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58. もう一つの故郷(修正1)
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「ひえ~~……」
建物から出て見た光景に度肝を抜かれ思わず素っとん狂な声が出てしまうが、これを絶景と言わずして何と言おうか。
遥か上空から水が勢いよく流れ落ちて来る。 所謂滝、というものだが、異常なのは周囲を見渡しても同じ光景ーー
そう、滝に囲まれた今自分が立っているこの場所は正しく滝つぼ……。 建物内で聞こえてきたのは水の落ちる音だったのだ。
一体どういった理屈でこの場所が存在しているか検討もつかない。 石造りの例の建物を見ると所々コケむしているので、大分古い建造物である事が伺えるのだが、その形は何となく神殿を連想させる。
しかし、この神殿が古くから存在しているのであれば、このような立地でありながら意外と地盤はしっかりとしているるのだろう。
地面も石造りのようだが、つなぎ目などが見当たらない。 と、いう事はこの滝つぼ一帯は一枚の石、もしくは岩という事になる。
「これは……凄いわね」
ひいばあも呆気にとられているのだが、初めてここに来たといった感じだ。 ならば、六百年前はここはは発見されていなかったのかもしれない。
「ここは、果ての瀑布」
「世良さん? 果ての……幕府?」
「違うわよ。 江戸とかの幕府では無くて、滝の別称になるの」
「え! 何で私の考えている事が分かったの?」
「あなたねぇ……少しは勉強しなさい」
勉強しなさいとは言うものの、本などはかさばるし違う世界の物を極力持ち込まない方が良いという理由で教科書等は持ってこなかった。 因みに筆記用具とメモ帳は持っているが、これは自身の見たものや聞いた事で重要な内容を記録する為だ。
「ここは、かつて世界の果てと呼ばれていたわ。 そして……」
「ここ、果ての神殿で貴女は戦鳥”破邪の大翼”と契約した。 そうよね?」
「私に関わりの深いここが転移の地だなんて……。 随分な演出ね」
「たまたまよ。 ここが両陣営の中間地点となるの。 それに、転移装置間で無ければ数人の転移は成功しないリスクもあったのでね」
「えー。 そうなんだ……」
神殿から少し離れた場所で、二対四になって話は続く。
「さて、最後通告よ。 私達と共にくれば戦乱は終わる。 それは、多くの民の願いでもあるのよ」
「民の願いもなにも、和解すればそれで直ぐに終わる事。 長きに渡る戦乱をもたらしているのは互いの指導者よ」
「世良さん……」
「悪いけど私も、あなた達に与する事は出来ないわ」
まあ、ひいばあも当然その答えになるが、キアも確信を持った表情で敵である二人と対峙している。
「ならば、羽音。 貴女はどうする? 貴女の力があれば、国の統一も、世界に巣食う厄災も駆逐する事が出来るのよ?」
「……」
「そして貴女が力を発現する為には刻印を刻むより他は無く、それが叶うのはラウ城の地下にある刻印の間のみ」
「……」
「そこまでよ! この子が刻印を刻む必要などない!!」
「ひいばあ……」
物凄い表情で睨みつけているが、その視線の先にいる人物の表情はサングラスに阻まれて伺い知る事が出来ない。
「フ……」
その口角が吊り上がるのと同時に二人の少女の頭上に魔法陣が浮かび上がる。
「え! そんな!」
今ここで決着を付けようというのか。 だとしたら余りにも短絡的過ぎると思っていたのだが、戦鳥はその形を崩す事なく地表に降り立ち契約者の傍に佇む。
「……!?」
何をするつもりなのかと思って見ていると二人は戦鳥の背に飛び乗る。
「え! あれってもしかして」
戦鳥は契約者を背に乗せたまま羽ばたき地上を離れる。 世良さんから話には聞いていたが、戦鳥をまとう事無くその背に乗って空を飛ぶことも出来ると言っていた。 しかし、実際に見るのは初めてだ。
