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二人で稽古場に戻ると、月成から主人公の配役の発表があり、それに関する演出の変更も伝えられ、すぐに通し練習が始まった。
英に課せられた条件は一つ。今まで付けた演技を忘れ、新たに自分で動きをつけること。
セリフ一つ言うのにも細かい動きが付けられていたため、英は戸惑った。しかし、月成の指導は変わらず容赦ない。
「つまんねぇよ! 動きの停止は感情の停止! お前の仕事は感情を見せることだろ!」
監督の怒号が飛ぶ中、しかし英は、以前よりずっと動きやすくなっていることに気付く。
英が思い通り動き、それを見た周りのキャストが合わせてくれているのだ。そして、それを見て英も、反応する。
(そっか、演技ってこういうことだ)
英は、今までの演技でこんなに楽しく思ったことはないと感じた。一人では決してできない、誰一人欠けても完成しない作品が出来上がっていくのを肌で感じ、身震いする。
そしてあっという間に稽古は終わり、大筋はこれで通すこととなって、解散する。
「ちょっと! ぶつかってきたんだから謝るくらいしたらどーなの!?」
入口付近が混雑していたらしい、小井出が大声を上げて去っていく。
稽古中はさすがの演技力でカバーしていたが、彼も精神的ショックは大きいはずだ。
「あーあ、あいつフォローしてやんなきゃなぁ」
笹井がストレッチをしながらぼやく。英は考える前に彼を追いかけていた。
「小井出さん!」
「うるさい、声かけんな!」
廊下で捕まえようと思ったが、小井出はやはり拒否し、走り去っていく。泣きそうな顔が一瞬見えたが、何て声を掛けていいか分からなかった。
英に課せられた条件は一つ。今まで付けた演技を忘れ、新たに自分で動きをつけること。
セリフ一つ言うのにも細かい動きが付けられていたため、英は戸惑った。しかし、月成の指導は変わらず容赦ない。
「つまんねぇよ! 動きの停止は感情の停止! お前の仕事は感情を見せることだろ!」
監督の怒号が飛ぶ中、しかし英は、以前よりずっと動きやすくなっていることに気付く。
英が思い通り動き、それを見た周りのキャストが合わせてくれているのだ。そして、それを見て英も、反応する。
(そっか、演技ってこういうことだ)
英は、今までの演技でこんなに楽しく思ったことはないと感じた。一人では決してできない、誰一人欠けても完成しない作品が出来上がっていくのを肌で感じ、身震いする。
そしてあっという間に稽古は終わり、大筋はこれで通すこととなって、解散する。
「ちょっと! ぶつかってきたんだから謝るくらいしたらどーなの!?」
入口付近が混雑していたらしい、小井出が大声を上げて去っていく。
稽古中はさすがの演技力でカバーしていたが、彼も精神的ショックは大きいはずだ。
「あーあ、あいつフォローしてやんなきゃなぁ」
笹井がストレッチをしながらぼやく。英は考える前に彼を追いかけていた。
「小井出さん!」
「うるさい、声かけんな!」
廊下で捕まえようと思ったが、小井出はやはり拒否し、走り去っていく。泣きそうな顔が一瞬見えたが、何て声を掛けていいか分からなかった。
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