20 / 43
20
しおりを挟む
次の日の昼、純一は早速二人に聞いてみた。
「どこまで許せるか、かぁ。確かにそうだけど、どうやって測るのかって考えたら難しいよね」
湊はうーん、と腕を組んで考える素振りをする。
すると、司が立ち上がって純一の前に立ち、両手を広げた。
「来い」
「は?」
どういうこと? と純一がたずねると、友情のハグから試してみるしかないだろ、と言われ、訳が分からないまま純一も立ち上がって司の腕に収まる。自分の腕はどこに回したら良いのか、分からないのでそのままぶらんと下げたままだ。
「純一~、もっと警戒心持ちなよ……」
後ろで湊の呆れた声がする。
司の身体は細く見えるけど、意外としっかりしていた。純一のおでこの辺りに司の顎が来て、頭に軽くキスをされる。
「ん? ちょっと、何してんだよ」
「何って、キス」
「いやそういう事じゃなくて」
純一は後悔した。司が突拍子もない事をするのは分かっていた筈なのに、どうしてほいほいハグされに行ったのか。
「嫌だったか?」
「いや……頭にチューとか、別に減るもんじゃないし……」
自分の貞操が危ぶまれている事に気付かず、純一は素直な感想を言う。
「じゃあ、これは?」
耳元で司の声がしたかと思ったら、耳たぶにキスされた。腰から背中へ何かが這い上がるような感覚があって、思わずキスされた耳を塞ぐ。
「え? なに?」
何が起きた、と戸惑う純一に、また後ろから「司、その辺にしときなって」と湊が止めに入る。
「どこまで許せるか、やるんだろ?」
聞く耳を持たない司は、純一の腰に回していた手を、尻を撫でながら前に持ってくる。
「……っ」
さすがに腰を引いた純一だったが、なにより驚きだったのは、そこが熱を帯びていたからだ。
「え? 何で……」
自分でも訳が分からず、思わず下半身を見ると制服のズボン越しでも分かるほど、純一の分身は硬くなっていた。思わず両手でそこを隠すと、司は離れた。
「湊」
司が湊を呼ぶ。後ろにいた湊が、純一を抱きしめた。
「もう……純一、俺は司みたいに自制心強くないよ?」
それを言うなら逆じゃないか? と純一は思う。いつもいつも、暴走して純一を困らせているのは司だからだ。
人の事、ムッツリなんて言えないかも、と湊は司がしたのと反対の耳に、キスをした。
「……っ、や、だから、何でこんな事になってんの?」
純一は困惑する。下半身は大変な事になってるし、二人してどうしてこんな風に触れてくるのだろう。
「んー? そりゃ、どこまで許せるかって純一が言うから」
湊の手が純一の手に重ねられる。純一の手ごと、純一の中心を握られて慌てた。
「ちょ、待って……それは無理っ」
「そうなの? じゃあ何でこんな風になってるの」
純一の目に涙が浮かぶ。一気にあれこれあり過ぎて、考えが追いつかない。
「知らないよっ」
ふるふると純一は頭を振った。どうしたら良いのか分からなくて、とりあえず手を離してくれと懇願する。
「手、離していいの? コレどうすんの?」
湊の声が優しく誘惑してくる。手も微妙に動かされ、敏感に刺激を拾った純一は身体を震わせた。
『他人に触られるのって、結構気持ちいいしな』
唐突に哲朗の言葉が頭に浮かび、いっそこのまま身を任せたら良いのだろうか、とそんな考えが浮かぶ。
(いや、ダメだ)
「湊、司……俺、こんな形で流されるのは嫌だ」
ここまでされて嫌ではないなら、その先もきっといけると思う。けれど、それはやっぱり好きな人としたい。
湊は腕を離すと、深いため息をついた。珍しく乱暴に頭をガシガシかくと、頭を冷やしてくる、と教室の方へ歩いていった。
純一はその場にしゃがみこむと、大きく息を吐く。
「純一」
呼ばれて見ると、司は腰を下ろして目線を合わせた。
そこで初めて、司が意外と顔立ちがハッキリしている事に気付く。長いまつ毛が付いた瞳は、いつものように表情が読めない目をしている。
「大丈夫か?」
「……お前が言うなよ……」
純一はうなだれた。熱は引いてきているから良いものの、原因になった人に言われたくない。
「湊、大丈夫かな?」
何だかイライラしていたように見えた湊。彼の心の中で、何があったのだろう?
