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22. 戦神の如く
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『理音、四時の方向』
ワンパターンに後方から襲撃する棒人間を、光の刃で貫く。
こちらでは人形と呼んでいるようだが、元はと言えばこれらは人間なのだ。
『続いて、十時と一時の方向』
「ええ、分かっているわ」
戦鳥のサポートが無くとも、この程度ならば問題無い。
すれ違い様に抜き胴で切り裂くと、あっさりと地に落ちていく。
『見事だ』
だが、左手の刃の出力が安定していない。
『済まない、理音』
「謝らないで、放っていたのは私の責任よ」
王都防衛戦で激しく傷付いた翼を癒す事もままならず、異世界に逃れ付いた。
そのまま七十年以上の歳月が流れ、死の翼を纏って戦った事は遠い日の記憶となり今に至る。
そう……再び戦鳥の力を使う日が来るとは夢にも思わなった。
『理音、撃って来る回避を』
「ええ」
(今は戦いに集中しなければ)
敵の戦法が変わり、囲いを止めて遠距離攻撃で攻めて来る。
『こちらが光の矢を使わない事に気付かれたか』
「仕方が無いわ。 遅かれ早かれこうなっていた。 いざとなったら使うわよ」
長い歳月を経て戦鳥の傷は癒えたように見えた。
だが、実際には経年による劣化で傷の再生が滞っている部分があり、特に砲身のダメージが深刻だった。
一度に使用出来る回数は限られているが、このような騙し騙しの戦い方がいつまでも通用する程厄災は甘くない。
(でも、今はやるしかない)
「光の矢を使う!」
『了解した!』
肩部、腰部、の砲身を使用し光の矢を放とうとした瞬間、対象は次々に爆散する。
爆炎の中に存在するのは世良の纏う白き戦鳥、破邪の大翼だ。
「大丈夫ですか? 理音さん」
「ええ、ありがとう」
(世良は二十体以上の敵を相手していた筈。 五分も掛からずに殲滅したというの?)
世良の援護もつかの間。
地上からは玉虫の攻撃が開始される。
「数が多い、捌くのに時間が掛かるわね」
『消耗戦はこちらにとって不利だが、やつらは私達が満足に戦えない事を、理解しつつあるのかも知れない』
そんな心配事を他所に、白き翼は地面に向かって急降下する。
「はぁぁぁぁぁぁぁあ!」
垂直に降り立った白き翼は地面にこぶしを突き立てる。
衝撃波によって玉虫は吹き飛ばされ、宙を舞った後地面や壁に叩き付けられる。
余波によって車のフロントガラスや、ビルの窓にヒビが入るがこれ位はご愛嬌だろう。
『すさまじい力だ』
「ええ、本当に凄いわね」
破邪の大翼はこれまで、光の矢も刃も使用していない。
あくまでも徒手空拳で厄災と戦っているが、たとえ死の翼が本調子であったとしても、あのような戦い方は到底出来ないだろう。
全ての性能の面で完全に私の翼を上回っているのは五百年の間に戦鳥の性能も進化しているという事なのだろうか。
疑問を他所に、新たな敵が出現する。
『理音アンノウンだ』
「あれは?」
コウモリのような翼に昆虫の複眼と鉤爪を持つ奇怪な飛行物体だが、あれも厄災の一種だろう。
翼の付け根のわずかな突起から、光を放ち攻撃してくるが、大した威力が無いように感じる。
撃ち落とすまでも無く、接近して刃で切り裂けば問題無いと思うのだが、他にどのような攻撃を仕掛けてくるのか未知数なので、ここは敵の出方を伺う。
大翼の方にも数体が飛んでいくが、先程の攻撃ではあの猛攻を止める事は出来ない。
こちらの周囲を囲むように飛行しているとやがて仕掛けて来るが、何と鉤爪を飛ばして来た。
予想外の攻撃に反応が遅れ鉤爪に腕を挟まれてしまうが、爪はワイヤーのような物で繋がっており「ビン」と腕を引っ張られてしまう。
「くっ」
ワイヤーをすかさず刃で切り裂くが、次々に爪を飛ばしてこちらを拘束しようとしてくるので刃で切り払う。
大翼はというと迎撃する術が無い為、既に両腕を掴まれて空中に張り付けになっている。
