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猛牛、地下22階層を制する

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ミノタウロス兵を前衛に人狼兵が続き、後衛に魔人を配する分隊を4つ創り、4本の比較的に幅が広い橋を選び、それぞれに前進を始める。

「ふん、学習しない獣どもめ、惹きつけてから電撃の魔法を放つ!」

シュタルティア王国軍の22階層防衛部隊の指揮官は魔術師隊に準備を命じる。この強風の吹き荒れる階層に王国軍が初めて侵攻した際は雷撃の魔法で勝利を収めたのだ。

雷撃は空気を電離しながら連鎖的に放電する事でジグザグに進んで行く。厳密に言えば風の影響を空気は受けるのだが、その雷撃の速度からすればほとんど影響なく相手に届く事になる。

その放電はアークの域には達しているが、所詮は人が扱える程度のモノで落雷などとは程遠く、電圧は低い。ただ、それでも直撃すれば火傷を伴うかなりのダメージは負う事になり、当たり所が悪ければ死に至る。

「よし、いまだッ!雷撃ッ!」

「ッ、来るぞ!盾構えッ!」

22階層の魔導装置付近にある程度近づいたところで、シュタルティア王国軍の魔術師隊に動きが見えたため、ダロスが大声を上げる。

それに従い、先頭に立つミノタウロス兵が大盾を構え、勢いよく地面に突き刺していく。その大盾の下部には2本の銅爪が付き、そこから銅線の束が幾筋か盾の表面に伸びている。そして裏面は天然ゴムの素材で覆われていた。

「同じ手を何度も食うかよ、馬鹿野郎ッ!」

ミノタウロス兵に向けて放たれた雷撃の魔法は大盾で防がれ、表面に這う銅線の束を通って、地面に突き刺さる銅爪から大地へと流れていく。盾に避雷針の役割を持たせた第2工房製作の対雷撃兵装“避雷盾”の効果である。

「ぐッ、多少なりともしびれるんだな、やっぱり……」
「回復しますッ!」

直ぐに後衛の魔人達からの回復魔法による支援が入り、ミノタウロス兵達は大盾を地面から引き抜き、再度の前進を始め、その後に身を低くした人狼兵達が続く。

「小隊長、効いてませんッ!」

「見れば分かる、魔術師隊、結界準備ッ!クロスボウ隊、魔導装置の強風を一時的に止め、斉射を行うぞッ!」

4方向から迫る魔族兵に対して、彼我の距離80m程で強風を止め、クロスボウの斉射が行われる。

「ッ!」
「がぁッ!」

身体の大きいミノタウロス兵は大盾であっても、全てを護る事はできないため、露出している部分に矢を受けたモノが、呻き声をあげる。しかし、致命傷にはならない様に急所はしっかりと防御されていた。

「ッ、ガンランス、撃てッ!」

自身も矢を受けながらダロスが号令を飛ばすと、前衛のミノタウロス兵が銃槍による射撃を行い、複数の銃声が鳴り響く。

「ぐうぅッ!」
「かはッ」
「痛でぇ……」

放たれた経口の大きい銃弾は王国軍の魔術師隊の結界を打ち砕き、横列展開していたクロスボウ兵の幾人かに命中する。

「な、結界が意味を成さないだとッ!」

「皆、続くよッ!撃てッ!!」

狼狽する王国兵に対して、身を屈めたミノタウロス兵の背後から人狼兵が身を乗り出して、AK‐47による斉射を行う。

「うわぁッ!」
「げほッ……」

暫しの銃声の後に、王国軍兵で立ち上がれる者の姿は無い。
数名のミノタウロス兵の負傷のもと、第22階層の制圧は成ったのだった。
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