【完結】チクニー動画を大人の動画サイトにアップロードしたら、身バレして現実世界でBANされそうです。

大竹あやめ

文字の大きさ
上 下
29 / 46

29 頭の中はそればっか

しおりを挟む
「桃澤課長、生きてます?」

 いきなり呼びかけられて、祐輔はハッとその人物を見た。そこには感情が読めない佐々木がいて、承認お願いします、と紙を渡してくる。

「あ、すみません……ボーッとしてたみたいで」

 笑って誤魔化し承認印を押すと、佐々木は「仕事さえしてくれればいいです」と去っていった。

 あれから、祐輔の頭の中はセックスのことばかりになってしまった。十代の頃すらこんなに欲がなかったぞと思うほどの強い欲求に、戸惑っている。

(だめだ、こんなことを考えていては。バレたら……)

 そう考えて意識を切り替えるものの、ムラムラは収まらない。

 一体自分の身体に、何が起きたというのだろう? 今この瞬間にも蓮香に触れられたら、祐輔はすぐに達してしまう自信がある。

(頭の中はソレばっか……俺もひとのこと言えないな)

 蓮香に対して思った言葉が、ブーメランになって返ってきて、祐輔は苦笑した。

 枯れるまで繋がっていたい。そんな強い感情が自分の中にもあったとは。性欲を含むこの感情は、今までの恋愛で湧いてくることはなかった。それは多分、蓮香が祐輔の性癖を知っていることが大きいのでは、と思う。

(相性がよくて、俺の性癖を知ってる……これって最強じゃないか?)

 そう思ったら、ひと目蓮香が見たくなった。初めは変態に、強引に迫ってきた彼だったけれど、今ではそれがありがたいと思う。蓮香が男という点は、それに比べれば些細なことだと思えたのだ。

 自分も単純だな、と苦笑して席を立つ。手が空いているし、蓮香は鶴田を警戒していたけれど、昨日ハッキリと断ったから大丈夫だよな、と営業部に顔を出した。

「蓮香さん」

 蓮香はデスクで真剣にパソコンのモニターを眺めていた。鶴田はおらず、他の社員と外出しているのかな、と思う。

 蓮香は祐輔に気付かず、反応がない。

「蓮香さん」

 ぽん、と彼の肩を叩くと、蓮香は驚いたようにこちらを見上げた。その顔がホッとしたように緩む。

「桃澤課長、どうしました?」
「困っていることはないですか? 少し手が空いたので」

 思えば異動してから、まともに営業企画課のフォローができなかったのだ。忙しさを理由にしてはいけないな、とそう尋ねてみると、蓮香は優しく微笑んだ。

「今のところは大丈夫ですよ。鶴田さんも、笹川さんとの関係を修復しつつありますし」
「えっ?」

 意外な言葉に、祐輔は耳を疑う。あんなに仲が悪そうだったのに、と思っていると、蓮香は今も二人で外出してます、と笑う。

「何があったんです?」

 祐輔はそう言うと、蓮香はそっと耳打ちするように口に手を当てた。

「祐輔さんが鶴田さんを振ってくれたおかげで、笹川さんが彼女を宥めるのに必死なんです」
「おま……その呼び方は会社ではするなって……」

 祐輔が慌てて蓮香を咎めると、彼は満足そうに笑う。それが少し子供っぽく見えて、祐輔の胸がきゅっとなった。かわいい、と心の中で思いつつ、どことなく彼が嬉しそうなのは、ライバルが減ったからかなと思う。そして同時に、自惚れすぎか、と恥ずかしくなった。

「まぁ、それでも笹川さんが偉そうなのは変わらないですけど」

 聞けば、またお前好みの店に連れて行ってやるから、いい加減泣き止めとか言っているらしい。鶴田は本当にウザイ! と反発していたようだが、笹川は、鶴田が振られたならチャンスは自分にあると思っているらしい、あれこれと物で釣ろうとしているようだ。

「お前、鶴田さんに余計なこと言ってないよな?」

 会社では絶対にしない口調で蓮香と話すのはリスクがある。けれど確認せずにはいられない。このまま笹川と鶴田の仲が、よくならずとも険悪にならなければ、仕事は円滑に進むので是非とも仲直りして欲しいけれど。それに、女性が苦手な蓮香が鶴田から離れることができる。

「別に何も。ホームページに載ってた祐輔さんの挨拶に憧れて入社したとだけ」

 祐輔はホッと息をつく。その程度ならそれが恋愛感情だとは思われないだろうし、そこから二人が付き合っているという答えに、行き着くのは難しいだろう。

「桃澤課長、課長は心配しなくて大丈夫ですよ。俺と鶴田さんがしっかり引き継いでいますから」

 ニッコリ笑う蓮香に祐輔は思わず頭を撫でそうになって、咳払いをして誤魔化した。危ない、親密な関係を匂わせるようなことは控えないと。

「ええ。頼りにしてますよ」

 そう言って、祐輔は営業企画課を後にした。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...