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魔王、中核都市ブレア―ドへ進軍する
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都市の姿を展望できる小高い丘の上で自動小銃AK-46を肩に担ぎ、人狼突撃兵を従えた天狼娘のヴィレタが思わず愚痴を零す。
「相変わらず人間たちは面倒だね、スカーレット」
「でも、必要な事ですわ…… 本当は分かっているのでしょう」
「ん~、ミザリア領が中核都市を占領されて魔族勢力に付く筋書は分かるよ、ノースグランツ領もそうだったし……」
一応、本音と建前の必要性を理解している彼女だが、どうにも気の進まない部分があった。
(あたし達の傘下に入るのに言い訳って必要?)
何やら言いたそうに不機嫌な表情でモフモフ尻尾を揺らす彼女に対し、俺は丁度良い位置にある銀糸の髪を軽く撫でて一声掛けておく。
「すまないな、もうひと働きしてもらう事になる」
「う~、それが皆の為になるなら構わないよ、イチロー」
全部終わって地下ダンジョンに帰還したら、労いを籠めて人狼達の好物である吉〇家の牛丼特盛を差し入れようと思いつつも、傍に生じた魔力反応へ注意を向ける。
直後、虚空に通信用の極小転移ゲートが開いた。
「万事整いまして御座います……いらしてください、我が君」
「いつも世話になるな、ミツキ」
先行して段取りを付けてくれた鬼人族の姫に感謝を捧げ、進軍の指示を出す。
「皆ッ、征くよ!!」
「「「ウォオォォオオオォオッ!!」」」
ヴィレダの呼び掛けに気勢を上げた人狼突撃兵達の後方に市街戦用の狙撃銃H&K PSGを手にした吸血鬼飛兵が続き、彼らはミザリア領の中核都市ウォーレン目指して侵攻を始めた。
紛争で主力を城塞都市へ派兵していた領主ゲオルグ・ベイグラッドに抵抗の術は無く、半刻足らずで都市中心部の広場一帯が無血制圧される事となる。
物騒な雰囲気を感じた周辺の領民達が建物に身を隠して事態を窺う中、状況を一望できるディルト商会本店三階の私室から、商会主の娘であるリディアも広場を見下ろす。
「ふふっ、見慣れた場所に魔族兵が居並ぶ光景は新鮮ですね」
現状で起きている事が全て予定調和であると、つい先ほど魔人族の婚約者から聞いたリディアはどこか楽しそうに微笑み、偶々焼き上げていたクッキーを勧めた。
「頂こう…… 甘いな」
「うぅ、お口に合いませんか、グレイド様?」
“いや、そうでもない” と言葉が返ってくるものの、朴訥な彼の反応は分かり難い。
ただ、今回の様にディルト家の者達を気遣って商会に足を運ぶなど、心根に持つ優しさをリディアは折に触れて感じており、自然と頬が緩んでしまう。
(惚れた弱みでしょうか…… いけませんね、これは)
やや表情を引き締めて、手作りの焼き菓子を黙々と食む秀麗な魔人から窓の外に視線を移せば、複数人の護衛を引き連れた領主が大通りを進んで中央広場に入る様子が見えた。
「どんな契約を取り交わされるのでしょうか?」
「それは言えないが、すぐに領主殿より領民に知らされるだろう」
レモングラスの乾燥ハーブを使ったお茶を飲み干し、白磁のカップをテーブルへ降ろしたグレイドも彼女と同じく広場を窺う。
二人の眺める先では、悠然と構えた魔王と意図的に難しい表情をしたミザリア領主が向き合っていた。
「相変わらず人間たちは面倒だね、スカーレット」
「でも、必要な事ですわ…… 本当は分かっているのでしょう」
「ん~、ミザリア領が中核都市を占領されて魔族勢力に付く筋書は分かるよ、ノースグランツ領もそうだったし……」
一応、本音と建前の必要性を理解している彼女だが、どうにも気の進まない部分があった。
(あたし達の傘下に入るのに言い訳って必要?)
何やら言いたそうに不機嫌な表情でモフモフ尻尾を揺らす彼女に対し、俺は丁度良い位置にある銀糸の髪を軽く撫でて一声掛けておく。
「すまないな、もうひと働きしてもらう事になる」
「う~、それが皆の為になるなら構わないよ、イチロー」
全部終わって地下ダンジョンに帰還したら、労いを籠めて人狼達の好物である吉〇家の牛丼特盛を差し入れようと思いつつも、傍に生じた魔力反応へ注意を向ける。
直後、虚空に通信用の極小転移ゲートが開いた。
「万事整いまして御座います……いらしてください、我が君」
「いつも世話になるな、ミツキ」
先行して段取りを付けてくれた鬼人族の姫に感謝を捧げ、進軍の指示を出す。
「皆ッ、征くよ!!」
「「「ウォオォォオオオォオッ!!」」」
ヴィレダの呼び掛けに気勢を上げた人狼突撃兵達の後方に市街戦用の狙撃銃H&K PSGを手にした吸血鬼飛兵が続き、彼らはミザリア領の中核都市ウォーレン目指して侵攻を始めた。
紛争で主力を城塞都市へ派兵していた領主ゲオルグ・ベイグラッドに抵抗の術は無く、半刻足らずで都市中心部の広場一帯が無血制圧される事となる。
物騒な雰囲気を感じた周辺の領民達が建物に身を隠して事態を窺う中、状況を一望できるディルト商会本店三階の私室から、商会主の娘であるリディアも広場を見下ろす。
「ふふっ、見慣れた場所に魔族兵が居並ぶ光景は新鮮ですね」
現状で起きている事が全て予定調和であると、つい先ほど魔人族の婚約者から聞いたリディアはどこか楽しそうに微笑み、偶々焼き上げていたクッキーを勧めた。
「頂こう…… 甘いな」
「うぅ、お口に合いませんか、グレイド様?」
“いや、そうでもない” と言葉が返ってくるものの、朴訥な彼の反応は分かり難い。
ただ、今回の様にディルト家の者達を気遣って商会に足を運ぶなど、心根に持つ優しさをリディアは折に触れて感じており、自然と頬が緩んでしまう。
(惚れた弱みでしょうか…… いけませんね、これは)
やや表情を引き締めて、手作りの焼き菓子を黙々と食む秀麗な魔人から窓の外に視線を移せば、複数人の護衛を引き連れた領主が大通りを進んで中央広場に入る様子が見えた。
「どんな契約を取り交わされるのでしょうか?」
「それは言えないが、すぐに領主殿より領民に知らされるだろう」
レモングラスの乾燥ハーブを使ったお茶を飲み干し、白磁のカップをテーブルへ降ろしたグレイドも彼女と同じく広場を窺う。
二人の眺める先では、悠然と構えた魔王と意図的に難しい表情をしたミザリア領主が向き合っていた。
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