3 / 58
2話 ハリネズミと共同戦線
しおりを挟む
「明日からどうしようか」
【磯川班】を追い出された俺は行く当てもなく歩いていた。両手に手錠を付けた男は不審に思われるのだろうか? 通り過ぎる人々の距離が、いつもより遠くに感じた。
「荷物は寮に置いてきちゃったしな」
置いてきたっていうか、そもそも荷物を整理する余裕は無かっただけなんだけど。
現代に置ける生活必需品すら揃っていない。
「あるのは財布と身分証明、それにスマホだけか」
ポケットに入れていた財布を開いて全財産を確認する。
給料日後だったから、いつもより多めの二万円入っていたのは有難い。後は免許証に隊員証もあるのはデカいな。
というか、隊員証は持ってて良いのだろうか? 落ち着いたら確認しとこう。
「今はこれだけあればなんとかなるか」
足を止めて財布を確認していた俺は、川の横に作られた遊歩道を歩く。
寮を追い出された俺がどこに向かっているかというと、答えは橋の下だった。
「【磯川班】に置いてあった漫画に、橋の下なら雨風しのげるって描いてあったもんな」
なんかの不良漫画だったけかな。置いてあった漫画は基本、車か喧嘩の話だけだったので、そのどちらかであることは間違いないだろうけどな。
「俺は断然、少年漫画派だったんだけどな……」
「って、そんなことはどうでもいいだろうが!! なんで助けたお前が追い出されてんだよ! 追放されてんだよ!」
川の上流に歩くに連れ人影は減り、今となっては俺以外誰も人は歩いていない。
にも関わらずに、俺に話しかける声があった。
「人が寝ぼけてる間に大きな転機迎えてんじゃねぇよ!! くそ、あんなこっぴどく言われたのに、力はなんも言わねぇから夢かと思ってたぜ」
そう言いながら声の主は俺の肩に登ってきた。
手のひらサイズをした人形。
姿はハリネズミが二足歩行をしたようなフォルムだ。表情だけ見れば可愛らしい顔つきだが、口調は荒く粗暴の悪い少年のようだった。
こいつの名前はガイ。
【扉】からやってきたという存在だ。元の姿は人間だったのだが、今は訳あってハリネズミの人形となっているーーらしい。実際に人の姿を俺は見たことないので、ガイの言うことを信じるしかないのだが。
「つーかよ、お前もただ追い出されるんじゃなくて、助けてやったのは俺だって言っちまえばいいじゃんかよ。ここ最近、強ぇ魔物を倒せてるのは全部、お前の――【三本角の鎧】のお陰じゃんかよ」
「……」
そう――。
昨日、森の中に現れた【大鬼】を倒した【三本角の鎧】の正体は俺だ。
異世界の存在であるガイの力を借りれば、屈強の【魔物《モンスター》】とも戦える。
この3ヶ月、ガイと協力して何体かの【魔物《モンスター》】を倒したが、その結果が追放だった。
もう少し上手くやれたら、追放《こんなこと》にはならなかったのかも知れないが、自分の人間関係の不器用さは誰よりも知っている。
「こんな目にあうならよ、俺たちの方が強いってことを分からせてやりゃあ良かったじゃんか。なのになんでわざわざ俺達が……」
「仕方ないよ。そんなことしたら【ダンジョン防衛隊】の上層部が動くし。今まで指摘されていなのは、【磯川班】だけにしか知られてないから。彼らは面倒な報告とかしないで、全部自分たちで倒したことにしてたから、俺たちの存在が隠されてたんだよ」
本来、【魔物《モンスター》】を容易に倒せる存在がいるとなれば、直ぐに上に報告するのが義務だ。
だが、磯川はそれをしなかった。全てを自分の手柄として報告し、莫大な報奨金や武装を手に入れていた。
その行為がガイの存在を隠してくれていたのだから、一概に責められない。
異世界人なんて舌が出るほど欲しい研究対象。何をされるか分からない。
もしも、ガイに何かあれば――世界を守る力が失われることになる。
それだけは避けなければならない。
「でもよぉー。お前が投げ飛ばされた【小鬼の腕力《わんりょく》】だって、俺達が倒した奴じゃんか。あー、くそ、考えれば考えるほど面白くねぇ!!」
「そこに関しては俺だって少しは怒りたいさ。でも、彼らも含めて「世界」だって考えれば、守れただけ良しだよ」
背中に生えるトゲを震わせ、短い前足ならぬ両手を震わせるガイ。
「けっ。何が「世界、守らせて貰います」だ。恩人の言葉で自分の牙を隠しやがってよ」
怒りが収まらずに悪態を吐く相棒に言う
「ま、とにかく今日はゆっくり休んで、また明日考えよう」
「宿なしじゃ、ゆっくり休めねぇよぉ……。たく、どんだけ能天気なんだよ、リキはよぉ!!」
暗くなった河川敷にガイの情けない声が響いた
