87 / 187
魔王、責任転嫁される
しおりを挟む
両手を上にあげつつ、鋭い視線を飛ばす赤髪の大男ウェルガがスカーレットの頭部の角を凝視しながら言葉を飛ばす。
「イルゼ、魔族と通じている事がバレてみろッ! お前や領民もただでは済まないぞッ!!」
「かと言って、シュタルティア王国の一領地として、魔王殿の手勢と戦ってもただでは済みません…… ですから、都市エベルを含むノースグランツ領は魔王殿に占領してもらいます」
「イルゼ殿、俺は構わんが…… それでいいのか?」
「ええ、私は魔王殿の捕虜ですからね」
その時、黙考していたスカーレットが呟く。
「…… イチローおじ様、これは要するに責任転嫁ですわ」
ふむ、冷静に考えればその通りかもしれない。
都市エベルとノースグランツ領としては善戦するもむなしく、占領されたという事にしておけば事後に釈明ができる。直接的にノースグランツ領兵を動かして、王国軍と敵対しない限りはな……
問題は目の前の大男の父親がいる隣接するミザリア領の動向か…… 俺はなおも喚き続けているウェルガに近付いてその額に手を伸ばす。
「な、何をッ!?」
「少し眠れ…… 安らぎの中に安堵と共に落ちろ、スリープ」
どさりとその大柄な体が応接室の床に倒れる。
取りあえず、煩かったので眠らせておいた。
さて、今のところはこの応接室を占拠しただけなので、この小城全体を制圧しなければならない。
「イルゼ殿、此処の転移を阻害している魔導装置の場所は?」
「ミツキ達を呼び込んで、さっさと終わらせてしまいましょう」
「何か複雑なものがありますね…… 長年暮らした居城を陥落させるというのは」
魔導装置は最上階に設置されており、結局、そこまで行くのに出くわしたミザリア領兵を片っ端からスリープで眠らせていく。
イルゼ嬢の頼みもあって、捕らえる方向になったからだ。一応、この都市にも犯罪者等の収容施設は新旧市街の両方にあるらしいので、其処か兵舎に拘束するとの事だ……
「どうですか、おじ様?」
「多少、形式は違うが本質的には同じ原理で動いているから何とでもなる」
既に魔導装置の制御権が書き換えられており、イルゼ嬢に制御できなかったので、装置に手を触れて強引に俺を登録する。
「これでッ、此方と彼方を繋げ、転移方陣ッ」
室内に黒いゲートが開き、ダンジョン地下49階層の訓練場に待機させていたミツキ麾下の鬼人兵十数名が素早く室内に展開した。
「…… 首尾はよろしいようですね、我が君」
「後は任せる」
「御意に…… 四半刻で制圧してみせましょう」
そう宣言しながら、軽く首を垂れる鬼姫に対してイルゼ嬢が念を押す。
「ミツキ殿、ミザリア領兵達は捕縛していただきたいのです。彼らは領主の命に従っているに過ぎませんので……」
「分かっておりますよ。ですからヴィレダ殿の人狼兵ではなく、我ら鬼人兵なのでしょう?」
黒髪の着物美人は薄く微笑み、その後は隠密行動に長けた鬼人兵により、きっかり四半刻で都市エベルの城塞は制圧されるのだった……
「イルゼ、魔族と通じている事がバレてみろッ! お前や領民もただでは済まないぞッ!!」
「かと言って、シュタルティア王国の一領地として、魔王殿の手勢と戦ってもただでは済みません…… ですから、都市エベルを含むノースグランツ領は魔王殿に占領してもらいます」
「イルゼ殿、俺は構わんが…… それでいいのか?」
「ええ、私は魔王殿の捕虜ですからね」
その時、黙考していたスカーレットが呟く。
「…… イチローおじ様、これは要するに責任転嫁ですわ」
ふむ、冷静に考えればその通りかもしれない。
都市エベルとノースグランツ領としては善戦するもむなしく、占領されたという事にしておけば事後に釈明ができる。直接的にノースグランツ領兵を動かして、王国軍と敵対しない限りはな……
問題は目の前の大男の父親がいる隣接するミザリア領の動向か…… 俺はなおも喚き続けているウェルガに近付いてその額に手を伸ばす。
「な、何をッ!?」
「少し眠れ…… 安らぎの中に安堵と共に落ちろ、スリープ」
どさりとその大柄な体が応接室の床に倒れる。
取りあえず、煩かったので眠らせておいた。
さて、今のところはこの応接室を占拠しただけなので、この小城全体を制圧しなければならない。
「イルゼ殿、此処の転移を阻害している魔導装置の場所は?」
「ミツキ達を呼び込んで、さっさと終わらせてしまいましょう」
「何か複雑なものがありますね…… 長年暮らした居城を陥落させるというのは」
魔導装置は最上階に設置されており、結局、そこまで行くのに出くわしたミザリア領兵を片っ端からスリープで眠らせていく。
イルゼ嬢の頼みもあって、捕らえる方向になったからだ。一応、この都市にも犯罪者等の収容施設は新旧市街の両方にあるらしいので、其処か兵舎に拘束するとの事だ……
「どうですか、おじ様?」
「多少、形式は違うが本質的には同じ原理で動いているから何とでもなる」
既に魔導装置の制御権が書き換えられており、イルゼ嬢に制御できなかったので、装置に手を触れて強引に俺を登録する。
「これでッ、此方と彼方を繋げ、転移方陣ッ」
室内に黒いゲートが開き、ダンジョン地下49階層の訓練場に待機させていたミツキ麾下の鬼人兵十数名が素早く室内に展開した。
「…… 首尾はよろしいようですね、我が君」
「後は任せる」
「御意に…… 四半刻で制圧してみせましょう」
そう宣言しながら、軽く首を垂れる鬼姫に対してイルゼ嬢が念を押す。
「ミツキ殿、ミザリア領兵達は捕縛していただきたいのです。彼らは領主の命に従っているに過ぎませんので……」
「分かっておりますよ。ですからヴィレダ殿の人狼兵ではなく、我ら鬼人兵なのでしょう?」
黒髪の着物美人は薄く微笑み、その後は隠密行動に長けた鬼人兵により、きっかり四半刻で都市エベルの城塞は制圧されるのだった……
0
お気に入りに追加
579
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
❤️レムールアーナ人の遺産❤️
apusuking
SF
アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。
神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。
時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。
レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。
宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。
3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる