【完結】陰キャなインキュバスは襲われたい

26 通じ合う心と世話係

「あ……っ！」

　私が先だけをショウ様の中に入れると、ショウ様は再び足がブルブルと震え出した。ショウ様の手は力が入って白くなり、次第にその震えが全身に広がる。

「あ、……ああ……っ」

　高く掠れたショウ様の声が、私の腰にズクン、と響く。まずいですね、まだ先だけなのに。

「ショウ様、イキそうですか？　……まだ先っぽだけですよ？」

　ショウ様は私の声が届いていないようだ。全身を震わせ耐える姿が可愛らしくて愛しくて、柔らかいお菓子のような肌を、抱きしめながらショウ様の中へと入っていく。

「──ッ！　あああ……っ！」

　案の定、ショウ様は背中を反らして絶頂してしまった。ショウ様の雄から勢いよく体液が飛び出し、テラスの床を汚していく。それと同時にショウ様の中も複雑に動き、私は思わず呻いた。

「り、リュート……っ」

　ショウ様が震えながらこちらを振り返る。私は痙攣し続けるショウ様の粘膜に耐えられなくなり、無言でショウ様の目尻に口付けると、腰を揺すった。

「あっ！　──ッ!!」

　するとショウ様はいとも容易くまた絶頂する。私が与える刺激が、そこまでの快感を生んでいるかと思うと……やはりショウ様は超絶可愛らしい。

「ショウ様……気持ちいいですか？」

　私は弾む息の中そう問いかけると、ショウ様はこくこくと頷いた。ああ、まだ軽く揺さぶっているだけなのに、私も達してしまいそうです。

　そう考えたら急に視界が霞んだ。身体の中のマグマがとぐろを巻いてせり上がってくる感覚に、私はまだダメだと動きを止める。

「……っ、う……っ」

　私はショウ様を強く抱きしめ、ショウ様の熱い後頭部に額を押し付けた。何とか波をやり過ごそうと、息を詰める。

　良かった、どうやら波は過ぎたようです。

「リュート……？」

　はあはあと、息を切らしたショウ様が、こちらを心配そうに振り向いた。赤く色付いた頬が可愛らしいなと思ったら、またショウ様から漂う香りが強くなる。

　ショウ様が微笑んだ。

「いいよリュート、いっぱいしよ？」
「……っ、ショウ様。私も一応男としてのプライドはあるんですよ？　って、うう、締め付けないでください……っ」

　さすが淫魔のショウ様。私がどのような状態なのか、察していらっしゃる様子。柔らかな尻を動かし私の腰に押し付け、絶頂を促してきました。

「あっ、リュートっ、気持ちいい……？」

　不思議なことに、先程まではショウ様が悶えていたはず。なのに立場が逆転してしまった。私は情けなくも呻き声を上げ、やってくる快感の波を悶えて耐えるしかありません。

「……っ、ダメですショウ様っ、もう……っ」

　私がそう呻くと、ショウ様の中がきゅん、と私を締め付ける。どこまでも奥へと吸い込まれそうな感覚に、クラクラしてついに熱を放ってしまった。

「んん……っ」

　ショウ様も背中を反らして震えている。私の精を一滴も零すまいと、ショウ様の後ろはどんどん私を吸い上げ、思わず声を上げた。

「ああっ、ショウ様、そんなに出ませんってば……っ」
「だって、リュートの……熱くて気持ちいい……っ」

　そう言って、ショウ様はまた軽くイッたようだ。ぱたたっとテラスの床に、液体が落ちる音がする。

「……ショウ様……すみません、あまりもたなくて……」

　少し落ち着いて、息切れしながらそう言うと、私はそっとショウ様の中から出る。すると、私が放った熱が、とろりとショウ様の太腿を伝って落ちた。

「リュート……」

　ショウ様が振り返って、私の首にぶら下がるように抱きつく。ショウ様の香りに誘われて、愛らしい唇に吸い付くと、唇が開いたのでそのまま口内を舐った。

「あ……っ」

　収まらない熱に従って深い口付けを続けていると、ショウ様の膝がかくん、と落ちた。慌てて腰を支えて顔を見ると、大きな瞳がうっとりと細められている。

「……本当に、貴方は可愛らしい」
「ん……」
「このぷるぷるの唇も、漆黒の髪と瞳も、吸い付くようなお肌も、全部愛おしいです」

　私は頬を撫でてそう言うと、ショウ様の唇が不満げに尖った。

「……見た目だけ？」
「いいえ。気まぐれで強引なところも、愛していますよ」
「それ褒めてるの？」

　まだ不満そうに口を尖らせたまま、ショウ様はまた口付けをねだってくる。私はショウ様の髪を撫でながら言った。

「ショウ様、ご自分で仰ったじゃないですか。私は自分から想いを伝えることはしないって。だから、それくらいが丁度いいんですよ」
「でも、さっきから『愛らしい』とか言ってくれてる」
「そこはほら……そういう雰囲気ですから……」

　誤魔化すように言った私を、ショウ様は咎めるつもりはないようだ。ニッコリと笑ったその顔は、やはり私の胸を心地よく締め付ける。そして愛らしいご主人様は、また甘い声で言うのだ。

「リュート、もう一回……」
「……ええ。お望み通りに」

　先程から萎えない私の熱と、絶えず鼻をくすぐるショウ様の甘い香り。二人が考えているのは、互いのことと、この熱のことだけ。気が済むまで愛し合い、笑い、泣き、これ以上ない幸せを噛み締める。

　──今夜、ただショウ様が想いを告げただけでは、私は頷かなかったでしょう。ショウ様のおそばにいてもいい最大の言い訳を、ショウ様から頂いたことに感謝です。

「リュート、幸せにするからね」

　心ゆくまで愛し合ったあと、狭い一つの布団に抱き合って入った時、ショウ様はそんなことを仰った。ショウ様はご自分が妻になる、と笑っていましたが、……何とも頼もしい奥様だ。

　その時のショウ様はどこか大人びて見え、少しドキリとしたことは内緒です。この旅行を手配した、トルンにも感謝をしなければいけませんね。