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魔王、騎士令嬢を挑発する
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はて、何故、私はこんなところにいるのでしょうか?
朝、いつもの時間に起床して、マリの作ってくれたスクランブルエッグとパンに香草のスープを美味しくいただいて、食後の珈琲を飲もうとしていたはずですのに……
その時の情景を思い出します。
「イルゼ、出陣だよッ!地下13階層から14階層までを攻略に行くんだ!」
「…… そうですか、気を付けてくださいね、ヴィレダ殿」
魔族の地上への侵攻が進めば、近隣の町や都市に被害が出ます…… けれども、訓練場での模擬戦を通して、仲良くなった天狼の友人を気遣う気持ちを抑える事もできません。
きっと、私は複雑な表情をしているのでしょうね……
「違うよ、イルゼッ!一緒にいくんだよ。イチローがあたしの隊にイルゼの支援を命じたんだ」
「は!?魔王殿が?」
「ん、“今日の主役はイルゼだ”ってね♪」
一体何をやらされるのでしょうか…… 不安でたまりません。
其れなりに時間を共にした印象では、あまり酷い事ができない御仁だと思いますけれど…… 私が傷ついている時はいつもヒーリングの魔法をかけてくれますから。
それに、時折してくる頭ポフポフも不快ではありません、淑女に対する仕草ではありませんが……
色々と思うところはありましたが、私は彼らの進軍に随伴する事になったのです。
そして、現在、私の視線の先には体長6m程の巨獣ベヒモスがいます。
ベヒモスは強力な魔物で、“金”の冒険者を含むパーティでの討伐がギルドの推奨とされています。もし、単独で戦う場合は“白銀”相当の実力が必要です。
“白銀”の冒険者、それは冒険者の中で最高位の“神鉄”に次ぐ第2位の地位にある者達。そこまで行けば、憧れの英雄に片足を踏み込んでいる領域の人物と目されます。
「どうだ、倒せそうか?」
「……簡単に言ってくださいますね、魔王殿」
「まぁ、そう気負うな。此処にいるスカーレットやヴィレダ、ミツキにダロスも単独で討伐できる相手だ……危なくなったら皆で助けに入る手筈になっている」
と、言う事は…… 危なくなるまで魔族の主戦力の方々は誰も加勢してくれないと?
つまり、ベヒモスの単独討伐ですわね。
「はぁ…… 魔王殿、貴方は時折、突拍子の無い事をなさいますね」
「怖気づいたか?イルゼ嬢」
彼は少し意地悪そうな顔で微笑みかけてきます。
ちょっと、イラっとしました。
「いえ、見事討ち取って見せますわ」
でも、考えようによっては贅沢な状況かもしれません……
完全な安全などは在り得ないとしても、強者の庇護の元で強い魔物と戦う事ができるわけですから……
先日、ラーガット殿から名刺がわりに頂いた彼の作品である日本刀“みすりる”を鞘から引き抜き、姿勢を低くしたやや変則気味の霞構えを取ります。
「お、お嬢様、本気ですか?」
「…… マリ、生まれながらの英雄など私は憧れません、英雄とは生き足掻いた末に成るものなのですよ」
さぁ、頑張るとしましょうか。
朝、いつもの時間に起床して、マリの作ってくれたスクランブルエッグとパンに香草のスープを美味しくいただいて、食後の珈琲を飲もうとしていたはずですのに……
その時の情景を思い出します。
「イルゼ、出陣だよッ!地下13階層から14階層までを攻略に行くんだ!」
「…… そうですか、気を付けてくださいね、ヴィレダ殿」
魔族の地上への侵攻が進めば、近隣の町や都市に被害が出ます…… けれども、訓練場での模擬戦を通して、仲良くなった天狼の友人を気遣う気持ちを抑える事もできません。
きっと、私は複雑な表情をしているのでしょうね……
「違うよ、イルゼッ!一緒にいくんだよ。イチローがあたしの隊にイルゼの支援を命じたんだ」
「は!?魔王殿が?」
「ん、“今日の主役はイルゼだ”ってね♪」
一体何をやらされるのでしょうか…… 不安でたまりません。
其れなりに時間を共にした印象では、あまり酷い事ができない御仁だと思いますけれど…… 私が傷ついている時はいつもヒーリングの魔法をかけてくれますから。
それに、時折してくる頭ポフポフも不快ではありません、淑女に対する仕草ではありませんが……
色々と思うところはありましたが、私は彼らの進軍に随伴する事になったのです。
そして、現在、私の視線の先には体長6m程の巨獣ベヒモスがいます。
ベヒモスは強力な魔物で、“金”の冒険者を含むパーティでの討伐がギルドの推奨とされています。もし、単独で戦う場合は“白銀”相当の実力が必要です。
“白銀”の冒険者、それは冒険者の中で最高位の“神鉄”に次ぐ第2位の地位にある者達。そこまで行けば、憧れの英雄に片足を踏み込んでいる領域の人物と目されます。
「どうだ、倒せそうか?」
「……簡単に言ってくださいますね、魔王殿」
「まぁ、そう気負うな。此処にいるスカーレットやヴィレダ、ミツキにダロスも単独で討伐できる相手だ……危なくなったら皆で助けに入る手筈になっている」
と、言う事は…… 危なくなるまで魔族の主戦力の方々は誰も加勢してくれないと?
つまり、ベヒモスの単独討伐ですわね。
「はぁ…… 魔王殿、貴方は時折、突拍子の無い事をなさいますね」
「怖気づいたか?イルゼ嬢」
彼は少し意地悪そうな顔で微笑みかけてきます。
ちょっと、イラっとしました。
「いえ、見事討ち取って見せますわ」
でも、考えようによっては贅沢な状況かもしれません……
完全な安全などは在り得ないとしても、強者の庇護の元で強い魔物と戦う事ができるわけですから……
先日、ラーガット殿から名刺がわりに頂いた彼の作品である日本刀“みすりる”を鞘から引き抜き、姿勢を低くしたやや変則気味の霞構えを取ります。
「お、お嬢様、本気ですか?」
「…… マリ、生まれながらの英雄など私は憧れません、英雄とは生き足掻いた末に成るものなのですよ」
さぁ、頑張るとしましょうか。
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