「世良、今行くわ」
身動きが取れないであろう大翼に人形達が迫り来るので、いよいよ光の矢を使おうとしたその時、大翼は自らを拘束しているワイヤーをおもむろに掴むと、無造作に引っ張る。
力負けしたコウモリもどきはバランスを失い、引っ張られるままに振り回されやがて人形達と激しく衝突する。
皮肉にも大翼の獲物となって完全に破壊されるまで振り回され、人形達の殲滅に貢献するが、やはりこのような戦い方が出来るとは戦鳥の性能もさる事ながら、世良の身体能力の高さも相まっての事だろう。
(私も戦鳥を使えるようになる為に訓練はしたが、世良のそれは次元が違うようにも思う。 一体どのような訓練をすればこのように出来るのか……)
これで戦いは終わりかと思ったが、地上に新たな敵が出現する。
先の戦いで出現した一つ目よりも二周りも大きい三つの目を持つ怪物だが、恐らくこれが最後の締めだろう。
三つ目は出現と同時に攻撃を仕掛けて来る。
一つ目の時のような肩からのミサイルの攻撃に加えて、手や足、胸や背中、ほぼ全身からミサイルを打ち出し全周囲に攻撃を繰り出す。
今後こそは光の矢を使い、ミサイルを迎撃する。
使用回数が限られている為、攻撃に使用したかったが、傷を癒すことがままにならない現状ではこれ以上ダメージを受ける訳にもいかない。
攻撃は周囲を瓦礫の山に変えるが、あれ程の攻撃にも関わらず大翼は健在だ。
どのようにやり過ごしたのか分からないが、接近戦が主体なのだから純粋に防御力に優れているのかもしれない。
次は大翼の番だが、翼を大きく広げて構える。
「はぁぁぁっ」
突き出した足に徐々に光が集まっていくが、魔力ではなく闘気を足に集中させているのだろう。
敵は第二射を準備しているが、十分に力を集中させたのであろう大翼が大きく跳躍し、三つ目に対して飛び蹴りを放つ。
「せぇぇぇぇいっ!」
凄まじい勢いもそのままに眩しく輝く蹴りは三つ目の胸を突き破り、大翼は貫通して地面に着地した。
体に大きな風穴を開けられた三つ目はその場に倒れ、激しく爆発し炎上する。
戦いは終わった。
世良の、破邪の大翼の戦神の如き活躍で勝利を収めることが出来たが、その活躍とは裏腹に自らの翼の力が徐々に失われていく事も改めて認識せざる負えない、そんな戦いでもあった。
ワンパターンに後方から襲撃する棒人間を、光の刃で貫く。
こちらでは人形と呼んでいるようだが、元はと言えばこれらは人間なのだ。
『続いて、十時と一時の方向』
「ええ、分かっているわ」
戦鳥のサポートが無くとも、この程度ならば問題無い。
すれ違い様に抜き胴で切り裂くと、あっさりと地に落ちていく。
『見事だ』
だが、左手の刃の出力が安定していない。
『済まない、理音』
「謝らないで、放っていたのは私の責任よ」
王都防衛戦で激しく傷付いた翼を癒す事もままならず、異世界に逃れ付いた。
そのまま七十年以上の歳月が流れ、死の翼を纏って戦った事は遠い日の記憶となり今に至る。
そう……再び戦鳥の力を使う日が来るとは夢にも思わなった。
『理音、撃って来る回避を』
「ええ」
(今は戦いに集中しなければ)
敵の戦法が変わり、囲いを止めて遠距離攻撃で攻めて来る。
『こちらが光の矢を使わない事に気付かれたか』
「仕方が無いわ。 遅かれ早かれこうなっていた。 いざとなったら使うわよ」
長い歳月を経て戦鳥の傷は癒えたように見えた。
だが、実際には経年による劣化で傷の再生が滞っている部分があり、特に砲身のダメージが深刻だった。
一度に使用出来る回数は限られているが、このような騙し騙しの戦い方がいつまでも通用する程厄災は甘くない。
(でも、今はやるしかない)
「光の矢を使う!」
『了解した!』
肩部、腰部、の砲身を使用し光の矢を放とうとした瞬間、対象は次々に爆散する。
爆炎の中に存在するのは世良の纏う白き戦鳥、破邪の大翼だ。
「大丈夫ですか? 理音さん」
「ええ、ありがとう」
(世良は二十体以上の敵を相手していた筈。 五分も掛からずに殲滅したというの?)
