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40 和馬視点
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和馬は目が覚めると、陽光がカーテンの隙間から差し、部屋の中は明るかった。
「……」
口の中が乾いている。それに、心と体の中は力で満ちているのに、腰から下が強張っていて奇妙な感じだ。
隣で眠る紘一を見る。女性に好感を持たれそうな優しい瞳は、今は閉じられているが、和馬はこの人の目が好きだ、と思った。
しかし、すぐに嫌な予感が胸に落ちる。
彼の顔色が悪い。もしや目も開けられない程体調が悪いのか。だとしたら自分のせいだ、と和馬は紘一の首筋に指をあてる。
(……よかった、生きてる)
しかしそれは杞憂だったようだ、脈はしっかりしていて、すぐに紘一は目を開ける。
和馬は「おはようございます」と彼の髪を梳いた。寝ぼけているのか不明瞭な声で「おはよう」と言った紘一は、そのまま動かない。
「……腹減った」
ぼんやり呟いた彼の言葉に和馬は唖然とした。そしてあまりにも緊張感のない声と言葉に、笑いが込み上げてくる。
「竜之介に頼んで、料理をたくさん作ってもらいましょう。起き上れますか?」
笑いながらそう伝えると、紘一は起き上り、和馬に抱きついてくる。お互い裸のままなので、ともすれば昨夜の熱が再燃しそうだ。
しかし、彼は頭にキスをくれただけで離れた。さすがにこれ以上この部屋に居続けることはマズイと判断したらしい。和馬も正直残念だと思ったが、紘一の腹を満たすには、ここでは食料が足りない。
二人はシャワーを浴び、着替えて部屋の出入り口に立つ。和馬は自分から紘一を引き寄せ、甘い味がするキスをした。彼の若草の風と、その甘みが混ざると和菓子でも食べているような感覚がする。
「抹茶とあんこだ……」
「……そう? 俺は花とハチミツ」
お互いの風と気の味を口にすると、どちらともなく笑い出す。体が触れ合った時、二人の風と気が自然に混ざり合うのが分かり、『契』が成功していることを示した。
「柳さん、これからもよろしくお願いしますね」
竜之介たちに対しての罪悪感がないわけではない。その辺りの心の整理はまだつかないけれど、ここまで来てしまった以上、あらゆるものから紘一を守ろうと誓う。
微笑みかけると、紘一は眩しいものを見るかのように、目を細める。
「ああ、こちらこそ」
優しい手が頭を撫でてくる。そのまま甘えたい気もするけれど、それはまたの機会でいい。この翼はもう、彼のものなのだから。
「さ、出ましょう」
和馬はドアを開けた。
「……」
口の中が乾いている。それに、心と体の中は力で満ちているのに、腰から下が強張っていて奇妙な感じだ。
隣で眠る紘一を見る。女性に好感を持たれそうな優しい瞳は、今は閉じられているが、和馬はこの人の目が好きだ、と思った。
しかし、すぐに嫌な予感が胸に落ちる。
彼の顔色が悪い。もしや目も開けられない程体調が悪いのか。だとしたら自分のせいだ、と和馬は紘一の首筋に指をあてる。
(……よかった、生きてる)
しかしそれは杞憂だったようだ、脈はしっかりしていて、すぐに紘一は目を開ける。
和馬は「おはようございます」と彼の髪を梳いた。寝ぼけているのか不明瞭な声で「おはよう」と言った紘一は、そのまま動かない。
「……腹減った」
ぼんやり呟いた彼の言葉に和馬は唖然とした。そしてあまりにも緊張感のない声と言葉に、笑いが込み上げてくる。
「竜之介に頼んで、料理をたくさん作ってもらいましょう。起き上れますか?」
笑いながらそう伝えると、紘一は起き上り、和馬に抱きついてくる。お互い裸のままなので、ともすれば昨夜の熱が再燃しそうだ。
しかし、彼は頭にキスをくれただけで離れた。さすがにこれ以上この部屋に居続けることはマズイと判断したらしい。和馬も正直残念だと思ったが、紘一の腹を満たすには、ここでは食料が足りない。
二人はシャワーを浴び、着替えて部屋の出入り口に立つ。和馬は自分から紘一を引き寄せ、甘い味がするキスをした。彼の若草の風と、その甘みが混ざると和菓子でも食べているような感覚がする。
「抹茶とあんこだ……」
「……そう? 俺は花とハチミツ」
お互いの風と気の味を口にすると、どちらともなく笑い出す。体が触れ合った時、二人の風と気が自然に混ざり合うのが分かり、『契』が成功していることを示した。
「柳さん、これからもよろしくお願いしますね」
竜之介たちに対しての罪悪感がないわけではない。その辺りの心の整理はまだつかないけれど、ここまで来てしまった以上、あらゆるものから紘一を守ろうと誓う。
微笑みかけると、紘一は眩しいものを見るかのように、目を細める。
「ああ、こちらこそ」
優しい手が頭を撫でてくる。そのまま甘えたい気もするけれど、それはまたの機会でいい。この翼はもう、彼のものなのだから。
「さ、出ましょう」
和馬はドアを開けた。
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