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試作型日本刀、あっさりと折れる
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王国軍の中心部にて、聖女と呼ばれる神術師のミリアは混乱の最中にあった。彼女の概念装は結界魔法を練習していた時、偶然に獲得した“緩衝”だ。これは発動中、彼女自身や展開する結界に触れたモノの威力を極度に低減させる能力である。
これを用いて不破の結界を張ることができたため、気が付けば聖女の名を冠していた。教会の信徒としては嬉しい限りではあるが、そのせいで今回の北部森林地帯のダンジョン探索に駆り出されたのである。
「……絶対に壊れないって訳じゃないけれど…… 初めてだわ」
先程、巨大な火球が飛んでくるのが見えたので、事前詠唱していた結界魔法に手を加えて補強し、それを受け止めた。そこまではいいのだけれど……その後、火球の爆発に耐え切れず、結界が吹き飛び、死傷者が出てしまった。
「ミリア殿、此処からでは矢も十分な威力を持たせられない、このままではじわじわと被害が広がる!前進する!!先ほどの様な攻撃魔法の対処を頼む」
この本隊の指揮をとる白い鎧の聖騎士ラトスが少し前の位置から叫んでくる。
「ま、待ってください!ラトス殿!!先ほどの斥候役の冒険者が言っていた奇妙な武器の件もあります、慎重にされては如何でしょう?」
「だが、数では少し此方が勝る。それに慎重に構えたところで向こうは攻めてくるぞ!折角、犠牲を出して獲得した階層をむざむざ奪われる訳にもいかない。相手の事を知るためにも一戦を交える!!」
聖騎士の指示により、ダンジョン探索のために出された部隊は前進を始めるのだった。
……………
………
…
人狼兵達は最下層からヴィレダが率いて来た小隊と地下31階層に駐留していた小隊の2つがある。彼らは先の戦いで十数名の同胞を失っており、その怒りもあって戦意は高い。
2つの小隊は左右から王国軍本隊の側面を突こうと鉱山区画の平地を疾走する。王国軍の弓兵達が射撃を行うも、疾走する人狼に矢を当てる事は困難だ。
「ッ、今です!突貫しますわ!!」
弓兵が左右の人狼達に矢を斉射した直後を狙って、盾を構えていたコボルト隊の背後から吸血鬼達が弾丸の如く低空飛行で飛び出していく。それに合わせて、コボルト隊も前進を始めた。
「行くよ、皆の仇を取るんだッ!」
攻撃可能な距離まで接近した人狼達はヴィレダを中心にした陣形を組んで、敵の弓兵隊に向けて銃撃を行う、連続した発砲音の後に悲鳴があがり、王国軍の右側面が崩れていく。
一方で、正面から飛来する吸血鬼に対して盾を構えていた前列の兵士達も、近距離からの銃撃に耐える事が出来ない。
「ぐはッ!」
「うわぁああ!!」
「ッ!」
「ちッ、迂闊だったかッ!!弓兵、後退!歩兵前へ!このまま下がるぞ!!聖女殿、結界を!」
「用意はできています、歪曲結界!!」
王国軍の正面から、彼らを覆う様に虹色の結界が歪曲して広がっていく。本来、広範囲を護る結界の強度は面積に比例して低減するが、この歪曲結界にはミリアの“緩衝”の概念が付与されている。
それは再度、正面から放たれた弾丸を柔らかく受け止めた。
「……やはり、このAK‐47の火力では突破できませんか」
「その代わり、此方も攻撃されることはありません」
主の呟きに側に侍る老執事が答える。
その間にも王国軍は陣形を立て直して後退していく。
「厄介な相手は早めに潰しておかないとなっ!」
左側から攻め上がっていた人狼小隊と行動していた俺は展開される結界に手を翳す。
「悉くを貫け、魔槍よ!!」
黒い魔力光を放つ無数の槍が結界の一部に集中して突き刺さり、やがてそれを破壊する。それに呼応して、俺の周囲の人狼達が敵歩兵に近接格闘を仕掛け、混戦となる。
その中で目立つ白い鎧の騎士を見つけ、俺は日本刀を手に切り掛かった。
「ぐッ、くそ、魔族め!」
その騎士は腕固定の小楯で俺の攻撃を弾き、そのまま長剣で切り掛かってくる。その刃に魔力光が宿るのを確認したため、回避を選択してバックステップをおこなった。
そして再度、俺も切り返すがそれは相手の長剣で受け止められた。
まぁ、確認のためにわざと受けやすい斬撃を繰り出したのだけどな。
その際に試作型日本刀“みすりる”は長剣と接触した部分からスッパリと折れてしまった。
「くっ、やはり概念装かッ!」
恐らく、“切断”なりの概念を長剣に付与しているのだろう。
「はっ、俺に切れないものなど、ッぐはッあ!?」
