か関係があるのですか?」

「ドワーフ達に伝わる魔力感知の修行法の一つなのだけれど、光の一切届かない坑道で、目に頼らずに生活できるまで、そこに籠るっていう物があるのよ。それを成し遂げた者は目を使わなくても目以上の物が感じ取れるようになるそうよ」

「たしかに、姫様は目を閉じている時でも何かを見ているかの様に笑ったり、妙な声を上げる事が多いですが……それと同じ事を姫様が?」

「恐らくね。五感よりも先に魔力を感じる事を覚えなきゃいけない状況が、そうさせたのでしょう」

 え……? 
 そんな事、さっぱり出来ないんですけど……?

 まあ、別に勘違いされてるだけならいいか。

「なるほど……姫様のお体に問題が無いのでしたら私としても一安心ですが。魔法に関しての教育が私に務まるかどうか……」

「髪から見ても第一属性は土なのだし、問題は無いのではなくて? 瞳の第二属性、極光色の方は姫自身に模索させるしかないわね。教えられる者は神様くらいのものよ」

「神ですか? となると、教会に巫女への取次ぎを……いえ、たしか今は不在でしたか?」

「私も、そう聞いているわ。どちらにしろ、教会や他への相談は、ティアル姫がもう少し大きくなってからにしておきなさいな」

「やはり、公にするのは不味いですか……」

 ん……?

「面倒な輩が寄って来るだけよ。普段は目を閉じているのなら大丈夫でしょうけど、できれば、瞳に関して知る者は3回目の節目の生誕祭を迎えるまで、あなた達と王族内で止めておきなさい」

「そう……ですね。王へも、そう伝えておきます」

 つまりは、私に目を閉じて生活しろと……?

 魔力感知?
 それで物を見られる様になれとおっしゃってる?

「それにしても、こうしてティアル姫の元気な姿が見られてよかったわ。容態が長引けば、次代の事も考えて、この子の事は諦めるしかなかったから……そうならなくて本当に良かった」

「王と王妃も急いではいるのですが……」

「そうね……最悪、私達も共に動く事になるわ。できれば、この子達に未来を残してあげたいもの」

 今度は何の話?
 二人だけでなく、他のエルフさん達も深刻そうな表情を浮かべているけど……

 私や今世の家族に、何か問題が迫っているの?

 私自身が生まれた事にも何かあるみたいだし……

 うーん……
 私の事を案じてくれているのは感じるけど、関係性がさっぱりなので、話の内容についていけない。


 その後、奥の院のエルフさん達は、二言三言ルインと言葉を交わすと帰って行った。

 それにしても、こうして、まざまざと人間とは外見が異なる人達を見せられると、本当に違う世界に来てしまったのだと実感が湧く。

 それと同時に上手くやって行けるのかという不安が増した1日だった。

 とりあえず、目の代わりに魔力を感じて物を見るっていう方法を練習しとこ……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚  ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。  しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。  なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!  このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。  なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。  自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!  本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。  しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。  本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。  本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。  思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!  ざまぁフラグなんて知りません!  これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。 ・本来の主人公は荷物持ち ・主人公は追放する側の勇者に転生 ・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です ・パーティー追放ものの逆側の話 ※カクヨム、ハーメルンにて掲載

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸
ファンタジー
【あらすじ】  ジュナリュシア・キーブレスは、キーブレス王国の第十七王子として生を受けた。  キーブレス王国は、スキル至上主義を掲げており、高ランクのスキルを持つ者が権力を持ち、低ランクの者はゴミのように虐げられる国だった。そして、ジュナの一族であるキーブレス王家は、魔法などのスキルを他人に授与することができる特殊能力者の一族で、ジュナも同様の能力が発現することが期待された。  しかし、スキル鑑定式の日、ジュナが鑑定士に言い渡された能力は《スキル無し》。これと同じ日に第五王女ピアーチェスに言い渡された能力は《Eランクのギフトキー》。  つまり、スキル至上主義のキーブレス王国では、死刑宣告にも等しい鑑定結果であった。他の王子たちは、Cランク以上のギフトキーを所持していることもあり、ジュナとピアーチェスはひどい差別を受けることになる。  お互いに近い境遇ということもあり、身を寄せ合うようになる2人。すぐに仲良くなった2人だったが、ある日、別の兄弟から命を狙われる事件が起き、窮地に立たされたジュナは、隠された能力《他人からスキルを奪う能力》が覚醒する。  この事件をきっかけに、ジュナは考えを改めた。この国で自分と姉が生きていくには、クズな王族たちからスキルを奪って裏から国を支配するしかない、と。  これは、スキル至上主義の王国で、自分たちが生き延びるために闇組織を結成し、裏から王国を支配していく物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも掲載しています。

処理中です...