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番外編2 蜜月(R18・しんちゃん有言実行編)
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※これは本編終了後のお話です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「透……可愛いよ」
「う……」
ある日の休日。透は伸也と二人でお菓子を作っていた。以前はよく作っていたけれど、最近めっきり時間が取れなくて、久しぶりだと透は喜んでいた。
しかしスコーンができあがったところで宅配便が届き、食べるのはちょっと待ってと伸也に言われ、大人しく待っていると、伸也はニコニコと宅配便の箱を持ってきたのだ。
何をそんなに嬉しそうにしているのかな、と思っていたら、彼はスコーンそっちのけでその箱を開け始める。透も興味津々でそれを眺めていたら、出てきたものに逃げ出したくなったのだ。
いつか伸也が言っていた、フリフリエプロンを買ってあげるという言葉。あれを実行していたのだから。
しかも出てきたのはそれだけじゃなかった。猫耳カチューシャに大人の玩具が付いた尻尾、紐状の下着、やたら丈の短いセーラー服……一体伸也はどんな顔をしてそれを買ったのか、考えるのも怖い。
そして案の定それらは透が着る前提で買ったらしく、しんちゃんにそんな趣味があったなんてと涙目で着用を拒否し、押し問答を続けた挙句、夕飯の肉じゃがと唐揚げに釣られ、今に至る。
真昼間の自然光が入るリビングで、透はテロテロした布でできた、それはそれは可愛らしいエプロンを着けていた。裸で。靴下も脱ごうとしたけれど、なぜかそれは拒否され、変なこだわりがあるなと呆れたけれど。
「どうせだから猫耳としっぽも着ける?」
「……しんちゃん、一体どんな趣味してんの?」
楽しみは取っておいた方がいいんじゃない? という透の逃げる言い訳を言葉通り信じ、伸也は大人しく残りの衣装を大事そうに箱に戻した。
「じゃ、スコーンを食べようか」
「ぅへぇ?」
思ってもみなかった彼の言葉に、透は変な声を上げる。まさか着て満足したのかなと思ったけれど、伸也の様子を見ていると、どうやらそうではないようだ。
ダイニングテーブルに置かれたスコーンは、添えにクリームチーズや、クロテッドクリーム、ジャムも用意してある。ジャムは伸也が作ったもので、絶妙な甘みと酸味が透好みで大好きなものだ。
どうしてこんな格好でおやつを食べさせようとするのか、透には分からなかった。でも、伸也が機嫌よく椅子に座るので、透も並んで着席する。ひんやりした椅子の座面が、何となく落ち着かない。
「透、ジャム食べるでしょ。ほら」
伸也がマーマレードの容器をこちらに寄越した。ジャムの中でも、マーマレードが一番好きな透は、大きめに作ったスコーンにたっぷりそれを塗って食べるのが好きだ。どうしてここで透の機嫌を取りにくるのだろう、と思いながらも、いつも通りたっぷり塗って……というか乗せて、口に運ぶ。
溢れるほどに乗せたジャムはやっぱり美味しく、オレンジの甘みと酸味、そして少しの苦味が透の頬を綻ばせた。
「んん! やっぱりしんちゃんの作ったマーマレード、美味しいな!」
「ふふ、ありがとう」
もはやスコーンより、マーマレードがメインの量かと思う程、透はジャムを乗せていく。そしてかぶりついた時、やってしまった。
「んんんっ」
スコーンから溢れたマーマレードが、テロテロの生地の上に落ちてしまう。
「うわ、わわわっ」
しかもスコーンが割れ、慌てて落ちた欠片をキャッチすると、当然それに乗っていたジャムも手に付く訳で。
「あーあー、大丈夫?」
「う、うん。ごめん、エプロン汚しちゃった……」
「待って、動かないで」
とりあえず、スコーンをお皿に置こう、と動いた透の手首を、伸也が掴む。え? と思っているうちにその腕を引っ張られ、持っていたスコーンを指ごと食べられた。
「ちょっとしんちゃんっ」
「……ん?」
伸也はポロポロとスコーンを落としながら、透の指や手に付いたマーマレードを舐め取った。そう言えば、以前生クリームを付けて舐め回したいとか言っていたな、と変なことを思い出し、顔が一気に熱くなる。
「しんちゃん! と、取れた! マーマレード、取れたから!」
