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35 ひよっ子、実感する★

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「レックス様、お願いしますっ。やめないで……」

 ヤンはレックスの胸に縋り付いた。このまま先に進めなくて嫌われてしまったら、何も持っていない自分は本当に路頭に迷う。それは嫌だ。

 レックスはヤンを抱き留めると、頭を撫でてくれた。酷く安心して泣きそうになるくらい好きなのに、セックスすらできないなんて。

「ヤン。今やめても、俺はお前を嫌わないから安心しろ」
「嫌だっ。……僕はしたい……!」

 ヤンは膝立ちになり、身体を伸ばした。レックスの唇に噛み付く勢いで顔を近付けたけれど、彼に両頬を押さえられてしまう。

「どうしてですかっ? 僕がいいって言ってるのに!」
「ヤン、……落ち着け」

 両頬を掴んだ大きな手は、頬や耳をくすぐってきた。身を捩って逃げようとするけれど、できずにぐい、と引かれる。

 柔らかい唇がヤンの唇に当たった。そのままぬるりと舌で舐められ、ヤンはすぐにそれにかぶりつく。

「ふ……っ」

 鼻に抜けた声が上がった。舌を絡め、唾液を飲み込み、濡れた唇が擦れる刺激に腰の奥が痺れる。しばしその深いキスに夢中になり、ヤンは頭がクラクラした。

「僕はこれしか……、これだけしかないんです……っ」
「そんなことはない。剣だって強い。俺は認めていると言ったじゃないか」

 レックスの声が上擦っていて、ヤンはうなじが焼けるように熱くなる。強烈な欲情がヤンの中に激しく噴き出し、再びレックスの唇に噛み付いた。

 欲しい。レックスの全てが欲しい。そう思いながら、レックスのシャツのボタンを外す。二人の間に空気すら挟みたくない。肌を直接合わせて、力尽きるまで貪りたい。

 レックスはヤンの口付けを受け入れながら、観念したのか、再びヤンの頬と耳をくすぐり始める。

「まったく……俺はお前に負けっぱなしだ……」

 唇が離れた時に、レックスはそう呟いた。意外に思って聞き返すと、言っただろう、と額を合わせてくる。

「絶対気に入ってしまうから、ヤンを俺から外してくれと、ハリア様にお願いしていた」

 お前がかわいい。傷付けたくない、と彼は唇を啄んでくる。その優しさに、やっぱり好きだなぁ、と目頭が熱くなった。

「……ダメだと思ったらすぐに言ってくれ」

 もう俺からはやめないから。そう言われ、ばくん、と心臓が跳ねる。すぐに啄みにきた唇を受け入れ、ヤンは意識が溶けそうになった。

「レックス様……」

 息継ぎの吐息が熱い。彼を見ると、射抜くように強いレックスの視線とぶつかる。

「あ……」

 ふるり、と背中が震えた。背中を撫でられ、その逞しい手が下におりていく。尻の丸みを撫でられたかと思いきや、その肉を強く掴まれた。

「ぁん……っ」

 強い刺激に身体を震わせ声を上げると、自分でもびっくりするくらいの甘い声が出る。こんな声が出るなんて信じられない、とヤンは口を手で塞いだ。

 しかしレックスは、そこを強く揉みしだく。割れ目を開くように掴まれたり、柔らかさを確かめるように揉んだりされて、その度にその奥にある秘部に指が届きそうでヤンは悶えた。

「れ、レックス様……っ」

 彼から与えられる刺激は、絶えず波のように打ち寄せて性感を高めていく。ゾクゾクが止まらないのは初めての経験で、こんなの知らない、と首を振った。

「かわいいな。手に収まるほど小さいのに、柔らかい……」
「……っん!」

 ビクビク、とヤンは背中を反らす。まさかレックスは尻が好きなのかと思ったけれど、聞くどころじゃない。

「――あ……っ!」

 いつの間にか前に回っていた手が、服の上から胸を撫でてきた。しかもピンポイントにヤンが感じるところで、探り当てられるほどそこが固くなっていることに気が付く。

「んっ! んぅ……っ」

 腰が勝手にうねり、ヤンはレックスの首にしがみついた。寝間着の上から爪先でカリカリと引っ掻かれ、大袈裟なくらいに身体が反応する。

「レックス様ぁ……っ」

 これでは、自分は彼を触るどころではなくなる。思考が霞んで落ちそうで、レックスに思い切りしがみつくと、彼の肌も熱かった。それがまた呼び水のように性感が高まっていく。

「……っ!?」

 するとレックスはヤンの下穿きの中に手を入れてきた。ゴソゴソと中で手が動くものの、触りにくかったのか、彼は下穿きを膝まで下げてしまう。その布が肌に擦れる刺激にすら感じてしまい、ヤンは小さく悲鳴を上げてしまった。

 完全に勃ちあがったヤンを覗き見たレックスは、かわいい、と上擦った声で呟いてそこに触れる。ヤンの小ぶりな切っ先は、レックスの大きな手ですっぽりと包まれてしまい、その温かさと刺激に腰が揺れた。

「あっ、……っ!」
「……痛くはないか?」

 手つきは優しいものの、強い刺激に腰が引けていると、レックスは空いた手で尻を撫でてくる。

「だっ、だめぇ……っ」

 どうしよう、本当に頭がクラクラして力が入らなくなってきた。ヤンは鳴き声のような嬌声を上げ、一気にせり上ってきた絶頂への道を駆け上がる。

 ぎゅう、と力いっぱいレックスにしがみついた。途端に脳を直接刺激されたような、強い快感がヤンを支配する。

「うっ! ――うぁ……ッ!」

 頭が真っ白になり、放出を続ける身体に快感がじわりと広がった。それに身震いすると、「かわいい」と呟く声が聞こえる。

 レックスにとっては、何でもかわいいになるのか、と少し呆れるものの、照れている自分が恥ずかしくなった。村にいた頃は毎日のように聞いていたのに、レックスから言われると、なぜかものすごい破壊力を持つ。それはやはり、特別な存在のレックスに言われる、ということに理由があるのかな、なんてふわふわする頭で考えていた。

「あー……、かわいい……すごくかわいい……」

 しかしそんな声がして、ヤンはしがみついていた身体を離す。切なげだが感動したような声は、今もいつもの表情をしているレックスから発せられたのだろうか。思わずじっと見つめてしまう。

「……何だ?」
「いえっ、その……」

 表情と言葉が一致していないことに、ヤンは不思議な感覚に陥った。とりあえず、出したものを拭かないと、と視線を落とすと、その手は素早くヤンの後ろに回る。

「やっ、あ……っ、あン……っ」

 たった今、ヤンが出したものを纏った指は、ヤンの後ろの狭間に入ってきた。行為中に自分が先にいかされるなんて初めてで、そこでやっと、レックスから大切に扱われていることが実感できる。

 仕事ではなく、想い合うもの同士がする行為で、村で受けた扱いは、ヤンのことを一切考えていないものだったのだ、と。

 やっぱり、レックスは自分を一人前の成鳥として見てくれている。前にもそう思ったはずなのに、どうしてその感覚がなくなっていたのだろう。

「何も考えず、今はただ身をゆだねてくれ。かわいいお前を、とことんかわいがりたいんだ」

 背中が震えた。それはレックスの言葉のせいなのか、後ろに侵入してきた指のせいなのか。どちらにせよ、身体も心も奥まで入ってきたレックスを、ヤンは泣きながら受け入れた。
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