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6 嫉妬? ★
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会議室に入ってきたのは、蓮香だった。待っていろと言ったはずなのに、と思っていると、蓮香は強い力で祐輔の二の腕を掴み、壁際に引っ張っていく。
「ちょ……っ、何だよ……!」
会話が漏れるとまずいので小声で抵抗すると、それを上回る力で蓮香は押さえつけてきた。思わず睨んだ彼の顔が、苦しそうに歪められている。気持ちを抑え込んで、でも今にも爆発しそうな……そんな表情だ。
「……んだよ、その顔……」
「……分からないならいいです」
そう言うなり蓮香は、祐輔の胸を撫でてきた。途端に肩を震わせた祐輔は、もちろん抵抗する。しかしシャツの上から胸の突起を爪で引っ掻かれ、力が抜けて壁に凭れると、蓮香は好きです、と呟いて唇で口を塞いできた。
「……ぁ、止めろ、って……会社では……っ」
唇が離れた瞬間にそう言いながら、もう力が入らない腕で蓮香を離そうと彼の腕を掴むけれど、ギュッと胸をつねられて、あう、と情けない声を上げてしまう。
「ここでイケるくせに。こんなんで女性と付き合えるんですか?」
びく、と蓮香の言葉に祐輔の肩が震えた。捏ねられた胸の先がジンジンして、シャツが擦れるだけでも感じてしまう。
そんなこと、自分が一番よく分かっている。他人に言われるまでもない、と唇を噛んだ。
「抵抗しないでくださいよ。桃澤さん、あなたは俺に黙ってて欲しいんでしょう?」
止まらない胸への刺激に膝が震え始め、祐輔は声もなく頭を振る。蓮香から聞く脅し文句。けれどなぜ、脅しているはずの彼が、こんなに苦しそうな顔をしているのだろう?
蓮香の膝が、祐輔の足の間に入ってくる。太ももで股間を擦られ、自分の意志とは関係なく、祐輔の雄は完全に勃ち上がってしまった。
「ほら、俺の足で擦られて、勃たせてるのは誰です?」
その言葉と同時に、ぐり、と強く胸の粒を押しつぶされ、祐輔は呆気なく絶頂する。
強い快感が過ぎたあと、祐輔は自分の快楽への弱さに呆れ、蓮香から顔を逸らした。
「会社で……やるなよ……」
自分でも思ったより弱々しい声が出る。家で散々触らせているのにどうして、と思っていると、蓮香は祐輔の腕を引き、抱き締められた。
思ったよりもしっかりした蓮香の身体に、祐輔は戸惑い、自分が彼に力では敵わないと自覚させられる。
そう思ったらこの状況から早く逃げ出したくなり、蓮香の胸を腕を突っ張って離れようとした。しかし彼の腕は強く、それどころか耳元に唇を寄せられて、くすぐったさに身を捩る。
「祐輔さん……」
「おい、下の名前で呼ぶな」
「祐輔さん、……祐輔さん……っ」
呼ぶなと言っているのに、蓮香は腕に力を込め名前を口にする。いつも触らせている時は、夢中になっているという印象を受ける彼だが、今は何か頼りない。不安をかき消すように呼ぶ蓮香に、祐輔は逃げる気も、怒る気も失せてしまった。
「……どうした?」
ひとつため息をついて、祐輔は返事をする。すると蓮香は好きです、と弱々しく呟く。
「好きなんです……っ」
ともすれば泣いているような蓮香の声に、分かったから離れろ、と背中を軽く叩いた。どうして自分が惚れられているんだ、と思うけれど、祐輔はそこを掘り下げる気はない。自分は男で、付き合いたいのは女性だと思っているから。
「……」
身体を離した蓮香は眉を下げていた。とりあえず、会社でこんなことをしていては、バレるのがオチだ。
それにしても、彼がこんなに不安定になる一面があるなんて、初めて知った。単純だと思っていたけれど、案外繊細な一面もあるらしい。
「女性と二人きりにならないでください……」
シュンとした大型犬は祐輔の手を握る。手の甲をそっと撫でられ、恋人がするような仕草に今の自分たちの関係を思い出した。
そして、気付く。蓮香は本当に祐輔の恋人のつもりでいるのでは、と。