「ジャムはベタつくからね。しっかり拭かないと」
「うううん! 拭くよ! 手を洗うから!」
「勿体ないから僕が舐めてから」
そんなことしなくていいから! と叫ぶけれど、伸也は丁寧に透の指先や、指の間も舐めている。温かい舌がペロペロと這う感触に、透は膝を擦り合わせた。
透の手を綺麗に舐め終わった伸也は、なぜかまだ手首を掴んだまま椅子から下りてしゃがむ。ここも舐め取ってあげる、と言われたのは、エプロンの上のマーマレード──丁度股間の真上の。
伸也はこれを狙って? いやまさか、と透は慌てて膝を上げて拒否しようとした。けれど伸也の腕に押さえつけられ、そこに彼の顔が近付く。
「し、しんちゃん……」
泣きそうな声で──いや、実際に涙目になって、透は恋人を呼んだ。なぁに? と下から見上げた伸也の顔はいつもの優しい彼で、ますますいたたまれなくなる。
「そ、そこは……舐められると、変な気分になるから……」
「変な気分って?」
「だ、だから……っ、んんっ」
言葉を続けようとした透だけれど、伸也はその前にそこへ顔をうずめてしまった。マーマレードを舐め取るだけなら、そんなに舌を這わせなくてもいいのに、と思いながら、透は温かい濡れた感触に下半身がムズムズして、太ももを擦り合わせる。
「しんちゃん? もう綺麗になったよね? エプロンも汚れちゃったし、着替えていいかな?」
このままではまた裸エプロンのまま、エッチをすることになる、と掴まれた両腕に力を込めた。けれど手はびくともしない。
「まだだよ透」
嫌な予感がすると思ったらやっぱり、伸也はそのまま身体を伸ばして、薄い生地の上から胸の辺りに舌を這わせた。ひく、と肩が震え息を詰めると、じわりと下半身が熱くなってしまう。
「しんちゃん……そこは汚れてないよ? やだよ……」
「この間、約束したでしょ?」
「し、してないしてない! やだやだ! ……やだ、やあ……っ」
透の声に明らかな性的興奮が混ざると、伸也は遠慮なしに透の胸に吸い付く。布ごと、わざと音を立てて聴覚からも透を追い込む伸也は、最初は緊張して恥ずかしがっていたなんて、とてもじゃないけれど信じられない。
「……ほら、透けて見えてる。えっちだね」
「えっちなのはしんちゃんだよぉ……」
一体、どこでこんなことを覚えたのか。伸也の初めては透が頂いたのに、いつの間に立場が逆転してしまったのか。透は涙目で伸也を見つめた。
「可愛い……」
「ん……」
伸也は透の腕を解放し、立ち上がってキスをくれる。ぺろりと唇を舐められ、ゾクッとして口を開けば、彼の舌が優しく、唇や口内を撫でてくれる。
(しんちゃんのキス、優しくて力抜けちゃう……)
次第に意識がふわふわとして、小さくリップ音を立てて離れた時には、抵抗する気も失せていた。
「……おいで」
「ん……」
◇◇
「……っ! ああ……っ、しんちゃ……!」
透は高く掠れた声を上げる。
ここは伸也の寝室。彼はベッドヘッドを背もたれにして座り、それを跨ぐようにして透は膝立ちでいた。もちろん、伸也は裸で、透はフリフリエプロンを着けたままだ。
そして透は、もう長いこと胸と後ろをいじられ、何度もイカされている。それでも、射精に至らない前は触れられず、透は悶えていた。
「ほんっと……透は可愛いね」
伸也が上擦った声でまた乳首に吸い付いてくる。わざわざ邪魔なエプロンを除けて吸うから、吸われすぎて赤くなり、ぷくっと膨れ上がってしまっていた。後ろも、伸也の長い指が奥のいい場所を刺激して、彼の指をきゅうきゅう締めつけている。
「ん……っ! ああ……っ!」
ブルブルと、透の身体が痙攣した。もう何度目か分からない絶頂に、透は酸欠になって伸也にくたりと凭れ掛かる。
「ああ……透は本当に可愛い」
伸也がそんな透を見て、本当にうっとりと呟くから何も言えなかった。やっぱり少し、愛情表現が歪んでいる気がするけれど、凭れた透をしっかりした腕と胸で抱きとめてくれるから、よしとしよう。
「ね、しんちゃ……も、らめ……」
息も絶え絶えに、舌っ足らずな口調で透は言うと、分かったよ、と伸也は軽く口付けをした。同時に後ろから指が抜かれ、横になるように言われて素直にそうすると、伸也は指につけていたゴムを捨てる。新しいものを伸也が自ら装着するのを、ボーッと見ていると、彼は笑った。
「そんなうっとりした顔で見ないで。酷くしたくなる」
「だって……しんちゃんのでオレの中、掻き回されるの好き……」
