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3 紘一視点
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その十数分後、再び少年の携帯電話が鳴り、迎えに来たという二人を見て、紘一は唖然とする。
「ご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした」
部屋の中へ招き入れた二人は、少年とはまた違う種類の美形だったからだ。
一人は物腰と声からして、先程電話を掛けてきた男だ。金髪の長い髪が印象的で、その髪を後ろで一つに括り、銀色のフレーム眼鏡を掛けている。色が白い所やまつ毛が長い所は少年にそっくりで、女性的な柔らかさがあるけども、骨格や紘一と変わらない身長を見て、やはり男性なんだな、と思う。
一方もう一人は、190センチはあるかと思う長身の男で、黒髪に凛々しい、意志の強そうな目をしていた。シャツから覗く腕は、鍛えているのか、筋肉がしっかり付いている。しかし、金髪の男が話しかけてもうなずくだけだ。どうやら普段から無口らしい。
中性的な美形と、柔らかいイメージの美形と、剛のイメージの美形。それが集まっているのを惚けて見ていると、なんだか違う世界に来たようである。
「すみません、服までお借りしてしまって」
金髪の男に話しかけられ、慌てて我に返ると、少年は黒髪の男に抱きかかえられていた。
「迷惑でなければ、洗ってお返ししますので」
「……ああ、はい」
腕の中で安心したように眠る少年を見て、何故か気に入らなかった。その理由を考える間もなく、金髪の男は話しかけてくる。
「私は木下竜之介と申します。今後彼に関わったことで何かありましたらこちらへ」
言葉の意味を半分も理解しないまま、男が差し出した名刺を受け取る。そこには竜之介の名前と、住所、電話番号が書かれていた。
反射的に、少年の名前を聞き出さないと、と顔を上げた。しかし、竜之介の金の瞳とぶつかって、一瞬怯む。
「あなたのお名前、伺ってもよろしいですか?」
竜之介がにっこり微笑んだ。こっちは聞きたいことがあるのに、そうできない何かが働いている。紘一は直感でそう思う。そして、自分の意思に反して、竜之介の言うことを聞いてしまうのだ。
「柳、紘一です……」
このトリックは何だと思いながらも答えると、竜之介は後ろにいた黒髪の男に目線を配る。
「では柳さん、次にお会いするときはその名刺を介してではなく、風の導きであることを祈ります。お邪魔しました」
意味深なことを言い残し、竜之介たちは部屋から出て行く。見送りをするべきなのに、体が少しも動かせなかった。
しばらくしてへなへなとその場に座り込み、自分がずいぶん緊張していたことに気付く。そして、柔らかかった少年の手の感触を思い出し、また会えると良いな、と呟いた。
「ご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした」
部屋の中へ招き入れた二人は、少年とはまた違う種類の美形だったからだ。
一人は物腰と声からして、先程電話を掛けてきた男だ。金髪の長い髪が印象的で、その髪を後ろで一つに括り、銀色のフレーム眼鏡を掛けている。色が白い所やまつ毛が長い所は少年にそっくりで、女性的な柔らかさがあるけども、骨格や紘一と変わらない身長を見て、やはり男性なんだな、と思う。
一方もう一人は、190センチはあるかと思う長身の男で、黒髪に凛々しい、意志の強そうな目をしていた。シャツから覗く腕は、鍛えているのか、筋肉がしっかり付いている。しかし、金髪の男が話しかけてもうなずくだけだ。どうやら普段から無口らしい。
中性的な美形と、柔らかいイメージの美形と、剛のイメージの美形。それが集まっているのを惚けて見ていると、なんだか違う世界に来たようである。
「すみません、服までお借りしてしまって」
金髪の男に話しかけられ、慌てて我に返ると、少年は黒髪の男に抱きかかえられていた。
「迷惑でなければ、洗ってお返ししますので」
「……ああ、はい」
腕の中で安心したように眠る少年を見て、何故か気に入らなかった。その理由を考える間もなく、金髪の男は話しかけてくる。
「私は木下竜之介と申します。今後彼に関わったことで何かありましたらこちらへ」
言葉の意味を半分も理解しないまま、男が差し出した名刺を受け取る。そこには竜之介の名前と、住所、電話番号が書かれていた。
反射的に、少年の名前を聞き出さないと、と顔を上げた。しかし、竜之介の金の瞳とぶつかって、一瞬怯む。
「あなたのお名前、伺ってもよろしいですか?」
竜之介がにっこり微笑んだ。こっちは聞きたいことがあるのに、そうできない何かが働いている。紘一は直感でそう思う。そして、自分の意思に反して、竜之介の言うことを聞いてしまうのだ。
「柳、紘一です……」
このトリックは何だと思いながらも答えると、竜之介は後ろにいた黒髪の男に目線を配る。
「では柳さん、次にお会いするときはその名刺を介してではなく、風の導きであることを祈ります。お邪魔しました」
意味深なことを言い残し、竜之介たちは部屋から出て行く。見送りをするべきなのに、体が少しも動かせなかった。
しばらくしてへなへなとその場に座り込み、自分がずいぶん緊張していたことに気付く。そして、柔らかかった少年の手の感触を思い出し、また会えると良いな、と呟いた。
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