「もしかして、嫉妬したのか?」
「……悪いですか?」
祐輔の質問に、拗ねたように口を尖らせる蓮香は、視線を逸らした。呆れてため息をつくと、蓮香は分かりやすく肩を震わせる。
どうしてそこまで、蓮香は祐輔に執着するのだろう、と思う。けれどそれを今ここでは話せない。
「……今日は定時で上がるぞ。んで、俺んち来い」
「……っ、はいっ!」
いずれにせよ、祐輔は上司としても蓮香のことを知る必要があると思った。分かりやすく嬉しそうに返事をした彼は、もう見えない尻尾をフリフリして喜んでいる。
(単純、真っ直ぐ、真面目……そして繊細)
心のメモに蓮香の情報を付け足す。蓮香の気持ちには応えるつもりはないけれど、嫌いな人種ではない。拒みきれないのは脅されているからだけじゃなく、蓮香の人となりもあるだろうな、と祐輔は意識を切り替える。
会議室にいるついでに、祐輔は今しがた聞いた鶴田のことも軽く話しておこうと思った。真面目な蓮香なら、協力してくれるだろう。
「鶴田さんは、笹川さんに嫌がらせされてるらしい。蓮香さんは、気付いてた?」
仕事用の態度でそう聞くと、蓮香は祐輔が仕事モードに入ったと察したらしい。いいえ、と首を振る。
「営業部長に話をしたみたいだけど、スルーされたって。今後、笹川さんと鶴田さんでやってる担当は、彼女以外に割振ろうかと思う」
「……はい」
「それと、俺も気付かなかったくらいだから、本当に二人きりになった時を狙って声を掛けてるみたいだな。蓮香さんも、鶴田さんをなるべく一人にしないよう、気にして欲しい」
「──分かりました」
返事をした蓮香は少々元気がないようだった。けれどここでいつまでも話している訳にはいかないし、戻りましょう、と会議室を出る。ほんの少し前まで嬉しそうだったのに、女性の話をするだけでもダメなのだろうか、と少し呆れる。
フロアに戻ると、いつも通りの風景があった。鶴田ももう大丈夫そうで、先程笹川に引き留められた分を取り戻そうと、一心不乱にキーボードを叩いている。
「蓮香さん」
そんな彼女の様子を見て、祐輔は蓮香に声を掛けた。
「さっき話したように、笹川さんと鶴田さんの担当を引き継いでもらおうかな」
すると蓮香は分かりやすく言葉を詰まらせる。何かあるのか? と聞くと、何でもありません、と返ってきた。その態度で何でもないわけあるか、と思ったけれど仕事だし、と祐輔は蓮香の背中を軽く叩く。
「物覚えもいいから期待してる。よろしくお願いしますね」
笑顔でそう言うと、蓮香は渋々といった感じで、はい、と返事をした。
「ちょ……っ、何だよ……!」
会話が漏れるとまずいので小声で抵抗すると、それを上回る力で蓮香は押さえつけてきた。思わず睨んだ彼の顔が、苦しそうに歪められている。気持ちを抑え込んで、でも今にも爆発しそうな……そんな表情だ。
「……んだよ、その顔……」
「……分からないならいいです」
そう言うなり蓮香は、祐輔の胸を撫でてきた。途端に肩を震わせた祐輔は、もちろん抵抗する。しかしシャツの上から胸の突起を爪で引っ掻かれ、力が抜けて壁に凭れると、蓮香は好きです、と呟いて唇で口を塞いできた。
「……ぁ、止めろ、って……会社では……っ」
唇が離れた瞬間にそう言いながら、もう力が入らない腕で蓮香を離そうと彼の腕を掴むけれど、ギュッと胸をつねられて、あう、と情けない声を上げてしまう。
「ここでイケるくせに。こんなんで女性と付き合えるんですか?」
びく、と蓮香の言葉に祐輔の肩が震えた。捏ねられた胸の先がジンジンして、シャツが擦れるだけでも感じてしまう。
そんなこと、自分が一番よく分かっている。他人に言われるまでもない、と唇を噛んだ。
「抵抗しないでくださいよ。桃澤さん、あなたは俺に黙ってて欲しいんでしょう?」
止まらない胸への刺激に膝が震え始め、祐輔は声もなく頭を振る。蓮香から聞く脅し文句。けれどなぜ、脅しているはずの彼が、こんなに苦しそうな顔をしているのだろう?