ボーッとしているからか、無意識にそんなことを口走り、透は自分の発した言葉にゾクッとした。それを意識したらゾクゾクが止まらなくなって、透は早く、と自ら足を上げて後ろを見せる。
伸也はそんな透を見て一瞬息を詰めた。そしてはあ、と息を吐いて透の足を持つ。後ろに期待していた熱があてがわれて、今度こそ透は期待に身体を震わせた。
ゆっくりと、伸也が入ってくる。熱くて硬い、伸也の身体の一部。透もできるだけ優しく彼を包んであげたかったけれど、勝手にひくつく後ろは彼を唸らせるほど悦ばせた。
「透……もう少し、力抜ける?」
「あ、しんちゃん……やってる、けど……だめ、らめ、イッちゃうイッちゃう……っ!」
ググッと、透は背中を反らす。脳天を突くような快感が波のように襲い、その波に攫われそうで必死に何かにしがみついた。
「しんちゃん……っ、イッちゃった、気持ちいい……よぉ!」
透は足腰を震わせながら伸也を見つめた。彼は頬を上気させながら、透の雄を撫でる。
「ん……っ!」
そこはいつの間にかエプロンの裾がめくれて丸見えになっており、生温かく濡れていた。今ので射精してしまったらしいと気付いた透は、それに気付かなかった程の強烈な快感に、身悶えする。
「ああ、出ちゃったね……可愛い」
「あ! いや! あああ……っ!」
伸也が動き出した。透の足を抱え、互いの肉がぶつかって、音が鳴るほど穿つ。
透は強烈な快感に胸がいっぱいになり、涙が溢れて止まらなくなった。そして愛しい恋人は、身をかがめてその涙を舐め取るのだ。
「嫌じゃないでしょう? 何て言うんだった?」
凶暴なモノで突き上げながら、伸也は小さい子供に言い聞かせるように問う。しかしこれ以上の快感は苦しいばかりで、透は伸也の背中にしがみつき、顔を顰めて爪を立てた。
「いく! いっちゃう! ああ!」
また大きな快感の波が来た透は、首を限界まで逸らして身体を硬直させる。連続する絶頂に、止まらなくなっちゃったと泣けば、伸也は僕がいるから大丈夫、と優しく頭を撫でてくれた。
撫でる手はどこまでも優しいのに、下半身は凶暴で容赦がない。相反する伸也からの刺激に、透はまた深い快楽に堕ち、必死で伸也にしがみつくのだ。
「透……透……、ああもう、可愛い……」
揺さぶられるたび、エプロンの布が肌に擦れて、透はそれにさえ感じてしまう。五感の全部が、伸也を欲しがって、悦んでいる。それが嬉しくてまた泣けた。
伸也が透の両手をベッドに縫いつける。左手首の内側をそっと指で撫でられ、いつか言われた言葉を思い出した。
『傷跡ごと、愛してくれるやつ奴と付き合え』
「──しんちゃん……っ!」
そう、ずっと透には伸也しかいないのだ。だから伸也とこうしていることがやっぱり嬉しくて、嬉しい、大好き、と足を伸也の身体に絡ませ、泣きながら喘ぐ。
「透、気持ちいい? 僕、もうイクよ……?」
「うん……っ、──ッ、オレもイクっ! イッちゃう!」
ガクガクと、足腰が震えた。全身に力が入り、視界も音も消え、自分がどこかに行ってしまわないよう、伸也の手を思い切り握る。
「……っ」
光と音が戻ってくると、伸也は動きを止めて顔を顰めていた。彼の怒張が自分の中で跳ね、その度に伸也は息を詰めているので、達しているのだと分かる。
やがてぶるりと背中を反らした伸也は、くたりと透の上に倒れてきた。息を切らして、顔や身体には汗が浮かんでいる。気持ちよかったんだな、と嬉しくなって、彼の名を呼んだ。
顔を上げた伸也を、透は両手で頬を包みそっと引き寄せる。優しく唇を啄むと、伸也は嬉しそうに目を細めた。
「透……可愛い」
「う、しんちゃん……可愛いしか言ってないよ?」
想いを伝え合ってから、伸也は透に可愛いと口癖のように言うようになった。今までも、言わなかっただけでずっと思っていたのかと思うと、恥ずかしい。
「……もうこんな時間か……そろそろ夕飯の支度……っていうか、おやつも片付けてないね」
伸也が時計を見て苦笑する。じゃあ夕飯はスコーンにしようよ、と透は笑うと、伸也は軽くキスをくれた。
「……可愛い。愛してるよ、透」
「ふふ。オレも」
そしてまた、二人の吐息が混ざり合う。
彼らの蜜月はまだまだ続く。
(終)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご愛読ありがとうございました!
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「透……可愛いよ」
「う……」
ある日の休日。透は伸也と二人でお菓子を作っていた。以前はよく作っていたけれど、最近めっきり時間が取れなくて、久しぶりだと透は喜んでいた。
しかしスコーンができあがったところで宅配便が届き、食べるのはちょっと待ってと伸也に言われ、大人しく待っていると、伸也はニコニコと宅配便の箱を持ってきたのだ。
何をそんなに嬉しそうにしているのかな、と思っていたら、彼はスコーンそっちのけでその箱を開け始める。透も興味津々でそれを眺めていたら、出てきたものに逃げ出したくなったのだ。
いつか伸也が言っていた、フリフリエプロンを買ってあげるという言葉。あれを実行していたのだから。
しかも出てきたのはそれだけじゃなかった。猫耳カチューシャに大人の玩具が付いた尻尾、紐状の下着、やたら丈の短いセーラー服……一体伸也はどんな顔をしてそれを買ったのか、考えるのも怖い。
そして案の定それらは透が着る前提で買ったらしく、しんちゃんにそんな趣味があったなんてと涙目で着用を拒否し、押し問答を続けた挙句、夕飯の肉じゃがと唐揚げに釣られ、今に至る。
真昼間の自然光が入るリビングで、透はテロテロした布でできた、それはそれは可愛らしいエプロンを着けていた。裸で。靴下も脱ごうとしたけれど、なぜかそれは拒否され、変なこだわりがあるなと呆れたけれど。
「どうせだから猫耳としっぽも着ける?」
「……しんちゃん、一体どんな趣味してんの?」
楽しみは取っておいた方がいいんじゃない? という透の逃げる言い訳を言葉通り信じ、伸也は大人しく残りの衣装を大事そうに箱に戻した。
「じゃ、スコーンを食べようか」
「ぅへぇ?」
思ってもみなかった彼の言葉に、透は変な声を上げる。まさか着て満足したのかなと思ったけれど、伸也の様子を見ていると、どうやらそうではないようだ。
ダイニングテーブルに置かれたスコーンは、添えにクリームチーズや、クロテッドクリーム、ジャムも用意してある。ジャムは伸也が作ったもので、絶妙な甘みと酸味が透好みで大好きなものだ。
どうしてこんな格好でおやつを食べさせようとするのか、透には分からなかった。でも、伸也が機嫌よく椅子に座るので、透も並んで着席する。ひんやりした椅子の座面が、何となく落ち着かない。
「透、ジャム食べるでしょ。ほら」
伸也がマーマレードの容器をこちらに寄越した。ジャムの中でも、マーマレードが一番好きな透は、大きめに作ったスコーンにたっぷりそれを塗って食べるのが好きだ。どうしてここで透の機嫌を取りにくるのだろう、と思いながらも、いつも通りたっぷり塗って……というか乗せて、口に運ぶ。
溢れるほどに乗せたジャムはやっぱり美味しく、オレンジの甘みと酸味、そして少しの苦味が透の頬を綻ばせた。
「んん! やっぱりしんちゃんの作ったマーマレード、美味しいな!」
「ふふ、ありがとう」
もはやスコーンより、マーマレードがメインの量かと思う程、透はジャムを乗せていく。そしてかぶりついた時、やってしまった。
「んんんっ」
スコーンから溢れたマーマレードが、テロテロの生地の上に落ちてしまう。
「うわ、わわわっ」
しかもスコーンが割れ、慌てて落ちた欠片をキャッチすると、当然それに乗っていたジャムも手に付く訳で。
「あーあー、大丈夫?」
「う、うん。ごめん、エプロン汚しちゃった……」
「待って、動かないで」
とりあえず、スコーンをお皿に置こう、と動いた透の手首を、伸也が掴む。え? と思っているうちにその腕を引っ張られ、持っていたスコーンを指ごと食べられた。
「ちょっとしんちゃんっ」
「……ん?」
伸也はポロポロとスコーンを落としながら、透の指や手に付いたマーマレードを舐め取った。そう言えば、以前生クリームを付けて舐め回したいとか言っていたな、と変なことを思い出し、顔が一気に熱くなる。
「しんちゃん! と、取れた! マーマレード、取れたから!」
「ジャムはベタつくからね。しっかり拭かないと」
「うううん! 拭くよ! 手を洗うから!」
「勿体ないから僕が舐めてから」
そんなことしなくていいから! と叫ぶけれど、伸也は丁寧に透の指先や、指の間も舐めている。温かい舌がペロペロと這う感触に、透は膝を擦り合わせた。
透の手を綺麗に舐め終わった伸也は、なぜかまだ手首を掴んだまま椅子から下りてしゃがむ。ここも舐め取ってあげる、と言われたのは、エプロンの上のマーマレード──丁度股間の真上の。
伸也はこれを狙って? いやまさか、と透は慌てて膝を上げて拒否しようとした。けれど伸也の腕に押さえつけられ、そこに彼の顔が近付く。
「し、しんちゃん……」
泣きそうな声で──いや、実際に涙目になって、透は恋人を呼んだ。なぁに? と下から見上げた伸也の顔はいつもの優しい彼で、ますますいたたまれなくなる。
「そ、そこは……舐められると、変な気分になるから……」
「変な気分って?」
「だ、だから……っ、んんっ」
言葉を続けようとした透だけれど、伸也はその前にそこへ顔をうずめてしまった。マーマレードを舐め取るだけなら、そんなに舌を這わせなくてもいいのに、と思いながら、透は温かい濡れた感触に下半身がムズムズして、太ももを擦り合わせる。
「しんちゃん? もう綺麗になったよね? エプロンも汚れちゃったし、着替えていいかな?」
このままではまた裸エプロンのまま、エッチをすることになる、と掴まれた両腕に力を込めた。けれど手はびくともしない。
「まだだよ透」
嫌な予感がすると思ったらやっぱり、伸也はそのまま身体を伸ばして、薄い生地の上から胸の辺りに舌を這わせた。ひく、と肩が震え息を詰めると、じわりと下半身が熱くなってしまう。
「しんちゃん……そこは汚れてないよ? やだよ……」
「この間、約束したでしょ?」
「し、してないしてない! やだやだ! ……やだ、やあ……っ」
透の声に明らかな性的興奮が混ざると、伸也は遠慮なしに透の胸に吸い付く。布ごと、わざと音を立てて聴覚からも透を追い込む伸也は、最初は緊張して恥ずかしがっていたなんて、とてもじゃないけれど信じられない。
「……ほら、透けて見えてる。えっちだね」
「えっちなのはしんちゃんだよぉ……」
一体、どこでこんなことを覚えたのか。伸也の初めては透が頂いたのに、いつの間に立場が逆転してしまったのか。透は涙目で伸也を見つめた。
「可愛い……」
「ん……」
伸也は透の腕を解放し、立ち上がってキスをくれる。ぺろりと唇を舐められ、ゾクッとして口を開けば、彼の舌が優しく、唇や口内を撫でてくれる。
(しんちゃんのキス、優しくて力抜けちゃう……)
次第に意識がふわふわとして、小さくリップ音を立てて離れた時には、抵抗する気も失せていた。
「……おいで」
「ん……」
◇◇
「……っ! ああ……っ、しんちゃ……!」
透は高く掠れた声を上げる。
ここは伸也の寝室。彼はベッドヘッドを背もたれにして座り、それを跨ぐようにして透は膝立ちでいた。もちろん、伸也は裸で、透はフリフリエプロンを着けたままだ。
そして透は、もう長いこと胸と後ろをいじられ、何度もイカされている。それでも、射精に至らない前は触れられず、透は悶えていた。
「ほんっと……透は可愛いね」
伸也が上擦った声でまた乳首に吸い付いてくる。わざわざ邪魔なエプロンを除けて吸うから、吸われすぎて赤くなり、ぷくっと膨れ上がってしまっていた。後ろも、伸也の長い指が奥のいい場所を刺激して、彼の指をきゅうきゅう締めつけている。
「ん……っ! ああ……っ!」
ブルブルと、透の身体が痙攣した。もう何度目か分からない絶頂に、透は酸欠になって伸也にくたりと凭れ掛かる。
「ああ……透は本当に可愛い」