「次にあなた達と会う時は戦場になるでしょうね……それではごきげんよう」
それだけ言うと二人は飛び去っていってしまう。 その姿が遠く見えなくなるまで見送ると今度は私達がここを離れる番となるが……。
「さて、私達もそろそろ行かねばならないけど」
そう、私達もキアの陣営である正王国へ向かわねばならないが、どのように行くのかなんて分からない。 そこへキアが何かを言うが、いきなり自身の戦鳥である炎の翼を召喚する。
「うわっ! いきなり何?」
予想外の事に思わず驚いてしまうが、驚愕なのはこれだけでは無い、キアは話を続けているが、炎の翼の目から光が放たれる。 光が照射されると何もない虚空に映像を映し出すのだが、これはホログラムというものでは無いだろうか。
「へー。 凄いなぁ」
関心しているとキアは私に向かってドヤ顔になる。
「何よ、凄いのはキアじゃ無くて戦鳥の方でしょ?」
こんな時にまでマウンティングを忘れないとはキアも中々の性格だ。 しかし、余り気にしても仕方が無い。 映し出された映像は一瞬絵のように見えるのだが、次第に単なる絵では無い事に気づく。
「これもしかして、世界地図ですか?」
「ちょっと違うわね。 ラウ王国の地図になるの」
「はーっ、ラウ王国って広いんですねぇ……」
異世界の地図なのではっきりとした事は言えないのだが、かなり大きい国ではないかと思う。 そんな事を考えながらもキアの説明は続くのだが、映像を指で触るとその部分に点が付く。 どうやらここが現在地のようだ。
点を起点として指でなぞると線を引く事が出来るのだが、また点で括る。 この点が目的地である正王国の拠点と言う訳なのだろう。 そこに、世良さんが何か言うのだが、その言葉に対してキアは再び線を引き点で括る。
「これってもしかして、真王国の拠点……ラウ城ですか?」
「ええ、そうね。 ここがラウ城で、こっちが正王国の拠点になるわね……」
ここ果ての瀑布を起点とすると、ちょうど時計の針の十時十分の位置に二つの拠点がくるのだが、ヒナさんは中間地点と言っていたものの針で例えると短針の位置がラウ城で、長針の位置に正王国の拠点がくるようになる。
「これで見ると、正王国の方が遠いですよね?」
「まあ、仕方ないわよ。 多少わね……」
これで説明は終わりかと思っていたのだが、キアは線の途中に点を作る。 これはもしかしたら、今日中に目的地に辿り着く事が出来ないという事ではないだろうか。
「ここが当座の目的地なんですか?」
「そう、流石に空を飛んでも今日中に辿り着く事は出来ない。 取り敢えずはここまで飛ぶことになるわね」
何でも聞けば、正王国領内であれば何処であっても戦鳥の戦士を速やかに受け入れるように、各都市に通達が行っているそうだ。 これから向かうのはスザンと言う小さな都市だそうで、夜になるまでには辿り着けるだろうとのことだ。
「そうと決まれば急ぎましょう。 グズグズしていると日が暮れてしまうわ」
ひいばあの言う通り、太陽は真上から少し傾いている。 あちらから転移したのが、昼過ぎだった事を考えるともしかしたら、時間の流れは同じなのかもしれない。
(ここがひいばあの故郷……それならば、”私の故郷”でも良いのかな……)
「羽音、しっかり捕まってなさい」
「はい」
世良さんの召喚した破邪の大翼に二人乗りする事になるのだが、当然戦鳥は一人乗りの為しっかりと捕まっていないと落っこちてしまう。
(……むう、世良さん細いなあ)
そのウエストに手を回すと改めてスタイルの良さを認識せざるを得ない。 因みに世良さんは、両手にグリップ付きの棒のようなものを持っており、それらはワイヤーで戦鳥と繋がっている。
「それで、戦鳥をコントロールするんですか?」
「そんな所ね。 それじゃ行くわよ」
それだけ言うと、大翼は大きく羽ばたき大地を離れる。 何とも言い知れぬ浮遊感に戸惑うが、これが戦鳥に乗って空を飛ぶ感覚なのだろうか。 キアも同じく炎の翼の背に乗って空を飛んでいるが、その様子は手慣れたものだ。