【磯川班】を追い出された俺は行く当てもなく歩いていた。両手に手錠を付けた男は不審に思われるのだろうか? 通り過ぎる人々の距離が、いつもより遠くに感じた。
「荷物は寮に置いてきちゃったしな」
置いてきたっていうか、そもそも荷物を整理する余裕は無かっただけなんだけど。
現代に置ける生活必需品すら揃っていない。
「あるのは財布と身分証明、それにスマホだけか」
ポケットに入れていた財布を開いて全財産を確認する。
給料日後だったから、いつもより多めの二万円入っていたのは有難い。後は免許証に隊員証もあるのはデカいな。
というか、隊員証は持ってて良いのだろうか? 落ち着いたら確認しとこう。
「今はこれだけあればなんとかなるか」
足を止めて財布を確認していた俺は、川の横に作られた遊歩道を歩く。
寮を追い出された俺がどこに向かっているかというと、答えは橋の下だった。
「【磯川班】に置いてあった漫画に、橋の下なら雨風しのげるって描いてあったもんな」
なんかの不良漫画だったけかな。置いてあった漫画は基本、車か喧嘩の話だけだったので、そのどちらかであることは間違いないだろうけどな。
「俺は断然、少年漫画派だったんだけどな……」
「って、そんなことはどうでもいいだろうが!! なんで助けたお前が追い出されてんだよ! 追放されてんだよ!」
川の上流に歩くに連れ人影は減り、今となっては俺以外誰も人は歩いていない。
にも関わらずに、俺に話しかける声があった。
「人が寝ぼけてる間に大きな転機迎えてんじゃねぇよ!! くそ、あんなこっぴどく言われたのに、力はなんも言わねぇから夢かと思ってたぜ」
そう言いながら声の主は俺の肩に登ってきた。
手のひらサイズをした人形。
姿はハリネズミが二足歩行をしたようなフォルムだ。表情だけ見れば可愛らしい顔つきだが、口調は荒く粗暴の悪い少年のようだった。
こいつの名前はガイ。
【扉】からやってきたという存在だ。元の姿は人間だったのだが、今は訳あってハリネズミの人形となっているーーらしい。実際に人の姿を俺は見たことないので、ガイの言うことを信じるしかないのだが。
「つーかよ、お前もただ追い出されるんじゃなくて、助けてやったのは俺だって言っちまえばいいじゃんかよ。ここ最近、強ぇ魔物を倒せてるのは全部、お前の――【三本角の鎧】のお陰じゃんかよ」
「……」
そう――。
昨日、森の中に現れた【大鬼】を倒した【三本角の鎧】の正体は俺だ。
異世界の存在であるガイの力を借りれば、屈強の【魔物《モンスター》】とも戦える。
この3ヶ月、ガイと協力して何体かの【魔物《モンスター》】を倒したが、その結果が追放だった。
もう少し上手くやれたら、追放《こんなこと》にはならなかったのかも知れないが、自分の人間関係の不器用さは誰よりも知っている。
「こんな目にあうならよ、俺たちの方が強いってことを分からせてやりゃあ良かったじゃんか。なのになんでわざわざ俺達が……」
「仕方ないよ。そんなことしたら【ダンジョン防衛隊】の上層部が動くし。今まで指摘されていなのは、【磯川班】だけにしか知られてないから。彼らは面倒な報告とかしないで、全部自分たちで倒したことにしてたから、俺たちの存在が隠されてたんだよ」
本来、【魔物《モンスター》】を容易に倒せる存在がいるとなれば、直ぐに上に報告するのが義務だ。
だが、磯川はそれをしなかった。全てを自分の手柄として報告し、莫大な報奨金や武装を手に入れていた。
その行為がガイの存在を隠してくれていたのだから、一概に責められない。
異世界人なんて舌が出るほど欲しい研究対象。何をされるか分からない。
もしも、ガイに何かあれば――世界を守る力が失われることになる。
それだけは避けなければならない。
「でもよぉー。お前が投げ飛ばされた【小鬼の腕力《わんりょく》】だって、俺達が倒した奴じゃんか。あー、くそ、考えれば考えるほど面白くねぇ!!」
「そこに関しては俺だって少しは怒りたいさ。でも、彼らも含めて「世界」だって考えれば、守れただけ良しだよ」
背中に生えるトゲを震わせ、短い前足ならぬ両手を震わせるガイ。
「けっ。何が「世界、守らせて貰います」だ。恩人の言葉で自分の牙を隠しやがってよ」
怒りが収まらずに悪態を吐く相棒に言う
「ま、とにかく今日はゆっくり休んで、また明日考えよう」
「宿なしじゃ、ゆっくり休めねぇよぉ……。たく、どんだけ能天気なんだよ、リキはよぉ!!」
暗くなった河川敷にガイの情けない声が響いた
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる