【完結】もてあそびながら愛してくれ

大竹あやめ

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(やっぱり亮介……キスも上手い……)

徐々に意識がふわふわとしてくるキスに、櫂斗は夢中になった。深くなっていくそれに、櫂斗は思わず亮介の肩に両腕を回す。

「んっ……」

不意に、下着の上にあった指が乳首を引っ掻いた。思わず身体をビクつかせると、じわりと下半身に熱が溜まっていくのが分かる。

それをきっかけに、その指は優しくそこをカリカリと引っ掻いてきた。それなのに櫂斗の身体は大きく反応し、ビクビクと腰が跳ねる。

亮介がフッと笑う。

「相変わらず敏感だな」

亮介の声は優しかった。にも関わらず、櫂斗はその声にも反応してしまって、思わず声を上げた。

「んんっ、そ、そうなの……?」

亮介はその問いには答えず、今度はズボンの上から股間を撫でる。櫂斗はゾクゾクして甘い吐息と共に天井を仰ぐと、すぐにその手は下着の中に入ってきた。既に形を変えていたそこをそっと撫でられ、優しく袋を握られると、櫂斗の身体もピクンと反応する。

「あ……亮介……っ」

気持ちよくて、櫂斗は切なげな声で亮介を呼ぶと、気持ちいいのか? と彼はじっと櫂斗を見ながら聞いてくる。彼は反応を見ながらしているようで、その視線にも櫂斗は興奮してしまい、ゾクゾクが止まらない。

「……脱がせていい?」

寒いから、太ももまで下ろすだけな、と亮介は櫂斗のズボンと下着を下ろす。再び近付いてきた亮介とキスをすると、緩やかに股間を扱かれた。焦れったいそれに、櫂斗は無意識に腰を動かす。キスもまた深くなり、お互いの舌を絡ませると、櫂斗の身体はビクビクと悦んだ。

「亮介……っ、ヤバいもうイキたい……」

「うん、そんな顔してる」

久しぶりだから反応もすごいな、と嬉しそうに言われて櫂斗はそれにも悶えた。そして、ある感覚が出てきた事に戸惑う。

(な、何で、後ろが疼くんだろ……?)

そしてそれは大きくなっていき、射精よりもそっちでイキたいと思ってしまうのだ。

(おれって……こっちもアリだったのかな?)

そう思ったら、我慢できない程にその気持ちが膨らんでしまった。思わず亮介を呼んで、手を止めさせてしまう。

「どうした?」

亮介は櫂斗の様子が気になったらしい、すぐに手を止め、顔を覗き込んでくる。その顔が、少し興奮して息が上がっていると分かると、櫂斗の中で何かが切れた。

「り、亮介、おれ……こっちもアリだったのかな?」

そう言って亮介の手を取り、腰を浮かせて後ろを触らせる。

「……っ、櫂斗、そっちは熱が下がってからに……」

本調子じゃないんだから、と咎められ、けれど櫂斗はイヤイヤと首を横に振った。亮介が否定しないということは、櫂斗は多分後ろもイケるらしい。

「指でいい……指だけでいいから。お願い……っ」

「だってお前……しばらくここも触ってないだろ」

指だけとはいえ、キツいに決まってる、と亮介は櫂斗を宥める。けれど櫂斗は疼く後ろをどうにかしたくて、ズボンと下着を自ら全て取り去った。

「ちょ、櫂斗……っ」

櫂斗はソファーに後ろが見えるよう足を開いて座り、亮介の手を取る。指だけな、と何故か怒ったように言った亮介は、先程より少し息が上がって苦しそうだった。

「……あ……っ」

指が、ゆっくりと入ってくる。不思議とそこはすんなり入り、そのビジュアルに櫂斗の膝がガクガクと震えた。

「……大丈夫そうどころか、イキそうじゃないか。久しぶりなのに……」

「だってっ、ここ、気持ちいい……っ、ああっ」

亮介の指が動く。櫂斗の良い所を擦られ、悶絶した。

「ああだめ、イク、イク……っ、……っあああ!」

身体が小刻みに震え、ある瞬間に硬直する。声にならない絶頂に襲われ、身体が弛緩する。覚えのある感覚に櫂斗の身体は悦び、もっともっとと指を飲み込んだ。

「櫂斗、精子も出たからこの辺にしとけ」

そう言って、亮介は指を抜こうとするけれど、櫂斗は力を入れてそれを阻止する。

「嫌っ、亮介っ、……もっと! おれ、亮介が欲しいっ」

「櫂斗……」

亮介は動きを止める。櫂斗は亮介と視線を合わせると、亮介の顔が近付いてきた。

チュッと軽いキスを繰り返され、櫂斗の意識がキスに向いた頃だった。急に指を動かされ、櫂斗は声を上げる。

「ああっ、あっ、またイッちゃう! イッちゃうイッちゃう……っ!」

ガクガクと身体が震える。息を詰めてそれに耐えると、戻ってきた視界にじっと櫂斗を見つめる亮介がいた。

『もうやめて! 見ないでくれ!』

ハッと櫂斗は息を飲む。すると脳裏に忘れていたはずの記憶が一気に押し寄せてきた。思わず顔を腕で庇うと、異変に気づいた亮介が声をかけてくる。

「櫂斗?」

櫂斗は頭を抱える。始まりは自ら痴漢されていたところを邪魔され、それをネタに脅された。それから亮介にグズグズの身体にされ、好きだと気付いた時には亮介は抱いてくれなくて。

「あ……あ、……嫌だ、やめろ……っ」

勝手に涙が溢れ、それを止めようと目を閉じると、上に乗ったショーマとそれを眺める亮介の姿が浮かんだ。

(思い出した……オレあの時……)

亮介以外の男に犯されて、それを亮介に見られて感じていた。酷いことをされているのに感じている自分が嫌で、もうこんな感情は捨ててしまいたいと思ったのに。

「櫂斗、大丈夫か?」

亮介が後ろから指を抜く。櫂斗は感情の赴くままに言葉を亮介にぶつけた。

「何で……オレ生きてる?」

はぁはぁと荒い息をしながら櫂斗は呟いた。ハッと亮介が息を飲んだ音がする。櫂斗は顔を腕で隠したまま続けた。

「どうしてまともな恋愛できない? 親一人満足させてあげられず、変態プレイでしか感じられないオレは、社会の迷惑でしかないのに……」

ボロボロと泣く櫂斗の腕を、亮介はそっとどかした。

「櫂斗……櫂斗、ごめん……お前はそもそも追い詰めちゃいけない人だった」

「今更優しくすんなよ!」

櫂斗は泣きながら亮介を睨む。痛々しい顔で櫂斗を見る亮介は、苦しそうだ。

「そうだよ……酷くされても感じてたよ。ショーマと三人でホテル行った時もな!」

涙が止まらない。袖で拭ってもキリがないので、拭うのを諦めた。

「こんなオレでも好きだと言ってくれたの、アンタだけだ……だけど、オレはアンタが信じられないっ」

あの時抱いてくれなかったくせに。櫂斗が記憶を失くしてから告白してきて、都合のいい奴だと櫂斗は亮介を責める。

「それはもっともだ櫂斗。だから、せめてお前が完全に社会復帰できるまで……そしたら俺は消えるから」

それを聞いて、櫂斗はフルフルと首を振る。亮介を信じたい気持ちと、信じられない気持ちがないまぜになって、櫂斗でさえ分からない。

「もうこんなの嫌だ……っ、何も考えたくなかったのに、何で……っ」

死なせてくれなかったんだ、と櫂斗は呟くと、亮介は櫂斗をギュッと抱きしめる。

「櫂斗っ、ダメだ、それだけは……っ」

頼むから生きててくれ。亮介は櫂斗の耳元で切なげに呟いた。

櫂斗は嗤う。

「オレが死んだら、アンタは後味悪いもんな」

「違う、そういうことじゃない……っ」

亮介は櫂斗の頬を両手で包み、しっかりと目線を合わせてきた。強い眼差しにドキリとして、視線が外せない。

「好きだからに決まってるだろ。お前の環境を考えたら仕方がないかもしれないけれど、自己肯定感の低さからくる卑屈さは嫌いだ」

「……っ、う……っ」

櫂斗はますます涙が出てくる。ずっと許されてはいけないと思って生きて来たんだから、それは仕方のない事だ。それでも、少しでも他人に認められようと、教職を目指したけれど、中途半端になってしまっている。オレの人生、全部中途半端だ、と心の中で自嘲した。

「じゃあいいだろもうっ。オレの事なんて放っておけよっ」

「だから、卑屈になるなって言ってるだろっ」

亮介は珍しくイラついた声を出したかと思ったら、唇を塞がれた。感情をぶつけるようなキスに櫂斗はこれでもかと涙が溢れてくる。

(何でオレなんかを……)

櫂斗はそう思いながら、亮介のキスを受け入れた。

男のくせに男が好きで、先生のくせに変態プレイが好きで、いい歳しているくせに、恋愛もまともにした事がなくて。こんな自分の、どこが良いと亮介は言うのか?

「じゃあもう全部言ってやるよ、最初は俺の一目惚れだったって……俺がSっ気あるからか、そういう奴嗅ぎ分けるのは得意だからな」

「え……?」

櫂斗の心の中を読んだかのように、亮介は話し出す。

櫂斗は亮介を見た。一目惚れってどういう事だ、と驚いて、じゃあ今まで、櫂斗の事が好きだったのにあんな事をしたのか、と再び亮介が信じられなくなる。

「すごく綺麗で可愛いと思ったんだ。痴漢から助けたと思ったのに逃がしたから、絶望した」

そしたら塾ですぐ会えて、これはなにがなんでも繋ぎ止めておかないと、と思って痴漢をネタにした、と亮介は言う。

「そんな……だって……っ、じゃあ別に脅さなくたって……っ」

「告白したとして、櫂斗は普通に受け入れたか?」

違うだろ、と言われて櫂斗は黙った。脅しがあったからこそ櫂斗は感じたし、それを言い訳に亮介について行った。

「欲しいって言ったら誰が入れてやるかって……っ」

櫂斗は思いつくまま亮介の言動に裏がないか確かめる。信じられない、あんな事をしておいて、記憶が失くなったら優しくするなんて。都合が良いし、どっちが本当の亮介なのか分からない。

「お前のプレイはある意味自傷行為だからな……そんなプレイ、俺は興味無い」

それに、と亮介は続ける。

「身体は喜んでるのに、口は素直じゃない。だんだんお前の視線が熱を帯びていったのは分かってたし?」

だから余計に、告白させてから抱いてやろうと思った、と亮介は自分のズボンを下ろすと、いきり立ったモノを後ろにあてがった。

「え、なんでもうたって……っ」

「お前が泣くからだ」

櫂斗はそれでたつとか、ホントドSだなと思ったけれど、口には出せず、すぐに来た圧迫感に息を詰める。

もう、何が何だか分からない。

「う、あ……っ」

亮介は全部櫂斗の中に入れると、遠慮なしに奥を突いてきた。

「でも櫂斗……俺も意地を張ってしまってやり過ぎた。……ごめんな」

亮介の声は優しい。こんなんで許させると思ってないけど、と初めて繋がった時と変わらず、寸分違わずいい所を擦ってくる亮介に、櫂斗はなすすべもなく悶える。

「あっ、あっ、……だめ、イッちゃう……っ」

「ダメじゃないだろ? ずっと欲しそうにしてたくせに」

ここが良いんだろ? と奥を突かれ、櫂斗は声も上げられず絶頂に達した。

チカチカした視界が戻ってくると、亮介は動きを止めて櫂斗をじっと見ている。

「あ……」

櫂斗がその強い視線に気付いた時、カーッと全身が熱くなった。萎えていた櫂斗の分身がまた頭をもたげ、ヒクヒクとして硬くなっていく。

「嫌だ……見るな……っ」

「何で? しっかり感じてるだろ」

素直になれ、と言われ、櫂斗は首を振った。これは違う、と言うと腰を揺すられ快感に顔を歪ませた。しかしそれも僅かな間で、すぐに亮介は止めてしまう。

「櫂斗、俺はもう、後悔したくないから意地を張るのをやめたぞ。……どうして欲しい?」

「んんんっ」

今度はお前の番だ、と亮介は動かずに待っている。櫂斗は亮介に動いて欲しくて腰を動かした。けれど、思うような快感は得られず、もどかしさに身体をくねらせた。

「口で言わないと分からない」

焦らされているのが良くて、櫂斗は口を両手で塞いだ。その間にも、櫂斗の股間は爆発しそうなくらい硬くなり、ヒクヒクと震えてだらしなく透明な液体を溢れさせている。

「お尻が良いんだろ? こっちでイク方が好きなんだろ?」

亮介の問いに、櫂斗はコクコクと頷いた。そして、櫂斗のその様子を見て、亮介も悦んでいるのが中に入った彼のモノがヒクヒクするので分かる。

「んっ、だめ……っ、このままイッちゃいそう……っ」

「良いよイケよ。お前が口で言わない限りこのままにしといてやるから」

「……っ、あああ!」

櫂斗は本当にそのままイッてしまった。詰めた息を吐き出すと、焦らしと言葉でもイケるのな、と亮介は笑う。しかし前と違うのは、櫂斗を蔑む言葉を使わなくなった事だ。彼なりに気を遣っているようだと思ったら、またボロボロと涙が出てきた。

もう、自分も意地を張るのをやめよう。最初から、亮介のことはかっこいいと思ってたじゃないか、と櫂斗は思う。確かにやり過ぎた感はあるけれど、それでも櫂斗は感じていたし、そんな櫂斗を見ても、好きだと言ってくれる亮介を信じてみたい。

「う……っ」

「櫂斗」

優しく亮介に促され、櫂斗は望みを言う。

「う、動いて……奥、いっぱい突いて、いっぱいイカせて……っ」

「ん、よく言えたな」

ご褒美だ、と亮介は腰を動かした。櫂斗は一気に意識が飛び、何度目かの絶頂を迎える。櫂斗は快感で何が何だか分からなくなり、おかしくなりそう、と叫びながら何度も絶頂した。

もう無理、と思った頃に、亮介はいつかと同じようにゴムを付けてないと呟き、困惑する櫂斗の中に精を放つ。

オレが女なら、これで妊娠できるかも、とか思ったりするんだろうか、ととんでもない事を思いながら、櫂斗は意識を失った。
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