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魔王、カプ♪チュ~される

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工房区画からの帰り道、まったりと一人歩きしていると、その賑わいが分かる。

ここのところ、青銅のエルフ達の間では素材革命が起きているらしい。最近、取り戻した地下30階層の鉱山区画を中心に他の区画でも再調査が行われ、様々な素材が発見された。

基本的に地球とこの世界で共通する素材には地球の名称が与えられる事になっている。それに伴い、従来から存在を知られるこの世界の素材も名称変更された。そのほうが、“科学”の発展に寄与するのだとか…… 

今も中央工房では綿と硝酸、硫酸で作ったニトロセルロースと植物由来の樟脳をベースにセルロイド(プラスチック)を製造する実験を行っているグループがあり、そろそろ成果が出そうとの事だ。

俺の脳裏に“環境破壊”と言う言葉が過った。

「……後でリーゼロッテに相談して、環境への配慮もしてもらうべきか」

まぁ、実験室的製法レベルの話なので、大量生産とかは程遠いが……
そんな危惧を抱きつつ、最下層のスカーレットの居住区の私室に向かった。

「スカレ、お邪魔して構わないか?」
「はい、いらしてください」

ノックの後に返事が在り、彼女の私室に入る。
そこは派手さよりも品を重視した家具等が置かれた落ち着いた雰囲気の部屋だ。

先に、部屋にいた吸血鬼のイリアが会釈の後に話しかけてくる。

「リーゼロッテ様の御用事はもう宜しいのですか?魔王様」

「あぁ、十分に説明を受けて来た。あまり難しい事は分からなかったがな…… そちらはどうだ?いい物件はあったのか?」

彼女達の手元には資料が握られており、テーブルの上にも数枚が置かれている。
イリアの下級眷属となった安田郁夫が日本最大の某不動産サイトから自宅で印刷したA4サイズの賃貸物件の資料である。

「おじ様、これなどは如何でしょう?家賃がお得ですわ」

椅子に腰掛けた俺にスカーレットが一枚の資料を差し出す。

「スカレ、そこをよく見るんだ、築48年になっている。ほぼ半世紀じゃないか…… せめて、築30年くらいの物件までにしたいな…… イリア、向こうでの拠点は君の管轄になる。最終的にイリアが決めるといい」

「分かりました。では、私が決めさせていただきますね。築30年迄のほかに何か条件はありますでしょうか?」

「そうだな、6人くらい滞在させる予定だから3DK以上が望ましい。あまり出歩かせる気もないから駅近には拘らなくてもいい。後、あんまり家賃が高いのもダメだぞ!」

元がしがないサラリーマンのため、本能的な部分でコスパを追求してしまう…… 俺もテーブルの資料を手に取り、目を皿のようにして眺める。

その後、紆余曲折があったものの、新宿区の築29年3LDK、家賃13.5万、管理費5000円の物件に決まった。

「では、後日にヤスダと一緒に下見に行ってまいりましょう。これで、私は失礼しますね」

イリアはさっと席を立ち、一礼してから退出する。
その際に何かスカーレットに目配せをしていた様な……

賃貸資料を眺めている間にスカーレットの執事ゼルギウスが持って来てくれたハーブティーが残っているので、それをいただいて俺も自室に戻るとするか。

「…… おじ様、リーゼロッテ様とは付き合いが長いのですよね?」
「そうだな、最初はブラドが連れてきたんだ」

「お父様が?」

「ブラドは錬金術師でもあるだろう?あいつとリゼが素材を取りに行くから手伝えと言ってきたんだよ。で、それが縁になってリゼに度々連れ出されるようになった。それはそれで楽しかったけどな」

「そうなのですね、お父様が……」

スカーレットは自身の金色の髪を指で弄りながら、考える仕草をする。

ちょうど、ハーブティーを飲み終えたので椅子から立ち上がると、見送ってくれるのかスカーレットも席を立った。

そして、おもむろに近寄ってくる。
ん、なんだ?やけに近いな。

「……おじ様、昔の約束を果たしていただきますわ」
「約束?」

彼女の手が俺に伸びてきて、不意に首筋に痛みを感じる。

カプ♪チュ~~ッ

「え!?ちょッ、おま……」

不意に身体から力が抜けて、スカーレットに支えられる。

「おじ様がいけませんのよ、リーゼロッテ様とあんな……」

まさか、見られてたのか!?
そのまま彼女の寝室のベッドに連れて行かれてしまう。

「約束通り、私をお嫁さんにしてくださいね……」

また、終始リードされてしまった……

……………
………

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