「さあな。大方後に引けなくなったんだろ」
間近に純一を見る司は至って真面目だ。純一はまたため息をつく。
「俺、彼女が欲しいのに……」
「…………迷惑か?」
「……っ」
また純一はハッとして司を見る。いつものように、彼はまっすぐ純一を見ているだけだ。
「友達じゃダメなのか?」
司はああ、と表情を変えず頷いた。
「純一がハッキリ断ってくれなければ、遅かれ早かれ、今みたいな事がまた起こるだろう」
俺はいつまでも待つが、湊はどうだろうな、と司は立ち上がった。
予鈴が鳴る。教室に戻らないと、と純一も立ち上がった。
その日、湊は教室に戻って来なかった。
「どこまで許せるか、かぁ。確かにそうだけど、どうやって測るのかって考えたら難しいよね」
湊はうーん、と腕を組んで考える素振りをする。
すると、司が立ち上がって純一の前に立ち、両手を広げた。
「来い」
「は?」
どういうこと? と純一がたずねると、友情のハグから試してみるしかないだろ、と言われ、訳が分からないまま純一も立ち上がって司の腕に収まる。自分の腕はどこに回したら良いのか、分からないのでそのままぶらんと下げたままだ。
「純一~、もっと警戒心持ちなよ……」
後ろで湊の呆れた声がする。
司の身体は細く見えるけど、意外としっかりしていた。純一のおでこの辺りに司の顎が来て、頭に軽くキスをされる。
「ん? ちょっと、何してんだよ」
「何って、キス」
「いやそういう事じゃなくて」
純一は後悔した。司が突拍子もない事をするのは分かっていた筈なのに、どうしてほいほいハグされに行ったのか。
「嫌だったか?」
「いや……頭にチューとか、別に減るもんじゃないし……」
自分の貞操が危ぶまれている事に気付かず、純一は素直な感想を言う。
「じゃあ、これは?」
耳元で司の声がしたかと思ったら、耳たぶにキスされた。腰から背中へ何かが這い上がるような感覚があって、思わずキスされた耳を塞ぐ。
「え? なに?」
何が起きた、と戸惑う純一に、また後ろから「司、その辺にしときなって」と湊が止めに入る。
「どこまで許せるか、やるんだろ?」
聞く耳を持たない司は、純一の腰に回していた手を、尻を撫でながら前に持ってくる。
「……っ」
さすがに腰を引いた純一だったが、なにより驚きだったのは、そこが熱を帯びていたからだ。
「え? 何で……」
自分でも訳が分からず、思わず下半身を見ると制服のズボン越しでも分かるほど、純一の分身は硬くなっていた。思わず両手でそこを隠すと、司は離れた。
「湊」
司が湊を呼ぶ。後ろにいた湊が、純一を抱きしめた。
「もう……純一、俺は司みたいに自制心強くないよ?」
それを言うなら逆じゃないか? と純一は思う。いつもいつも、暴走して純一を困らせているのは司だからだ。
人の事、ムッツリなんて言えないかも、と湊は司がしたのと反対の耳に、キスをした。
「……っ、や、だから、何でこんな事になってんの?」
純一は困惑する。下半身は大変な事になってるし、二人してどうしてこんな風に触れてくるのだろう。
「んー? そりゃ、どこまで許せるかって純一が言うから」
湊の手が純一の手に重ねられる。純一の手ごと、純一の中心を握られて慌てた。
「ちょ、待って……それは無理っ」
「そうなの? じゃあ何でこんな風になってるの」
純一の目に涙が浮かぶ。一気にあれこれあり過ぎて、考えが追いつかない。
「知らないよっ」
ふるふると純一は頭を振った。どうしたら良いのか分からなくて、とりあえず手を離してくれと懇願する。
「手、離していいの? コレどうすんの?」
湊の声が優しく誘惑してくる。手も微妙に動かされ、敏感に刺激を拾った純一は身体を震わせた。
『他人に触られるのって、結構気持ちいいしな』
唐突に哲朗の言葉が頭に浮かび、いっそこのまま身を任せたら良いのだろうか、とそんな考えが浮かぶ。
(いや、ダメだ)
「湊、司……俺、こんな形で流されるのは嫌だ」
ここまでされて嫌ではないなら、その先もきっといけると思う。けれど、それはやっぱり好きな人としたい。
湊は腕を離すと、深いため息をついた。珍しく乱暴に頭をガシガシかくと、頭を冷やしてくる、と教室の方へ歩いていった。
純一はその場にしゃがみこむと、大きく息を吐く。
「純一」
呼ばれて見ると、司は腰を下ろして目線を合わせた。
そこで初めて、司が意外と顔立ちがハッキリしている事に気付く。長いまつ毛が付いた瞳は、いつものように表情が読めない目をしている。
「大丈夫か?」
「……お前が言うなよ……」
純一はうなだれた。熱は引いてきているから良いものの、原因になった人に言われたくない。
「湊、大丈夫かな?」
何だかイライラしていたように見えた湊。彼の心の中で、何があったのだろう?
