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137. 天球攻防

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 天球の管理者によって少しづつ明らかになって行く、この世界の真相と厄災の正体。 果たして、厄災とは一体何なのか…。

 「厄災が創世期より存在するって…つまりはどういう事?」

 『厄災は創世神が生み出したと言われている』

 「創世神…」

 管理者は静かに語り始める…かつて宇宙を創造した神は静寂に包まれた世界を寂しく思い、命の種を捲いた。 するとその方々で生命が生まれ、宇宙はにわかに賑わいを見せる。
 しかして神は直ぐに生命を疎ましく思い始めた…寿命は短く、他の命を奪わなければ命を維持出来ないその存在は不完全だと考えたのだ。

 この宇宙は失敗だった…そのように創世神は考え、再度宇宙を創り出す為に破壊の神へ今ある宇宙の破壊を依頼するのだが。

 『破壊神は宇宙の破壊どころか、創世神を滅ぼしてしまったのだ』

 「ええ~…」

 破壊神が宇宙の破壊を拒否した理由は分からない、創世神の事が気に食わなかったのかはたまた、命あるモノを慈しみそれらを滅ぼすように言った為に止む無く滅ぼしてしまったのか…。
 まあ、皆後者の方だと思いたいだろう。

 『いずれにせよ、宇宙の…生命の存続は決まった。 だが…』

 「だが?」

 『創世神は滅ぼされる直前に、生命に呪いをかけた。 その呪いが顕著した存在こそが…』

 ーー厄災ーー

 創世神の呪い、それこそが厄災の正体なのだが…。

 「何だか、話が大きくなってきたわね」

 「そう言えば、破壊神はどうなったのですか? そこまでやっておいて、厄災を放置では無責任なのです」

 『今は深い眠りについていると言われている』

 「やりっぱなしとは、はた迷惑な神様だな」

 「でもその神様のおかげで、今私たちはこうしていられるのね」

 「でも、何だか意外…破壊の神様が生命を助けるんだね、普通は逆のような」

 破壊神が生命を護った、だがその生命を脅かす存在を生み出す要因ともなってしまった。 いずれにせよ、厄災関連で分かった事は以上だ。

 「取り敢えずはこんな所か…しかし、改めて考えると我々の出自もとんでもないな」

 「…何でこの星に入植した人達は、人類と同化したのかな?」

 「私もそれを考えていたんだが…恐らくはこうじゃ無いかと思う」

 ノーマ曰く、宇宙の旅は長く何百世代にも及んだというのだから、限られた人数での生殖により遺伝的な限界を迎えていたのでは無いかという推測だ。

 「遺伝子…?」

 「近親婚とまではいかなくても、相当血が濃くなっていたのだろうな…そうなってしまうと次の世代に問題が発生し易くなってしまうんだ」

 「何か聞いた事あるかも」


 『フム、概ねその通りだ』
 
 「わあっ、ノーマ凄いじゃん!」

 私の言葉に対して大したリアクションは無いが、まんざらでもない様子だ、それに自分の考察があっていたようで一安心といった所だろう。

 「でもさ、恐竜がいたのにどうやって哺乳類は進化したんだろう?」

 「それは私が述べましょう」

 「キア?」

 入植は元居た生物に配慮して進められた、要するに住み分けが行われたのだが、恐竜とは距離を置いて生活する事となる。 

 「それを可能にしたのが結界なのです」

 「そっか、結界か」

 今でも人々の生活圏を護っている結界によって、住み分けが可能となったのだがここである変化が訪れる。

 「人々の生活圏の中に、安全確保の為に哺乳類が入り込んできたのです」

 恐竜の居ない場所では哺乳類の天下だ、地球に隕石が落下した後のように哺乳類が多用な進化を遂げた。

 「聖獣の持つ不思議な力もここら辺に関係してるのかも」

 
 『フム、こちらも概ねその通りだ』

 その言葉を聞いたキアは、ノーマに向けてドヤ顔をかましているのだが、された方はいかにも面白くないといった表情だ。 
 それにしても…

 「ふふっ、…二人とも考察好きなんだ。 仲悪そうに見えるんだけど、思わぬ共通点があるもんだね」

 それを聞いた二人はお互いに顔を見つめるのだが、何とも言えない微妙な雰囲気が辺りにも漂っている。

 「似た者同士はいがみ合うのよねぇ…」

 世良さんがそう言うと二人はそちらを睨むのだが、当人はやってしまっといった表情だ。
 
 「全くしょうがないですねぇ、ヒナさんもそう思いませんか?」
 
 「…そうね」

 穏やかな表情になるのだがそれも一瞬の事で、直ぐ様ふさぎ込んでしまう。

 「ヒナさん、もういいんです…誰も貴女を恨んでなんかいません」

 「私は…」

 
 『…責められるべきは私の方だろう』

 「管理者?」
 
 『宿命の子を誕生させる為に、因果を操り時空を歪めた…真に責を負うのは私なのだ』

 「それってどういう…」

 彼の言葉の意味を問おうとした時、何処からともなく鐘の音のような音が聞こえて来る。

 『ついに来たか』

 「来たって…まさか?」

 「厄災、ね」

 だとしたらこれは一大事だ、戦鳥の傷を癒す事の出来る唯一の施設であるここを破壊されてしまっては元も子もない。 

 「ここを守らなきゃ、戦鳥の傷は?」
 
 『今しがた終了した』

 「よおし、皆行こう!」

 傷の癒えた戦鳥は再び契約者の体をまとうのだが、その姿に変化のある翼もある。

 「あれ? 雷鳴の翼と護りの翼…ちょっと前と違ってる?」
 
 「その話なら後よ、厄災を迎え撃つのでしょう」

 「うん、でも出口は…?」

 「飛び立てばすり抜けるわ、契約の間と同じよ」

 言うが早いかひいばあは徐に飛び立つので、慌てて続くといつの間にか景色が切り替わる。 外に出てしまったのだが、何とも不思議な感覚だとして、今は気にしている場合でも無い。
 
 「厄災は何処に…あっ!」

 「これは!」

 何処から向かって来るのかというレベルでは無く、すっかり包囲されてしまっている。 これまでとは規模がまるで違うのだが、敵も必死なのかもしれない。

 「囲まれてしまったか…」

 「しかも、敵の狙いは恐らく天球…防衛戦になるな」

 「これまでよりも厳しい戦いになるわね」

 
 『案ずるに及ばぬ』

 「?それってどういう…」

 突如として管理者より通信が入るのだが、その直後天球に変化が訪れる。

 「何? この音」

 「これって地震!」

 よく見ると天球の周辺の岩肌は振動によって崩れて行くのだが、それと同時に白い球体にもひびが入りボロボロとはがれ落ちてしまう。
 
 「そんな! 天球が壊れてゆく!?」

 「いえ違うわ、あれを見て!!」

 はがれ落ちた球体から出現したのは、幾重にも重なる白い翼を持った物体…まるで繭のようなのだが、やがて折り重なる翼が広がって行くとその全容が明らかになるのだが…。

 「これって舟…宇宙船、なの?」
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