そして、ひいばあはというと……一人戦鳥を身にまとい皆の荷物を持っている。 鳥の形態で飛ぶことが出来ないのは仕方無いとして、死の翼は先の戦いのダメージを殆ど回復する事が出来ておらず非常に痛々しい様子だ。
「ひいばあ大丈夫かな……」
何とか飛ぶことは可能なようだが、もしかしたら当座の目的地も死の翼の現状の飛行能力を加味しての事なのかもしれない。
しかし、それにしてもこの空を飛ぶという感覚には全く慣れないし唯一の命綱は世良さんのウエストに回した自身の腕のみ……。
高い所は苦手でもあるので正直気が気ではないのだが、思ったより風の抵抗が無いのは戦鳥に目には見えない防御壁のようなものが展開しているからだろうか。
既に瀑布を離れて神殿は遥か下界に小さく見える。 その上空に出れば、いくつもの大きな川があの場所に流れ込んでいるのが分かるのだが、これもまた絶景というより他は無い。 川の周囲は深い森が広がっており、その木々は背が高く葉は細く尖っている。
「これは針葉樹の森ですよね?」
「そうよ、こちらの森は殆どそうなの」
「はーっ、しかしホント凄いな……」
針葉樹の森のわずか上空を飛び続けるのだが、ただただひたすらに森が続いている。 どこまでも続く景色を眺めていたのだが、不意に視界が暗くなった。 日でも陰ったのかと上空を見ると、日光を遮ったものの正体に言葉を失ってしまう。
「……!?」
本来見えるはずの太陽が見えないのは、私達の上空を飛行している物体があるからだが、これは正確には生き物と言った方が良いだろう。
そして、再び日の光を浴びる事が出来るようになったのは、上空を飛んでいた飛行生物が横に付けてきたからなのだが、その姿を再確認してやっと確信が持てるようになる。
「こ、これってもしかして」
「あら、これはマズいわね」
薄い皮膜の張った翼に鋭い歯が並んだくちばし。 頭は尖っており短いしっぽがついているが、これはかつてさる図鑑に載っているのを見た記憶がある。 そう、この飛行生物の名はーー
「プテラノドンー!?」
建物から出て見た光景に度肝を抜かれ思わず素っとん狂な声が出てしまうが、これを絶景と言わずして何と言おうか。
遥か上空から水が勢いよく流れ落ちて来る。 所謂滝、というものだが、異常なのは周囲を見渡しても同じ光景ーー
そう、滝に囲まれた今自分が立っているこの場所は正しく滝つぼ……。 建物内で聞こえてきたのは水の落ちる音だったのだ。
一体どういった理屈でこの場所が存在しているか検討もつかない。 石造りの例の建物を見ると所々コケむしているので、大分古い建造物である事が伺えるのだが、その形は何となく神殿を連想させる。
しかし、この神殿が古くから存在しているのであれば、このような立地でありながら意外と地盤はしっかりとしているるのだろう。
地面も石造りのようだが、つなぎ目などが見当たらない。 と、いう事はこの滝つぼ一帯は一枚の石、もしくは岩という事になる。
「これは……凄いわね」
ひいばあも呆気にとられているのだが、初めてここに来たといった感じだ。 ならば、六百年前はここはは発見されていなかったのかもしれない。
「ここは、果ての瀑布」
「世良さん? 果ての……幕府?」
「違うわよ。 江戸とかの幕府では無くて、滝の別称になるの」
「え! 何で私の考えている事が分かったの?」
「あなたねぇ……少しは勉強しなさい」
勉強しなさいとは言うものの、本などはかさばるし違う世界の物を極力持ち込まない方が良いという理由で教科書等は持ってこなかった。 因みに筆記用具とメモ帳は持っているが、これは自身の見たものや聞いた事で重要な内容を記録する為だ。
「ここは、かつて世界の果てと呼ばれていたわ。 そして……」
「ここ、果ての神殿で貴女は戦鳥”破邪の大翼”と契約した。 そうよね?」
「私に関わりの深いここが転移の地だなんて……。 随分な演出ね」
