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赤い月が昇る。
ここは人間が住む世界とは違う場所。
どこまでも枯れた土地と、辛うじて生きている植物だけが広がる世界。常に夜かのように薄暗く、その空気は紅く染まっている。
彼はその乾いた地面に跪かされ、両手両足には重たい鎖が巻かれていた。その身体には無数の傷痕があり、彼の目は腫れて殆ど塞がっていたけれど、その奥にある赤い瞳は爛々と輝いている。
ああ、と彼は空を見上げて呟いた。今日も禍々しい良い月だ、と。
その言葉に周りがザワついた。
自分が何をしたか分かっているのか!
お前は禁忌を犯したんだぞ!
「最期に言い残すことは?」
彼のそばにいた、大柄な男が言う。その皮膚は浅黒く、女性の腰ほどはあろうかという太い腕を組んだ。
彼は笑う。
「俺を殺したら、指輪の在処は分からないままだぞ」
「──殺せ!」
大柄な男が叫ぶと、周りにいた人間ではないものが一斉に彼に飛びかかった。
彼は目を閉じる。
ああ、最期に一目見ておきたかった。
私の愛する──。
ここは人間が住む世界とは違う場所。
どこまでも枯れた土地と、辛うじて生きている植物だけが広がる世界。常に夜かのように薄暗く、その空気は紅く染まっている。
彼はその乾いた地面に跪かされ、両手両足には重たい鎖が巻かれていた。その身体には無数の傷痕があり、彼の目は腫れて殆ど塞がっていたけれど、その奥にある赤い瞳は爛々と輝いている。
ああ、と彼は空を見上げて呟いた。今日も禍々しい良い月だ、と。
その言葉に周りがザワついた。
自分が何をしたか分かっているのか!
お前は禁忌を犯したんだぞ!
「最期に言い残すことは?」
彼のそばにいた、大柄な男が言う。その皮膚は浅黒く、女性の腰ほどはあろうかという太い腕を組んだ。
彼は笑う。
「俺を殺したら、指輪の在処は分からないままだぞ」
「──殺せ!」
大柄な男が叫ぶと、周りにいた人間ではないものが一斉に彼に飛びかかった。
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ああ、最期に一目見ておきたかった。
私の愛する──。
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