伸也がそんな透を見て、本当にうっとりと呟くから何も言えなかった。やっぱり少し、愛情表現が歪んでいる気がするけれど、凭れた透をしっかりした腕と胸で抱きとめてくれるから、よしとしよう。
「ね、しんちゃ……も、らめ……」
息も絶え絶えに、舌っ足らずな口調で透は言うと、分かったよ、と伸也は軽く口付けをした。同時に後ろから指が抜かれ、横になるように言われて素直にそうすると、伸也は指につけていたゴムを捨てる。新しいものを伸也が自ら装着するのを、ボーッと見ていると、彼は笑った。
「そんなうっとりした顔で見ないで。酷くしたくなる」
「だって……しんちゃんのでオレの中、掻き回されるの好き……」
ボーッとしているからか、無意識にそんなことを口走り、透は自分の発した言葉にゾクッとした。それを意識したらゾクゾクが止まらなくなって、透は早く、と自ら足を上げて後ろを見せる。
伸也はそんな透を見て一瞬息を詰めた。そしてはあ、と息を吐いて透の足を持つ。後ろに期待していた熱があてがわれて、今度こそ透は期待に身体を震わせた。
ゆっくりと、伸也が入ってくる。熱くて硬い、伸也の身体の一部。透もできるだけ優しく彼を包んであげたかったけれど、勝手にひくつく後ろは彼を唸らせるほど悦ばせた。
「透……もう少し、力抜ける?」
「あ、しんちゃん……やってる、けど……だめ、らめ、イッちゃうイッちゃう……っ!」
ググッと、透は背中を反らす。脳天を突くような快感が波のように襲い、その波に攫われそうで必死に何かにしがみついた。
「しんちゃん……っ、イッちゃった、気持ちいい……よぉ!」
透は足腰を震わせながら伸也を見つめた。彼は頬を上気させながら、透の雄を撫でる。
「ん……っ!」
そこはいつの間にかエプロンの裾がめくれて丸見えになっており、生温かく濡れていた。今ので射精してしまったらしいと気付いた透は、それに気付かなかった程の強烈な快感に、身悶えする。
「ああ、出ちゃったね……可愛い」
「あ! いや! あああ……っ!」
伸也が動き出した。透の足を抱え、互いの肉がぶつかって、音が鳴るほど穿つ。
透は強烈な快感に胸がいっぱいになり、涙が溢れて止まらなくなった。そして愛しい恋人は、身をかがめてその涙を舐め取るのだ。
「嫌じゃないでしょう? 何て言うんだった?」
凶暴なモノで突き上げながら、伸也は小さい子供に言い聞かせるように問う。しかしこれ以上の快感は苦しいばかりで、透は伸也の背中にしがみつき、顔を顰めて爪を立てた。
「いく! いっちゃう! ああ!」
また大きな快感の波が来た透は、首を限界まで逸らして身体を硬直させる。連続する絶頂に、止まらなくなっちゃったと泣けば、伸也は僕がいるから大丈夫、と優しく頭を撫でてくれた。
撫でる手はどこまでも優しいのに、下半身は凶暴で容赦がない。相反する伸也からの刺激に、透はまた深い快楽に堕ち、必死で伸也にしがみつくのだ。
「透……透……、ああもう、可愛い……」
揺さぶられるたび、エプロンの布が肌に擦れて、透はそれにさえ感じてしまう。五感の全部が、伸也を欲しがって、悦んでいる。それが嬉しくてまた泣けた。
伸也が透の両手をベッドに縫いつける。左手首の内側をそっと指で撫でられ、いつか言われた言葉を思い出した。
『傷跡ごと、愛してくれるやつ奴と付き合え』
「──しんちゃん……っ!」
そう、ずっと透には伸也しかいないのだ。だから伸也とこうしていることがやっぱり嬉しくて、嬉しい、大好き、と足を伸也の身体に絡ませ、泣きながら喘ぐ。
「透、気持ちいい? 僕、もうイクよ……?」
「うん……っ、──ッ、オレもイクっ! イッちゃう!」
ガクガクと、足腰が震えた。全身に力が入り、視界も音も消え、自分がどこかに行ってしまわないよう、伸也の手を思い切り握る。
「……っ」
