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「もう一度だ!!」
例え防がれたとしても、俺の【魔能力】で出来ることは限られている。ならば、絵本《えもと》が出来ることを探すしかない。
再び時を速めた俺は、絵本《えもと》の顔ではなく背を蹴りつける。だが、やはり、鉄を蹴ったかのような衝撃が足裏を通じで伝わってくる。
「見えない力……?」
仮に絵本《えもと》の力を仮定するならば、見えない力を操り、攻撃、防御に使うと言ったところか。
俺の加速に対抗するために常に力を纏っている。
「と、したところでどうすればいいのか分かんねぇよ!」
力を解除した俺は、距離を取って絵本《えもと》を睨む。
「やれやれ。勝てないと分かっても気持ちだけは一人前だな。さっさと負けを認めればどうだい?」
「うるさい! そういう訳にはいかねぇんだよ!」
俺は生里《なまり》を倒したいんだ。
こんな所で苦戦してられるか!
「気合だけじゃ実力差は埋まらないんだよ」
絵本《えもと》はそう言って右手を翳す。
それが攻撃の動作だと言うことは、既に経験で分かっていた。俺は回避すべく力を発動し、攻撃を仕掛ける。
攻撃に手を回したことで、防御が薄くなるのではないかと期待したがそんなことはなく、しっかりと、固い鋼鉄が絵本《えもと》を守っていた。
「……どうすればいい?」
絵本の攻撃に合わせて【魔能力】を発動すれば、俺も被弾することはないだろうが、その繰り返しでは貯蓄した時間だけが減っていく。
かと言って戦闘中に貯蓄は出来ない。
俺に残された時間は既に半分になっていた。
「……くそ!!」
再び右手を翳す絵本《えもと》。
俺なんて片手で充分ってことなのかよ。左手には読んでいた絵本《えほん》を抱えたままなんて――。
うん?
そこで、俺は疑問を抱いた。
絵本《えもと》は確実性を取る性格だ。それなのに、何故、態々、片手を封じてまで絵本《えほん》を抱えているのだろうか?
「気になったら試すしかねぇ!」
俺は【魔能力】を発動して、攻撃ではなく絵本《えもと》が抱える絵本《えほん》を注視する。
抱えていた絵本《えほん》のタイトルは――。
『見えないクラゲちゃん』
「見えないって、まさか――!」
俺は【魔能力】を発動したまま、店の中へ戻る。初めてここに来た時、俺は似たような本を手に取った気がする。
俺の記憶は間違ってなかった。並べられた本の中から同じタイトルを見つけて内容を読む。
「だから、時間の能力ってもっと格好いい筈だろうって!」
しかし、今はそんなことを言っている場合ではない。現実はいつだって理想とは違うものなのだ。
俺は遅くなった時の中で本を読む。
本の内容は透明なクラゲが、親を救うため、敵のサメに挑んでいくという話だった。固い甲羅を持つ相棒の亀と協力して――。
「そういうことか」
絵本《えほん》の中ではクラゲが亀を多い、見えない甲羅でサメを撃退するシーンがあった。そして、それは――まさに、今の俺と同じだった。
「これが絵本《えもと》さんの【魔能力】か!」
抱えた絵本《えほん》の力を扱うこと。
なら、抱えた絵本《えほん》を奪えばいい。俺はチラリと視界の隅へ意識を向ける。残された時間は一時間とちょっと。
つまり、後、一分で勝負を決めなければならない。
「でも、一分もあれば充分だ」
今度こそ、確実に充分だ。
だって、そうだろ?
――相手の防御が亀の甲羅だって分かったんだから。
俺は能力を駆使して、ペタペタと手の平を使って見えない甲羅の感触を探っていく。背中から絵本《えもと》の身体を覆って防いでいるが――。
「やっぱりね」
見えない盾では防げる範囲は決まっている。身体の横と後ろは覆えても正面はスカスカだった。
「タネが分かれば単純な話だ」
例え防がれたとしても、俺の【魔能力】で出来ることは限られている。ならば、絵本《えもと》が出来ることを探すしかない。
再び時を速めた俺は、絵本《えもと》の顔ではなく背を蹴りつける。だが、やはり、鉄を蹴ったかのような衝撃が足裏を通じで伝わってくる。
「見えない力……?」
仮に絵本《えもと》の力を仮定するならば、見えない力を操り、攻撃、防御に使うと言ったところか。
俺の加速に対抗するために常に力を纏っている。
「と、したところでどうすればいいのか分かんねぇよ!」
力を解除した俺は、距離を取って絵本《えもと》を睨む。
「やれやれ。勝てないと分かっても気持ちだけは一人前だな。さっさと負けを認めればどうだい?」
「うるさい! そういう訳にはいかねぇんだよ!」
俺は生里《なまり》を倒したいんだ。
こんな所で苦戦してられるか!
「気合だけじゃ実力差は埋まらないんだよ」
絵本《えもと》はそう言って右手を翳す。
それが攻撃の動作だと言うことは、既に経験で分かっていた。俺は回避すべく力を発動し、攻撃を仕掛ける。
攻撃に手を回したことで、防御が薄くなるのではないかと期待したがそんなことはなく、しっかりと、固い鋼鉄が絵本《えもと》を守っていた。
「……どうすればいい?」
絵本の攻撃に合わせて【魔能力】を発動すれば、俺も被弾することはないだろうが、その繰り返しでは貯蓄した時間だけが減っていく。
かと言って戦闘中に貯蓄は出来ない。
俺に残された時間は既に半分になっていた。
「……くそ!!」
再び右手を翳す絵本《えもと》。
俺なんて片手で充分ってことなのかよ。左手には読んでいた絵本《えほん》を抱えたままなんて――。
うん?
そこで、俺は疑問を抱いた。
絵本《えもと》は確実性を取る性格だ。それなのに、何故、態々、片手を封じてまで絵本《えほん》を抱えているのだろうか?
「気になったら試すしかねぇ!」
俺は【魔能力】を発動して、攻撃ではなく絵本《えもと》が抱える絵本《えほん》を注視する。
抱えていた絵本《えほん》のタイトルは――。
『見えないクラゲちゃん』
「見えないって、まさか――!」
俺は【魔能力】を発動したまま、店の中へ戻る。初めてここに来た時、俺は似たような本を手に取った気がする。
俺の記憶は間違ってなかった。並べられた本の中から同じタイトルを見つけて内容を読む。
「だから、時間の能力ってもっと格好いい筈だろうって!」
しかし、今はそんなことを言っている場合ではない。現実はいつだって理想とは違うものなのだ。
俺は遅くなった時の中で本を読む。
本の内容は透明なクラゲが、親を救うため、敵のサメに挑んでいくという話だった。固い甲羅を持つ相棒の亀と協力して――。
「そういうことか」
絵本《えほん》の中ではクラゲが亀を多い、見えない甲羅でサメを撃退するシーンがあった。そして、それは――まさに、今の俺と同じだった。
「これが絵本《えもと》さんの【魔能力】か!」
抱えた絵本《えほん》の力を扱うこと。
なら、抱えた絵本《えほん》を奪えばいい。俺はチラリと視界の隅へ意識を向ける。残された時間は一時間とちょっと。
つまり、後、一分で勝負を決めなければならない。
「でも、一分もあれば充分だ」
今度こそ、確実に充分だ。
だって、そうだろ?
――相手の防御が亀の甲羅だって分かったんだから。
俺は能力を駆使して、ペタペタと手の平を使って見えない甲羅の感触を探っていく。背中から絵本《えもと》の身体を覆って防いでいるが――。
「やっぱりね」
見えない盾では防げる範囲は決まっている。身体の横と後ろは覆えても正面はスカスカだった。
「タネが分かれば単純な話だ」
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