「さあな。大方後に引けなくなったんだろ」
間近に純一を見る司は至って真面目だ。純一はまたため息をつく。
「俺、彼女が欲しいのに……」
「…………迷惑か?」
「……っ」
また純一はハッとして司を見る。いつものように、彼はまっすぐ純一を見ているだけだ。
「友達じゃダメなのか?」
司はああ、と表情を変えず頷いた。
「純一がハッキリ断ってくれなければ、遅かれ早かれ、今みたいな事がまた起こるだろう」
俺はいつまでも待つが、湊はどうだろうな、と司は立ち上がった。
予鈴が鳴る。教室に戻らないと、と純一も立ち上がった。
その日、湊は教室に戻って来なかった。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
守護霊は吸血鬼❤
凪子
BL
ごく普通の男子高校生・楠木聖(くすのき・ひじり)は、紅い月の夜に不思議な声に導かれ、祠(ほこら)の封印を解いてしまう。
目の前に現れた青年は、驚く聖にこう告げた。「自分は吸血鬼だ」――と。
冷酷な美貌の吸血鬼はヴァンと名乗り、二百年前の「血の契約」に基づき、いかなるときも好きなだけ聖の血を吸うことができると宣言した。
憑りつかれたままでは、殺されてしまう……!何とかして、この恐ろしい吸血鬼を祓ってしまわないと。
クラスメイトの笹倉由宇(ささくら・ゆう)、除霊師の月代遥(つきしろ・はるか)の協力を得て、聖はヴァンを追い払おうとするが……?
ツンデレ男子高校生と、ドS吸血鬼の物語。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
ずっと、ずっと甘い口唇
犬飼春野
BL
「別れましょう、わたしたち」
中堅として活躍し始めた片桐啓介は、絵にかいたような九州男児。
彼は結婚を目前に控えていた。
しかし、婚約者の口から出てきたのはなんと婚約破棄。
その後、同僚たちに酒の肴にされヤケ酒の果てに目覚めたのは、後輩の中村の部屋だった。
どうみても事後。
パニックに陥った片桐と、いたって冷静な中村。
周囲を巻き込んだ恋愛争奪戦が始まる。
『恋の呪文』で脇役だった、片桐啓介と新人の中村春彦の恋。
同じくわき役だった定番メンバーに加え新規も参入し、男女入り交じりの大混戦。
コメディでもあり、シリアスもあり、楽しんでいただけたら幸いです。
題名に※マークを入れている話はR指定な描写がありますのでご注意ください。
※ 2021/10/7- 完結済みをいったん取り下げて連載中に戻します。
2021/10/10 全て上げ終えたため完結へ変更。
『恋の呪文』と『ずっと、ずっと甘い口唇』に関係するスピンオフやSSが多くあったため
一気に上げました。
なるべく時間軸に沿った順番で掲載しています。
(『女王様と俺』は別枠)
『恋の呪文』の主人公・江口×池山の番外編も、登場人物と時間軸の関係上こちらに載せます。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる