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第十四話
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「なぁ緋嶺! こっち見て! 限定のお菓子があるぞ!」
「緋嶺! こっちは可愛いストラップがあるよ!」
ホテルをチェックアウトし、キョンキョンを居るべき所へ帰したあと、目的の国際通りに到着すると、緋嶺は早速喜屋武ときびこに両腕を掴まれ引っ張られていく。どうしてこんなに懐かれたのか謎だけれど、二人とも楽しそうだし、鷹使は無言で付いてくるから良しとしよう。
お土産屋をハシゴしつつ、ブルーシールアイスクリームで紅芋や塩ちんすこう、シークワーサーのフレーバーアイスを食べ、限定のお菓子を買い漁り、ソーキそばを頂く。もちろんシーサーの置物も手に入れた。ありがたくもそこでのお代は全てきびこたちに出してもらい(お金の出どころは謎だが)、存分に楽しませてもらった。
その後空港まで見送りしてくれた喜屋武ときびこはずっと緋嶺にべったりで、いよいよお別れとなった時には、二人とも涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら見送っていた。
「そんなに泣くなよ。また遊びに来るからさ」
「うっ、うっ、……だって……っ」
鷹使は、その土地特有の守り神は土地に縛られていることが多いと言っていたが、シーサーも例外ではないのだろう。別れが辛いのに、行かないでと言わないところがいじらしい。
「またここに来た時に、今度は沖縄のもっと良い所、教えてくれ」
約束な、と緋嶺はかがんで小指を出す。するとシーサーの番は今朝と同じように顔を見合わせた。緋嶺はさすがに子供扱いし過ぎたかな、と手を引っ込めようとすると、喜屋武がその指に自らの小指を絡ませる。
「緋嶺が生きてる間に、絶対もう一度来いよ?」
「ああ、分かった」
喜屋武は涙で濡れた頬もそのままに、緋嶺を真っ直ぐ見据えた。緋嶺は微笑んで指を離す。そしてもう一度、喜屋武ときびこは緋嶺に抱きついて、ギュッと一度だけ力を込めて、離れた。彼らには笑顔が戻っていて、緋嶺は安心する。
「じゃあね、パパ」
「……っ、パパ!?」
どういうことだと聞き返すも、シーサーの番はサッと姿を消してしまった。緋嶺は固まったまま視線だけ動かして鷹使を見ると、彼は肩を竦める。
「……易々と約束をするからだ」
「約束って……また来るって話か!? いやあの流れはそうなるだろ!?」
緋嶺は歩き出した鷹使を追いかけた。
「鬼の自覚がないからそうなる。人間と同じ感覚でいると、いつか痛い目みるぞ」
確かに、指切りげんまんをしようとしたとき、喜屋武たちは顔を見合わせていた。それが、今後必ず守られるべき約束事を、本当にしてもいいのか、というお互いの確認だったのだろうと思うと、本当に安易だったなとは思うけれど。
緋嶺は苦笑する。今までもそうだったけれど、いつの間にか味方になってくれる人ならざるものも、何だかんだ言って優しいのだな、と。
「本当に人ならざるもの全部を、牛耳ることができるかも?」
「馬鹿言え。手出し無用だと宣言しているじゃないか」
それに、そう簡単にいくか、と鷹使に睨まれてしまった。緋嶺は肩を竦める。
「たまたま会った奴が、好意的だっただけだ」
確かに、と緋嶺は過去を振り返った。鬼と龍の長はこちらを攻撃してきたからだ。
「俺が生きている間は、お前に手出しはさせん」
鷹使は緋嶺を振り返り、真っ直ぐ見つめてくる。その琥珀の瞳に、並々ならぬ決意と情熱、愛が感じ取れ、緋嶺は思わず真面目に頷いた。
「俺も、誰にも鷹使を傷付けさせないよ」
緋嶺の言葉に鷹使はふっと笑うと、行くぞ、と先へ進む。緋嶺も再びその後を追い、横に並ぶとそっと呟いた。
「鷹使、好きだ」
「……分かってる」
二人の間に、覚えのある熱と緊張感が現れる。
どうか家に帰るまで、この熱が爆発しませんように、と緋嶺は祈った。
「緋嶺! こっちは可愛いストラップがあるよ!」
ホテルをチェックアウトし、キョンキョンを居るべき所へ帰したあと、目的の国際通りに到着すると、緋嶺は早速喜屋武ときびこに両腕を掴まれ引っ張られていく。どうしてこんなに懐かれたのか謎だけれど、二人とも楽しそうだし、鷹使は無言で付いてくるから良しとしよう。
お土産屋をハシゴしつつ、ブルーシールアイスクリームで紅芋や塩ちんすこう、シークワーサーのフレーバーアイスを食べ、限定のお菓子を買い漁り、ソーキそばを頂く。もちろんシーサーの置物も手に入れた。ありがたくもそこでのお代は全てきびこたちに出してもらい(お金の出どころは謎だが)、存分に楽しませてもらった。
その後空港まで見送りしてくれた喜屋武ときびこはずっと緋嶺にべったりで、いよいよお別れとなった時には、二人とも涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら見送っていた。
「そんなに泣くなよ。また遊びに来るからさ」
「うっ、うっ、……だって……っ」
鷹使は、その土地特有の守り神は土地に縛られていることが多いと言っていたが、シーサーも例外ではないのだろう。別れが辛いのに、行かないでと言わないところがいじらしい。
「またここに来た時に、今度は沖縄のもっと良い所、教えてくれ」
約束な、と緋嶺はかがんで小指を出す。するとシーサーの番は今朝と同じように顔を見合わせた。緋嶺はさすがに子供扱いし過ぎたかな、と手を引っ込めようとすると、喜屋武がその指に自らの小指を絡ませる。
「緋嶺が生きてる間に、絶対もう一度来いよ?」
「ああ、分かった」
喜屋武は涙で濡れた頬もそのままに、緋嶺を真っ直ぐ見据えた。緋嶺は微笑んで指を離す。そしてもう一度、喜屋武ときびこは緋嶺に抱きついて、ギュッと一度だけ力を込めて、離れた。彼らには笑顔が戻っていて、緋嶺は安心する。
「じゃあね、パパ」
「……っ、パパ!?」
どういうことだと聞き返すも、シーサーの番はサッと姿を消してしまった。緋嶺は固まったまま視線だけ動かして鷹使を見ると、彼は肩を竦める。
「……易々と約束をするからだ」
「約束って……また来るって話か!? いやあの流れはそうなるだろ!?」
緋嶺は歩き出した鷹使を追いかけた。
「鬼の自覚がないからそうなる。人間と同じ感覚でいると、いつか痛い目みるぞ」
確かに、指切りげんまんをしようとしたとき、喜屋武たちは顔を見合わせていた。それが、今後必ず守られるべき約束事を、本当にしてもいいのか、というお互いの確認だったのだろうと思うと、本当に安易だったなとは思うけれど。
緋嶺は苦笑する。今までもそうだったけれど、いつの間にか味方になってくれる人ならざるものも、何だかんだ言って優しいのだな、と。
「本当に人ならざるもの全部を、牛耳ることができるかも?」
「馬鹿言え。手出し無用だと宣言しているじゃないか」
それに、そう簡単にいくか、と鷹使に睨まれてしまった。緋嶺は肩を竦める。
「たまたま会った奴が、好意的だっただけだ」
確かに、と緋嶺は過去を振り返った。鬼と龍の長はこちらを攻撃してきたからだ。
「俺が生きている間は、お前に手出しはさせん」
鷹使は緋嶺を振り返り、真っ直ぐ見つめてくる。その琥珀の瞳に、並々ならぬ決意と情熱、愛が感じ取れ、緋嶺は思わず真面目に頷いた。
「俺も、誰にも鷹使を傷付けさせないよ」
緋嶺の言葉に鷹使はふっと笑うと、行くぞ、と先へ進む。緋嶺も再びその後を追い、横に並ぶとそっと呟いた。
「鷹使、好きだ」
「……分かってる」
二人の間に、覚えのある熱と緊張感が現れる。
どうか家に帰るまで、この熱が爆発しませんように、と緋嶺は祈った。
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