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家に帰って、水春がレンタカーを返して戻ってくると、早くも日が暮れる時間になっていた。
久しぶりに遠出をしたので、晶はリビングのソファーに座り背もたれに身体を預けた。
「……疲れましたか?」
水春がコーヒーを淹れてくれる。マグを受け取ると、コーヒーの香りに身体の力が抜けた。
「慣れない事したからな」
水春もマグを持って隣に座った。
水春はテレビの電源を入れると、録画した番組を再生する。自分もだけど、真洋や水春が出ている番組のチェックだ。
それに気付いた水春は、テレビの電源を切った。
「晶さん、今日は仕事しない約束でしょう?」
「……悪ぃ、癖で……」
「…………」
水春はソファーの前のテーブルにマグを置くと、晶のマグも奪ってそこに置く。
「晶さん、今日は全然楽しそうじゃなかったですね」
そう言いながら、水春は晶が逃げられない位置に迫ってきた。
「すぐに仕事モードに入ろうとするし、オレ、結構頑張ってたんですけど」
「…………悪ぃ」
「仕事モードに入るのも、ガードが固いのも、癖なんだって分かったのでそれはいいです。なので、別方向からアプローチする事にしました」
別方向って何だよ、と言おうとした晶の唇が塞がれる。ちゅ、と音を立てて水春の唇が吸い付いてきたのだ。
別方向ってそういう事かと、晶はそれを受け入れた。水春は何度か軽くキスをすると、晶の正面に回りながら、次第にキスを深くしていく。
「ん……」
呼吸のついでに晶が思わず声を漏らすと、水春は微笑んだ。その顔に、晶の顔が熱くなる。
思わず視線を逸らしたら、頬を撫でられ、耳をくすぐられる。肩を竦めると額にキスをされた。
水春はそのキスを、頬に、耳に、首筋にと落としてくる。ゾワゾワと身体が震えて思わず声が出そうになり、唇をぎゅっと結ぶ。
「うわ……晶さん、かなり敏感ですね……可愛い」
「……っ、ん!」
首筋を舐められ思わず晶の身体が跳ねる。
(このまま、身をゆだねれば、少しは前に進めるのか?)
そう思って、晶は水春の顔を両手で包み、自らキスをする。
水春は晶の行動に驚いたようだったけれど、すぐに順応し、先程よりも深いキスをくれる。
「ふ……」
水春の舌が晶の唇を舐めてくる。晶も同じようにすると、どちらからともなく舌が絡み合う。
(やば……もうイキたい)
まだキスしかしていないのに、と晶は戸惑った。水春が自分に触れてくれるというだけで、十分に興奮してしまったようだ。
そうしている間にも、下半身の熱はどんどん重くなる。いっそ自分で触ってしまおうかと、手を伸ばした時だった。
『晶ちゃんは、そんな子じゃないわよね?』
「……っ!!」
晶は反射的に水春を引き離した。
「何でこのタイミングで……!」
晶は叫ぶと口元を押さえる。胃がおかしな動きをしている、気持ち悪い。
水春を押しのけてトイレへ駆け込む。何も出なかったものの、体力を消耗してその場にへたりこんだ。
「晶さん……」
思うようにいかない自分の身体に、嫌気がさす。
「…………嫌でしたか?」
「んな訳あるか、嫌だったらキスもしねーよ!」
水春の問いに、弾かれたように晶は叫んだ。そしたら、涙が溢れ出てくる。
「何なんだよ……何でずっとババアが出しゃばってくるんだ……」
「晶さん……」
水春が近くに来て、晶を抱きしめた。
「止めろ、俺今気が立ってるから……」
「お母さんが出てくる? 大丈夫、今はオレと晶さんの二人しかいません」
晶は、ああそうか、と泣きながら思う。過去に実際に言われた言葉ではあるけれど、今は物理的に離れている。
『今』言われている訳じゃない。何より、母親を自分の中に住まわせているのは晶自身だ。
「水春…………水春、仕切り直ししたい。俺、お前とセックスしたい」
「……っ、晶さん……」
泣きながらストレートに晶は言うと、水春は戸惑ったようだった。ダメか? と水春を見ると、彼はぎゅうぎゅうと抱きしめる腕に力を入れた。
「んなわけないでしょう」
すると、晶は足を掬われて抱っこされた。
「ちょっと、これは恥ずかしすぎる……!」
「暴れないで。……俺の部屋で良いですか?」
そう言いながら足を進める水春。以前も抱っこはされたけど、あの時は余裕が無かった。だから程よく筋肉が付いてる肩とか胸とか、どうしても意識してしまう。
「うー……」
晶は顔を両手で隠した。いきなりこういう甘いシチュエーションには、耐えられない。
水春が笑う。
「晶さん、何やっても可愛いから、顔を隠しても無駄ですよ」
そう言って、部屋の前で降ろされた。水春がドアを開ける。
「さ、どうぞ」
晶は少し緊張しながら、部屋に入った。
久しぶりに遠出をしたので、晶はリビングのソファーに座り背もたれに身体を預けた。
「……疲れましたか?」
水春がコーヒーを淹れてくれる。マグを受け取ると、コーヒーの香りに身体の力が抜けた。
「慣れない事したからな」
水春もマグを持って隣に座った。
水春はテレビの電源を入れると、録画した番組を再生する。自分もだけど、真洋や水春が出ている番組のチェックだ。
それに気付いた水春は、テレビの電源を切った。
「晶さん、今日は仕事しない約束でしょう?」
「……悪ぃ、癖で……」
「…………」
水春はソファーの前のテーブルにマグを置くと、晶のマグも奪ってそこに置く。
「晶さん、今日は全然楽しそうじゃなかったですね」
そう言いながら、水春は晶が逃げられない位置に迫ってきた。
「すぐに仕事モードに入ろうとするし、オレ、結構頑張ってたんですけど」
「…………悪ぃ」
「仕事モードに入るのも、ガードが固いのも、癖なんだって分かったのでそれはいいです。なので、別方向からアプローチする事にしました」
別方向って何だよ、と言おうとした晶の唇が塞がれる。ちゅ、と音を立てて水春の唇が吸い付いてきたのだ。
別方向ってそういう事かと、晶はそれを受け入れた。水春は何度か軽くキスをすると、晶の正面に回りながら、次第にキスを深くしていく。
「ん……」
呼吸のついでに晶が思わず声を漏らすと、水春は微笑んだ。その顔に、晶の顔が熱くなる。
思わず視線を逸らしたら、頬を撫でられ、耳をくすぐられる。肩を竦めると額にキスをされた。
水春はそのキスを、頬に、耳に、首筋にと落としてくる。ゾワゾワと身体が震えて思わず声が出そうになり、唇をぎゅっと結ぶ。
「うわ……晶さん、かなり敏感ですね……可愛い」
「……っ、ん!」
首筋を舐められ思わず晶の身体が跳ねる。
(このまま、身をゆだねれば、少しは前に進めるのか?)
そう思って、晶は水春の顔を両手で包み、自らキスをする。
水春は晶の行動に驚いたようだったけれど、すぐに順応し、先程よりも深いキスをくれる。
「ふ……」
水春の舌が晶の唇を舐めてくる。晶も同じようにすると、どちらからともなく舌が絡み合う。
(やば……もうイキたい)
まだキスしかしていないのに、と晶は戸惑った。水春が自分に触れてくれるというだけで、十分に興奮してしまったようだ。
そうしている間にも、下半身の熱はどんどん重くなる。いっそ自分で触ってしまおうかと、手を伸ばした時だった。
『晶ちゃんは、そんな子じゃないわよね?』
「……っ!!」
晶は反射的に水春を引き離した。
「何でこのタイミングで……!」
晶は叫ぶと口元を押さえる。胃がおかしな動きをしている、気持ち悪い。
水春を押しのけてトイレへ駆け込む。何も出なかったものの、体力を消耗してその場にへたりこんだ。
「晶さん……」
思うようにいかない自分の身体に、嫌気がさす。
「…………嫌でしたか?」
「んな訳あるか、嫌だったらキスもしねーよ!」
水春の問いに、弾かれたように晶は叫んだ。そしたら、涙が溢れ出てくる。
「何なんだよ……何でずっとババアが出しゃばってくるんだ……」
「晶さん……」
水春が近くに来て、晶を抱きしめた。
「止めろ、俺今気が立ってるから……」
「お母さんが出てくる? 大丈夫、今はオレと晶さんの二人しかいません」
晶は、ああそうか、と泣きながら思う。過去に実際に言われた言葉ではあるけれど、今は物理的に離れている。
『今』言われている訳じゃない。何より、母親を自分の中に住まわせているのは晶自身だ。
「水春…………水春、仕切り直ししたい。俺、お前とセックスしたい」
「……っ、晶さん……」
泣きながらストレートに晶は言うと、水春は戸惑ったようだった。ダメか? と水春を見ると、彼はぎゅうぎゅうと抱きしめる腕に力を入れた。
「んなわけないでしょう」
すると、晶は足を掬われて抱っこされた。
「ちょっと、これは恥ずかしすぎる……!」
「暴れないで。……俺の部屋で良いですか?」
そう言いながら足を進める水春。以前も抱っこはされたけど、あの時は余裕が無かった。だから程よく筋肉が付いてる肩とか胸とか、どうしても意識してしまう。
「うー……」
晶は顔を両手で隠した。いきなりこういう甘いシチュエーションには、耐えられない。
水春が笑う。
「晶さん、何やっても可愛いから、顔を隠しても無駄ですよ」
そう言って、部屋の前で降ろされた。水春がドアを開ける。
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