蓮香の膝が、祐輔の足の間に入ってくる。太ももで股間を擦られ、自分の意志とは関係なく、祐輔の雄は完全に勃ち上がってしまった。
「ほら、俺の足で擦られて、勃たせてるのは誰です?」
その言葉と同時に、ぐり、と強く胸の粒を押しつぶされ、祐輔は呆気なく絶頂する。
強い快感が過ぎたあと、祐輔は自分の快楽への弱さに呆れ、蓮香から顔を逸らした。
「会社で……やるなよ……」
自分でも思ったより弱々しい声が出る。家で散々触らせているのにどうして、と思っていると、蓮香は祐輔の腕を引き、抱き締められた。
思ったよりもしっかりした蓮香の身体に、祐輔は戸惑い、自分が彼に力では敵わないと自覚させられる。
そう思ったらこの状況から早く逃げ出したくなり、蓮香の胸を腕を突っ張って離れようとした。しかし彼の腕は強く、それどころか耳元に唇を寄せられて、くすぐったさに身を捩る。
「祐輔さん……」
「おい、下の名前で呼ぶな」
「祐輔さん、……祐輔さん……っ」
呼ぶなと言っているのに、蓮香は腕に力を込め名前を口にする。いつも触らせている時は、夢中になっているという印象を受ける彼だが、今は何か頼りない。不安をかき消すように呼ぶ蓮香に、祐輔は逃げる気も、怒る気も失せてしまった。
「……どうした?」
ひとつため息をついて、祐輔は返事をする。すると蓮香は好きです、と弱々しく呟く。
「好きなんです……っ」
ともすれば泣いているような蓮香の声に、分かったから離れろ、と背中を軽く叩いた。どうして自分が惚れられているんだ、と思うけれど、祐輔はそこを掘り下げる気はない。自分は男で、付き合いたいのは女性だと思っているから。
「……」
身体を離した蓮香は眉を下げていた。とりあえず、会社でこんなことをしていては、バレるのがオチだ。
それにしても、彼がこんなに不安定になる一面があるなんて、初めて知った。単純だと思っていたけれど、案外繊細な一面もあるらしい。
「女性と二人きりにならないでください……」
シュンとした大型犬は祐輔の手を握る。手の甲をそっと撫でられ、恋人がするような仕草に今の自分たちの関係を思い出した。
そして、気付く。蓮香は本当に祐輔の恋人のつもりでいるのでは、と。
「もしかして、嫉妬したのか?」
「……悪いですか?」
祐輔の質問に、拗ねたように口を尖らせる蓮香は、視線を逸らした。呆れてため息をつくと、蓮香は分かりやすく肩を震わせる。
どうしてそこまで、蓮香は祐輔に執着するのだろう、と思う。けれどそれを今ここでは話せない。
「……今日は定時で上がるぞ。んで、俺んち来い」
「……っ、はいっ!」
いずれにせよ、祐輔は上司としても蓮香のことを知る必要があると思った。分かりやすく嬉しそうに返事をした彼は、もう見えない尻尾をフリフリして喜んでいる。
(単純、真っ直ぐ、真面目……そして繊細)
心のメモに蓮香の情報を付け足す。蓮香の気持ちには応えるつもりはないけれど、嫌いな人種ではない。拒みきれないのは脅されているからだけじゃなく、蓮香の人となりもあるだろうな、と祐輔は意識を切り替える。
会議室にいるついでに、祐輔は今しがた聞いた鶴田のことも軽く話しておこうと思った。真面目な蓮香なら、協力してくれるだろう。
「鶴田さんは、笹川さんに嫌がらせされてるらしい。蓮香さんは、気付いてた?」
仕事用の態度でそう聞くと、蓮香は祐輔が仕事モードに入ったと察したらしい。いいえ、と首を振る。
「営業部長に話をしたみたいだけど、スルーされたって。今後、笹川さんと鶴田さんでやってる担当は、彼女以外に割振ろうかと思う」
「……はい」
「それと、俺も気付かなかったくらいだから、本当に二人きりになった時を狙って声を掛けてるみたいだな。蓮香さんも、鶴田さんをなるべく一人にしないよう、気にして欲しい」
「──分かりました」
返事をした蓮香は少々元気がないようだった。けれどここでいつまでも話している訳にはいかないし、戻りましょう、と会議室を出る。ほんの少し前まで嬉しそうだったのに、女性の話をするだけでもダメなのだろうか、と少し呆れる。
フロアに戻ると、いつも通りの風景があった。鶴田ももう大丈夫そうで、先程笹川に引き留められた分を取り戻そうと、一心不乱にキーボードを叩いている。
「蓮香さん」
そんな彼女の様子を見て、祐輔は蓮香に声を掛けた。
「さっき話したように、笹川さんと鶴田さんの担当を引き継いでもらおうかな」
すると蓮香は分かりやすく言葉を詰まらせる。何かあるのか? と聞くと、何でもありません、と返ってきた。その態度で何でもないわけあるか、と思ったけれど仕事だし、と祐輔は蓮香の背中を軽く叩く。
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