世良の援護もつかの間。
地上からは玉虫の攻撃が開始される。
「数が多い、捌くのに時間が掛かるわね」
『消耗戦はこちらにとって不利だが、やつらは私達が満足に戦えない事を、理解しつつあるのかも知れない』
そんな心配事を他所に、白き翼は地面に向かって急降下する。
「はぁぁぁぁぁぁぁあ!」
垂直に降り立った白き翼は地面にこぶしを突き立てる。
衝撃波によって玉虫は吹き飛ばされ、宙を舞った後地面や壁に叩き付けられる。
余波によって車のフロントガラスや、ビルの窓にヒビが入るがこれ位はご愛嬌だろう。
『すさまじい力だ』
「ええ、本当に凄いわね」
破邪の大翼はこれまで、光の矢も刃も使用していない。
あくまでも徒手空拳で厄災と戦っているが、たとえ死の翼が本調子であったとしても、あのような戦い方は到底出来ないだろう。
全ての性能の面で完全に私の翼を上回っているのは五百年の間に戦鳥の性能も進化しているという事なのだろうか。
疑問を他所に、新たな敵が出現する。
『理音アンノウンだ』
「あれは?」
コウモリのような翼に昆虫の複眼と鉤爪を持つ奇怪な飛行物体だが、あれも厄災の一種だろう。
翼の付け根のわずかな突起から、光を放ち攻撃してくるが、大した威力が無いように感じる。
撃ち落とすまでも無く、接近して刃で切り裂けば問題無いと思うのだが、他にどのような攻撃を仕掛けてくるのか未知数なので、ここは敵の出方を伺う。
大翼の方にも数体が飛んでいくが、先程の攻撃ではあの猛攻を止める事は出来ない。
こちらの周囲を囲むように飛行しているとやがて仕掛けて来るが、何と鉤爪を飛ばして来た。
予想外の攻撃に反応が遅れ鉤爪に腕を挟まれてしまうが、爪はワイヤーのような物で繋がっており「ビン」と腕を引っ張られてしまう。
「くっ」
ワイヤーをすかさず刃で切り裂くが、次々に爪を飛ばしてこちらを拘束しようとしてくるので刃で切り払う。
大翼はというと迎撃する術が無い為、既に両腕を掴まれて空中に張り付けになっている。
「世良、今行くわ」
身動きが取れないであろう大翼に人形達が迫り来るので、いよいよ光の矢を使おうとしたその時、大翼は自らを拘束しているワイヤーをおもむろに掴むと、無造作に引っ張る。
力負けしたコウモリもどきはバランスを失い、引っ張られるままに振り回されやがて人形達と激しく衝突する。
皮肉にも大翼の獲物となって完全に破壊されるまで振り回され、人形達の殲滅に貢献するが、やはりこのような戦い方が出来るとは戦鳥の性能もさる事ながら、世良の身体能力の高さも相まっての事だろう。
(私も戦鳥を使えるようになる為に訓練はしたが、世良のそれは次元が違うようにも思う。 一体どのような訓練をすればこのように出来るのか……)
これで戦いは終わりかと思ったが、地上に新たな敵が出現する。
先の戦いで出現した一つ目よりも二周りも大きい三つの目を持つ怪物だが、恐らくこれが最後の締めだろう。
三つ目は出現と同時に攻撃を仕掛けて来る。
一つ目の時のような肩からのミサイルの攻撃に加えて、手や足、胸や背中、ほぼ全身からミサイルを打ち出し全周囲に攻撃を繰り出す。
今後こそは光の矢を使い、ミサイルを迎撃する。
使用回数が限られている為、攻撃に使用したかったが、傷を癒すことがままにならない現状ではこれ以上ダメージを受ける訳にもいかない。
攻撃は周囲を瓦礫の山に変えるが、あれ程の攻撃にも関わらず大翼は健在だ。
どのようにやり過ごしたのか分からないが、接近戦が主体なのだから純粋に防御力に優れているのかもしれない。
次は大翼の番だが、翼を大きく広げて構える。
「はぁぁぁっ」
突き出した足に徐々に光が集まっていくが、魔力ではなく闘気を足に集中させているのだろう。
敵は第二射を準備しているが、十分に力を集中させたのであろう大翼が大きく跳躍し、三つ目に対して飛び蹴りを放つ。
「せぇぇぇぇいっ!」
凄まじい勢いもそのままに眩しく輝く蹴りは三つ目の胸を突き破り、大翼は貫通して地面に着地した。
体に大きな風穴を開けられた三つ目はその場に倒れ、激しく爆発し炎上する。
戦いは終わった。
世良の、破邪の大翼の戦神の如き活躍で勝利を収めることが出来たが、その活躍とは裏腹に自らの翼の力が徐々に失われていく事も改めて認識せざる負えない、そんな戦いでもあった。
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