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温かい何かに包まれて、櫂斗はその心地良さにもう一度眠ってしまいたいと思った。しかし、自分以外の寝息が聞こえて、まさか、と目を開ける。

目の前には、眠っている亮介の顔があった。

(眼鏡が無い亮介、初めて見た)

やっぱり顔が整っているからか、眼鏡が無くてもいい顔をしている。目を閉じているのも珍しくて、間近でじっと見つめてしまった。

しばらくみつめて、何してるんだ、と恥ずかしくなり起きようとするけれど、亮介にがっちりホールドされていて動けない。温かかったのは、亮介の温もりだったらしい。

どうしよう、と櫂斗が視線を巡らせていると、起きたか、と亮介の声がする。間近にあった顔の目が、開いていた。

恥ずかしくて視線を逸らすと、体調はどうだ? と聞かれる。そう言えば、中出しされたんだった、と思い出すと下腹に違和感が出てきた。

「ん、少しお腹がゴロゴロしてる……」

「だろうな。ホント、お前すぐに動けなくなるから、あとの処理も面倒ったらありゃしない。熱は……無いな」

亮介は櫂斗のおでこに手のひらを当てて確かめる。

そういえば、櫂斗は服を着ているし、ベッドに寝ている。亮介がここまで運んでくれたのだと思うと、ありがたいやら情けないやらでまた恥ずかしくなった。

「……っ、ちょっと?」

櫂斗を抱きしめていた腕が、お尻に下りてきて指先で撫でられる。ビクビクと身体を震わせ亮介を見ると、彼は楽しそうに笑っていた。

「ホントお前、いい反応するよな」

「か、からかうなよ……ちょ、んんっ」

櫂斗の身体が熱くなっていく。亮介の手が前に回って股間を撫でられる。

「もうたってるのな。ホント櫂斗は快楽に弱いんだから……」

そう言って、亮介は下着の中に手を入れてくる。呆れた声とは裏腹に、亮介は笑いながらそこを指先だけで触れてくる。ヒクヒクと身体を震わせると、亮介は先端を親指で擦ってくる。

「んんっ、……あっ」

「ここ好きだろ?」

櫂斗は首を横に振る。嘘だ、と刺激を強くされ、櫂斗は堪らず顔を顰めて声を上げた。

「朝から、なに、やってんだよっ」

上がった息の合間にそう言うと、「何ってナニだよ」と身も蓋もない返答がくる。

「ってか、すごいガマン汁出てるけど? そんなに良いのか?」

しごいてやる、と櫂斗のモノを握られ、櫂斗はビクッとなって亮介の肩の辺りの服を掴んだ。戸惑いと気持ちいいのとで、櫂斗は顔を顰める。

「あー……ホントいい表情するよな」

どんな表情だよ、と櫂斗は思うけれど、やってくる快感の波に亮介を睨むことさえままならない。

櫂斗は首を振った。

「ふ、服汚れるから……っ」

「今更だろ、これだけ濡らしてるんだから」

確かに、先走りで下着も結構濡れてしまっている。けれど、下着をはいたまま射精するのは抵抗があった。

ゾクゾクと背中に何かが這い上がる感覚に、ヤバいヤバいと櫂斗は慌てる。頭がボーッとしてきて、イク事しか考えられなくなる。

「ちょ、ホントに……イきそうだから……っ」

「良いよ、イきな」

亮介はそう言って、櫂斗をしごくスピードを上げた。櫂斗はビクビクと身体を震わせ、声を上げる。

「ちょっ、ホントにだめだってっ……ああっ」

櫂斗が限界だと声を上げたところで、亮介は手を離す。イキそうでイケなかった身体はビクビクと大きく震えた。

「櫂斗、まさか昨日の一回で、俺が満足したとでも思ってるのか?」

起き上がった亮介は、布団を剥いでベッドの下に落とすと、櫂斗の上にのしかかってくる。

「え、……ちょ、オレお腹が……」

本調子じゃない、と言いかけた櫂斗は、首を舐められ肩を竦めた。自業自得だろ、と亮介は櫂斗の服を脱がしにかかり、あっという間に全裸にされた。

(そうだった、コイツ脱がすの早いんだったっ)