光と音が戻ってくると、伸也は動きを止めて顔を顰めていた。彼の怒張が自分の中で跳ね、その度に伸也は息を詰めているので、達しているのだと分かる。
やがてぶるりと背中を反らした伸也は、くたりと透の上に倒れてきた。息を切らして、顔や身体には汗が浮かんでいる。気持ちよかったんだな、と嬉しくなって、彼の名を呼んだ。
顔を上げた伸也を、透は両手で頬を包みそっと引き寄せる。優しく唇を啄むと、伸也は嬉しそうに目を細めた。
「透……可愛い」
「う、しんちゃん……可愛いしか言ってないよ?」
想いを伝え合ってから、伸也は透に可愛いと口癖のように言うようになった。今までも、言わなかっただけでずっと思っていたのかと思うと、恥ずかしい。
「……もうこんな時間か……そろそろ夕飯の支度……っていうか、おやつも片付けてないね」
伸也が時計を見て苦笑する。じゃあ夕飯はスコーンにしようよ、と透は笑うと、伸也は軽くキスをくれた。
「……可愛い。愛してるよ、透」
「ふふ。オレも」
そしてまた、二人の吐息が混ざり合う。
彼らの蜜月はまだまだ続く。
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社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
【R18】異世界で傭兵仲間に調教された件
がくん
BL
あらすじ
その背中は──英雄であり、悪党だった。
物分かりのいい人間を演じてきた学生、イズミケントは現実で爆発事故に巻き込まれた。
異世界で放浪していたケントを魔獣から助けたのは悪党面の傭兵マラークだった。
行き場のなかったケントはマラークについていき、新人傭兵として生きていく事を選んだがケントには魔力がなかった。
だがケントにはユニークスキルというものを持っていた。精変換──それは男の精液を取り入れた分だけ魔力に変換するという歪なスキルだった。
憧れた男のように強くなりたいと願ったケントはある日、心を殺してマラークの精液を求めた。
最初は魔力が欲しかっただけなのに──
仲間と性行為を繰り返し、歪んだ支援魔法師として生きるケント。
戦闘の天才と言われる傲慢な男マラーク。
駄犬みたいな後輩だが弓は凄腕のハーヴェイ。
3人の傭兵が日常と性行為を経て、ひとつの小隊へとなっていく物語。
初投稿、BLエロ重視にスポット置いた小説です。耐性のない方は戻って頂ければ。
趣味丸出しですが好みの合う方にはハマるかと思います。
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さくらさん、まさかの一気読みありがとうございます!(((o(*゚▽゚*)o)))
実はちょっと(?)特殊な趣味を持つ伸ちゃんでした(笑)
母親からの承認は、自己肯定感の土台になるみたいですからね……透が最後には精神的に救われて、私自身もホッとしましたε-(´∀`;)ホッ
ありがとうございますはこちらの方ですよ!
いただいた感想で、作家活動できていますので😊
改めてありがとうございます♡
29話にお邪魔します。
どう!なるのぉおおこれからぁあああ!!
と、自らむずむずするところで読むのをやめてみます(マゾじゃないよ⁉︎多分……)
河原さんいつもありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))
読み進めて頂いて感謝ですよ!
続きが気になるところで止めておくの、私も分かります……!(笑)
(マゾかどうかは一旦置いておきましょうwww)
ピロシキさん、いつもありがとうございます!!
過去作のキャラクターが、成長して登場させるのは楽しかったです(´>∀<`)
おっしゃる通り、亮介と透は似たもの同士ですね。お互いパートナーを見つけて、幸せになれて良かったです(*^^*)
改めて、読んでくださりありがとうございました❤