「たまたまよ。 ここが両陣営の中間地点となるの。 それに、転移装置間で無ければ数人の転移は成功しないリスクもあったのでね」
「えー。 そうなんだ……」
神殿から少し離れた場所で、二対四になって話は続く。
「さて、最後通告よ。 私達と共にくれば戦乱は終わる。 それは、多くの民の願いでもあるのよ」
「民の願いもなにも、和解すればそれで直ぐに終わる事。 長きに渡る戦乱をもたらしているのは互いの指導者よ」
「世良さん……」
「悪いけど私も、あなた達に与する事は出来ないわ」
まあ、ひいばあも当然その答えになるが、キアも確信を持った表情で敵である二人と対峙している。
「ならば、羽音。 貴女はどうする? 貴女の力があれば、国の統一も、世界に巣食う厄災も駆逐する事が出来るのよ?」
「……」
「そして貴女が力を発現する為には刻印を刻むより他は無く、それが叶うのはラウ城の地下にある刻印の間のみ」
「……」
「そこまでよ! この子が刻印を刻む必要などない!!」
「ひいばあ……」
物凄い表情で睨みつけているが、その視線の先にいる人物の表情はサングラスに阻まれて伺い知る事が出来ない。
「フ……」
その口角が吊り上がるのと同時に二人の少女の頭上に魔法陣が浮かび上がる。
「え! そんな!」
今ここで決着を付けようというのか。 だとしたら余りにも短絡的過ぎると思っていたのだが、戦鳥はその形を崩す事なく地表に降り立ち契約者の傍に佇む。
「……!?」
何をするつもりなのかと思って見ていると二人は戦鳥の背に飛び乗る。
「え! あれってもしかして」
戦鳥は契約者を背に乗せたまま羽ばたき地上を離れる。 世良さんから話には聞いていたが、戦鳥をまとう事無くその背に乗って空を飛ぶことも出来ると言っていた。 しかし、実際に見るのは初めてだ。
「次にあなた達と会う時は戦場になるでしょうね……それではごきげんよう」
それだけ言うと二人は飛び去っていってしまう。 その姿が遠く見えなくなるまで見送ると今度は私達がここを離れる番となるが……。
「さて、私達もそろそろ行かねばならないけど」
そう、私達もキアの陣営である正王国へ向かわねばならないが、どのように行くのかなんて分からない。 そこへキアが何かを言うが、いきなり自身の戦鳥である炎の翼を召喚する。
「うわっ! いきなり何?」
予想外の事に思わず驚いてしまうが、驚愕なのはこれだけでは無い、キアは話を続けているが、炎の翼の目から光が放たれる。 光が照射されると何もない虚空に映像を映し出すのだが、これはホログラムというものでは無いだろうか。
「へー。 凄いなぁ」
関心しているとキアは私に向かってドヤ顔になる。
「何よ、凄いのはキアじゃ無くて戦鳥の方でしょ?」
こんな時にまでマウンティングを忘れないとはキアも中々の性格だ。 しかし、余り気にしても仕方が無い。 映し出された映像は一瞬絵のように見えるのだが、次第に単なる絵では無い事に気づく。
「これもしかして、世界地図ですか?」
「ちょっと違うわね。 ラウ王国の地図になるの」
「はーっ、ラウ王国って広いんですねぇ……」
異世界の地図なのではっきりとした事は言えないのだが、かなり大きい国ではないかと思う。 そんな事を考えながらもキアの説明は続くのだが、映像を指で触るとその部分に点が付く。 どうやらここが現在地のようだ。
点を起点として指でなぞると線を引く事が出来るのだが、また点で括る。 この点が目的地である正王国の拠点と言う訳なのだろう。 そこに、世良さんが何か言うのだが、その言葉に対してキアは再び線を引き点で括る。
「これってもしかして、真王国の拠点……ラウ城ですか?」
「ええ、そうね。 ここがラウ城で、こっちが正王国の拠点になるわね……」
ここ果ての瀑布を起点とすると、ちょうど時計の針の十時十分の位置に二つの拠点がくるのだが、ヒナさんは中間地点と言っていたものの針で例えると短針の位置がラウ城で、長針の位置に正王国の拠点がくるようになる。
「これで見ると、正王国の方が遠いですよね?」
「まあ、仕方ないわよ。 多少わね……」
これで説明は終わりかと思っていたのだが、キアは線の途中に点を作る。 これはもしかしたら、今日中に目的地に辿り着く事が出来ないという事ではないだろうか。
「ここが当座の目的地なんですか?」
「そう、流石に空を飛んでも今日中に辿り着く事は出来ない。 取り敢えずはここまで飛ぶことになるわね」
何でも聞けば、正王国領内であれば何処であっても戦鳥の戦士を速やかに受け入れるように、各都市に通達が行っているそうだ。 これから向かうのはスザンと言う小さな都市だそうで、夜になるまでには辿り着けるだろうとのことだ。
「そうと決まれば急ぎましょう。 グズグズしていると日が暮れてしまうわ」
ひいばあの言う通り、太陽は真上から少し傾いている。 あちらから転移したのが、昼過ぎだった事を考えるともしかしたら、時間の流れは同じなのかもしれない。
(ここがひいばあの故郷……それならば、”私の故郷”でも良いのかな……)
「羽音、しっかり捕まってなさい」
「はい」
世良さんの召喚した破邪の大翼に二人乗りする事になるのだが、当然戦鳥は一人乗りの為しっかりと捕まっていないと落っこちてしまう。
(……むう、世良さん細いなあ)
そのウエストに手を回すと改めてスタイルの良さを認識せざるを得ない。 因みに世良さんは、両手にグリップ付きの棒のようなものを持っており、それらはワイヤーで戦鳥と繋がっている。
「それで、戦鳥をコントロールするんですか?」
「そんな所ね。 それじゃ行くわよ」
それだけ言うと、大翼は大きく羽ばたき大地を離れる。 何とも言い知れぬ浮遊感に戸惑うが、これが戦鳥に乗って空を飛ぶ感覚なのだろうか。 キアも同じく炎の翼の背に乗って空を飛んでいるが、その様子は手慣れたものだ。
そして、ひいばあはというと……一人戦鳥を身にまとい皆の荷物を持っている。 鳥の形態で飛ぶことが出来ないのは仕方無いとして、死の翼は先の戦いのダメージを殆ど回復する事が出来ておらず非常に痛々しい様子だ。
「ひいばあ大丈夫かな……」
何とか飛ぶことは可能なようだが、もしかしたら当座の目的地も死の翼の現状の飛行能力を加味しての事なのかもしれない。
しかし、それにしてもこの空を飛ぶという感覚には全く慣れないし唯一の命綱は世良さんのウエストに回した自身の腕のみ……。
高い所は苦手でもあるので正直気が気ではないのだが、思ったより風の抵抗が無いのは戦鳥に目には見えない防御壁のようなものが展開しているからだろうか。
既に瀑布を離れて神殿は遥か下界に小さく見える。 その上空に出れば、いくつもの大きな川があの場所に流れ込んでいるのが分かるのだが、これもまた絶景というより他は無い。 川の周囲は深い森が広がっており、その木々は背が高く葉は細く尖っている。
「これは針葉樹の森ですよね?」
「そうよ、こちらの森は殆どそうなの」
「はーっ、しかしホント凄いな……」
針葉樹の森のわずか上空を飛び続けるのだが、ただただひたすらに森が続いている。 どこまでも続く景色を眺めていたのだが、不意に視界が暗くなった。 日でも陰ったのかと上空を見ると、日光を遮ったものの正体に言葉を失ってしまう。
「……!?」
本来見えるはずの太陽が見えないのは、私達の上空を飛行している物体があるからだが、これは正確には生き物と言った方が良いだろう。
そして、再び日の光を浴びる事が出来るようになったのは、上空を飛んでいた飛行生物が横に付けてきたからなのだが、その姿を再確認してやっと確信が持てるようになる。
「こ、これってもしかして」
「あら、これはマズいわね」
薄い皮膜の張った翼に鋭い歯が並んだくちばし。 頭は尖っており短いしっぽがついているが、これはかつてさる図鑑に載っているのを見た記憶がある。 そう、この飛行生物の名はーー
「プテラノドンー!?」
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