「何ッ!?」
どや顔で何かを言おうとした騎士は次の瞬間、怒りの形相をしたヴィレダに頭を蹴り飛ばされて絶命した。その首はあり得ない方向に曲がっている……
「………え?」
これを用いて不破の結界を張ることができたため、気が付けば聖女の名を冠していた。教会の信徒としては嬉しい限りではあるが、そのせいで今回の北部森林地帯のダンジョン探索に駆り出されたのである。
「……絶対に壊れないって訳じゃないけれど…… 初めてだわ」
先程、巨大な火球が飛んでくるのが見えたので、事前詠唱していた結界魔法に手を加えて補強し、それを受け止めた。そこまではいいのだけれど……その後、火球の爆発に耐え切れず、結界が吹き飛び、死傷者が出てしまった。
「ミリア殿、此処からでは矢も十分な威力を持たせられない、このままではじわじわと被害が広がる!前進する!!先ほどの様な攻撃魔法の対処を頼む」
この本隊の指揮をとる白い鎧の聖騎士ラトスが少し前の位置から叫んでくる。
「ま、待ってください!ラトス殿!!先ほどの斥候役の冒険者が言っていた奇妙な武器の件もあります、慎重にされては如何でしょう?」
「だが、数では少し此方が勝る。それに慎重に構えたところで向こうは攻めてくるぞ!折角、犠牲を出して獲得した階層をむざむざ奪われる訳にもいかない。相手の事を知るためにも一戦を交える!!」
聖騎士の指示により、ダンジョン探索のために出された部隊は前進を始めるのだった。
……………
………
…
人狼兵達は最下層からヴィレダが率いて来た小隊と地下31階層に駐留していた小隊の2つがある。彼らは先の戦いで十数名の同胞を失っており、その怒りもあって戦意は高い。
2つの小隊は左右から王国軍本隊の側面を突こうと鉱山区画の平地を疾走する。王国軍の弓兵達が射撃を行うも、疾走する人狼に矢を当てる事は困難だ。
「ッ、今です!突貫しますわ!!」
弓兵が左右の人狼達に矢を斉射した直後を狙って、盾を構えていたコボルト隊の背後から吸血鬼達が弾丸の如く低空飛行で飛び出していく。それに合わせて、コボルト隊も前進を始めた。
「行くよ、皆の仇を取るんだッ!」
攻撃可能な距離まで接近した人狼達はヴィレダを中心にした陣形を組んで、敵の弓兵隊に向けて銃撃を行う、連続した発砲音の後に悲鳴があがり、王国軍の右側面が崩れていく。
一方で、正面から飛来する吸血鬼に対して盾を構えていた前列の兵士達も、近距離からの銃撃に耐える事が出来ない。
「ぐはッ!」
「うわぁああ!!」
「ッ!」
「ちッ、迂闊だったかッ!!弓兵、後退!歩兵前へ!このまま下がるぞ!!聖女殿、結界を!」
「用意はできています、歪曲結界!!」
王国軍の正面から、彼らを覆う様に虹色の結界が歪曲して広がっていく。本来、広範囲を護る結界の強度は面積に比例して低減するが、この歪曲結界にはミリアの“緩衝”の概念が付与されている。
それは再度、正面から放たれた弾丸を柔らかく受け止めた。
「……やはり、このAK‐47の火力では突破できませんか」
「その代わり、此方も攻撃されることはありません」
主の呟きに側に侍る老執事が答える。
その間にも王国軍は陣形を立て直して後退していく。
「厄介な相手は早めに潰しておかないとなっ!」
左側から攻め上がっていた人狼小隊と行動していた俺は展開される結界に手を翳す。
「悉くを貫け、魔槍よ!!」
黒い魔力光を放つ無数の槍が結界の一部に集中して突き刺さり、やがてそれを破壊する。それに呼応して、俺の周囲の人狼達が敵歩兵に近接格闘を仕掛け、混戦となる。
その中で目立つ白い鎧の騎士を見つけ、俺は日本刀を手に切り掛かった。
「ぐッ、くそ、魔族め!」
その騎士は腕固定の小楯で俺の攻撃を弾き、そのまま長剣で切り掛かってくる。その刃に魔力光が宿るのを確認したため、回避を選択してバックステップをおこなった。
そして再度、俺も切り返すがそれは相手の長剣で受け止められた。
まぁ、確認のためにわざと受けやすい斬撃を繰り出したのだけどな。
その際に試作型日本刀“みすりる”は長剣と接触した部分からスッパリと折れてしまった。
「くっ、やはり概念装かッ!」
恐らく、“切断”なりの概念を長剣に付与しているのだろう。
「はっ、俺に切れないものなど、ッぐはッあ!?」
「何ッ!?」
どや顔で何かを言おうとした騎士は次の瞬間、怒りの形相をしたヴィレダに頭を蹴り飛ばされて絶命した。その首はあり得ない方向に曲がっている……
「………え?」
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