「おま、……何でそんなに脱がすの早いんだ……っ」

「……さぁ、何でだろうな?」

「んんんっ」

亮介は答えず、彼に乳首と下半身を同時に責められ、櫂斗は反論できずに悶える。

「櫂斗が素直になったら、教えてやらないでもないぞ」

「す、素直って何だよ……っ、ああっ」

現に今も素直じゃないじゃないか、と言われ、櫂斗はドキッとした。記憶を失っている時は、別人のように素直だったのにな、と櫂斗のモノを口に含まれる。

「あっ! ……っ、だめそれはっ」

温かい粘膜に包まれて、意識が遠のきそうな程気持ちよくてクラクラした。そのまま口でしごかれ、乳首への愛撫も忘れずにされ、櫂斗は再び射精感に悶える。

「あっ、イク! イク……っ!」

しかし、またしてもあと少しというところで、亮介は口を離してしまった。ガクガクと身体が震え、イケないもどかしさに櫂斗は興奮する。

「櫂斗」

亮介はゆるゆると櫂斗をしごきながら、耳元で息を吹き込むように言った。

「俺のも触ってみるか?」

櫂斗はその声と内容にゾクゾクしながらも、亮介の股間に手を伸ばす。服の上からでも分かるほど、そこはしっかりと硬さを保っていて、思わずすごい、と感想を漏らしてしまった。

「これが…………で櫂斗の……を……」

「ひ……っ、ん……っ」

亮介が耳元で再び喋り始めたと思ったら、淫語のオンパレードで櫂斗は悶えた。想像してみろ、と言われるまでもなく、櫂斗はそれで妄想が爆発して暴発しそうだ。

「楽しいな、櫂斗」

耳元で亮介が笑う。櫂斗はフルフルと首を横に振った。

「もうだめ……もう、イかせて……」

「まだだぞ。それで櫂斗の……が……」

「……っ! あっ、……んんんんーっ!」

ビクビクと櫂斗の身体が震える。その様子をニヤニヤしながら楽しそうに亮介は眺め、言葉でイけるとか上級者だぞ、と耳元から口を離した。櫂斗は下半身を見ると射精はしておらず、亮介はまだそこをゆっくりさすっているだけだ。

「もう無理……お願い……」

「イキたい?」

亮介の問いに櫂斗は頷くと、また彼は耳元でそっと囁いた。櫂斗は驚き、そのためにこんな回りくどい事をしたのか、と顔が熱くなる。

「……亮介……」

名前を呼ぶと、彼は満足そうに笑い、キスを一つくれた。優しくしてやる、とズボンを下着ごと下ろした亮介は、櫂斗の両頬を両手で包んだ。

「本当に……お前は可愛いな」

「……っあ!」

亮介が櫂斗の中に入ってくる。彼の息が上がったのを感じ、櫂斗はそれにも興奮した。ゆるゆると奥を突かれ、もどかしさに櫂斗は悶える。思わず亮介の身体に手足で抱きついてしまった。

「だめ、だめ……っ、イッちゃ、う、んんん……っ!」

抱きついたことでもっと奥まで入るようになり、櫂斗は緩やかな刺激でもイッてしまう。暖房が入っていない部屋なのに熱くて、額にじわりと汗が浮かぶのを感じた。何度も絶頂を迎えてもう身体は疲れて辛いはずなのに、もっともっとと櫂斗は亮介から与えられる快感を求める。

「ゆっくり責めてやるよ櫂斗……焦れったいの、好きだろ?」

それなのに亮介はそんなことを言って意地悪をする。けれどそれが嫌じゃないから厄介だ。でも言葉は、裏腹なものが出てくる。

「嫌っ、おかしく、なっちゃう……っ」

そして亮介は、それを分かった上で責めてくるのだ。

「いいよ、おかしくなれよ。……全部受け入れてやるから」

櫂斗はその言葉で涙腺が崩壊した。身近な人に全て否定されてきた人生を、亮介はそれごと受け入れてくれる。櫂斗はそれが嬉しくて、改めて亮介に抱きついた。

「亮介……っ、ああっ、……すき……っ!」

泣きながら、喘ぎながら、櫂斗はぐしゃぐしゃの顔で告げると、亮介はキスをくれる。そして眉を下げて笑った。

「……やっと素直になったな」

櫂斗はその声が、本当に嬉しそうに聞こえて後ろがキュッと締まるのを感じる。亮介はそれに触発されたのか、動きを早くした。

自分には、何もかもを受け入れてくれる人がいる。そう思うだけで、前向きに生きてみようと思うなんて、恋愛を諦めていた櫂斗は知る由もなかった。悪くないと思う。

その後、亮介の気が済むまでたっぷり付き合わされ、やはり最後は気を失うように、櫂斗は眠ってしまった。
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