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第十一話
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少し早めの夕食をとって、ホテルに戻った緋嶺一行は、部屋で明日の捜索場所を話し合った。
「明日は国際通りで観光しつつ、昼食を済ませてから飛行機に乗る予定だったが……番の気配は依然遠いままだ」
どうする、と鷹使は喜屋武に尋ねる。喜屋武はすっかり緋嶺が気に入ったらしく、膝の上で思案顔だ。こうしていると、やっぱり何だか親子みたいだな、と緋嶺は思う。
「緋嶺」
喜屋武は振り返って緋嶺を見上げると、思ったより真剣な顔で言った。
「きびこを、呼んでくれ」
「え、良いのか?」
確かに鷹使は、その方法が手っ取り早いと言ったが、同時に命の保証もないと言っていなかったか。
喜屋武は頷く。緋嶺たちが帰ってしまうと、自分の力だけじゃ探し切れない。緋嶺がきびこを殺すとは思えないから、多少の怪我は覚悟する、と。
「……じゃあ、広い所で迎えるか」
鷹使は立ち上がる。喜屋武が緋嶺と契約したので、きびこにも半分契約が適応されると彼は言い、ホテルのビーチに行くことになった。
◇◇
外はすっかり暗くなり、街灯の明かりを頼りにビーチへ下りていく。
夜の海はどこまでも黒く、その黒に自分も飲み込まれそうで、少し怖い。
ビーチの真ん中に着くと、緋嶺は深呼吸をした。鷹使は指輪を使って名前を呼べば、聞こえたら飛ばされて来ると言う。その、飛ばされて来る時に何が起こるか分からない、とのこと。
「呼ぶぞ。いいな?」
緋嶺は喜屋武に確認すると、彼はこくりと頷いた。きびこが飛ばされてくることを想定して、鷹使と喜屋武は少し離れたところで待機だ。
緋嶺は両腕を軽く広げる。ここに飛び込んで来い、と願って名前を呼んだ。
「きびこ、……おいで」
鷹使も喜屋武も静かに見守る。
穏やかな波の音だけが流れた。
緋嶺はしばらく待ってみたけれど、何も変化はない。ダメだったかな、と思ったその時、喜屋武が声を上げる。
「緋嶺! きびこだ!」
「えっ?」
喜屋武が指を差した方を見ると、微かな星空に彗星の如く、遠くで空から降ってくる物体がある。目を凝らすと確かに、喜屋武と同じオレンジの髪の毛と、白いシャツを着ている、きびこのようだ。
しかし、このまま落ちると確実にその先は海だった。緋嶺は反射的に地面を蹴り、バレーボールのレシーブよろしくきびこをキャッチする。
「あ……」
しかし緋嶺は失念していた。このままでは自分も海に落ちる、と。
すると突然、何かに足を掬われ体勢が崩れる。思わずギュッときびこを抱きしめると、ゴウ! と轟音が鳴った。
息ができないほどの爆風にグッと身体を縮こまらせると、ふわりと何かに抱きしめられる。
「まったく……もう少し考えて行動しろ」
「鷹使!」
見ると鷹使が緋嶺を抱きかかえていた。背中には大きな純白の羽が見えて、助けてくれたのだと悟る。海に落ちずに済んだ、と思っていたら、鷹使は重いからすぐ戻る、と言い、緋嶺はきびこを抱える腕に力を込めた。
「きびこ!」
砂浜に戻ると、喜屋武はこちらに走ってきた。きびこは気を失っているらしく、その様子を見て喜屋武は目から大粒の涙を零す。
「気を失っているだけだ、大丈夫だよ」
緋嶺の腕の中で静かに眠るきびこ。その胸がやたら膨らんでいるな、と思ったら、服の中から鳩大の鳥が顔を覗かせた。
「キョンキョンも無事だったか! 良かった!」
喜屋武は今にもきびこに抱きつきそうな勢いだ。ヤンバルクイナのキョンキョンが、きびこの服から出たそうにもがいたので、とりあえず彼らを部屋に連れて帰ることにした。
「明日は国際通りで観光しつつ、昼食を済ませてから飛行機に乗る予定だったが……番の気配は依然遠いままだ」
どうする、と鷹使は喜屋武に尋ねる。喜屋武はすっかり緋嶺が気に入ったらしく、膝の上で思案顔だ。こうしていると、やっぱり何だか親子みたいだな、と緋嶺は思う。
「緋嶺」
喜屋武は振り返って緋嶺を見上げると、思ったより真剣な顔で言った。
「きびこを、呼んでくれ」
「え、良いのか?」
確かに鷹使は、その方法が手っ取り早いと言ったが、同時に命の保証もないと言っていなかったか。
喜屋武は頷く。緋嶺たちが帰ってしまうと、自分の力だけじゃ探し切れない。緋嶺がきびこを殺すとは思えないから、多少の怪我は覚悟する、と。
「……じゃあ、広い所で迎えるか」
鷹使は立ち上がる。喜屋武が緋嶺と契約したので、きびこにも半分契約が適応されると彼は言い、ホテルのビーチに行くことになった。
◇◇
外はすっかり暗くなり、街灯の明かりを頼りにビーチへ下りていく。
夜の海はどこまでも黒く、その黒に自分も飲み込まれそうで、少し怖い。
ビーチの真ん中に着くと、緋嶺は深呼吸をした。鷹使は指輪を使って名前を呼べば、聞こえたら飛ばされて来ると言う。その、飛ばされて来る時に何が起こるか分からない、とのこと。
「呼ぶぞ。いいな?」
緋嶺は喜屋武に確認すると、彼はこくりと頷いた。きびこが飛ばされてくることを想定して、鷹使と喜屋武は少し離れたところで待機だ。
緋嶺は両腕を軽く広げる。ここに飛び込んで来い、と願って名前を呼んだ。
「きびこ、……おいで」
鷹使も喜屋武も静かに見守る。
穏やかな波の音だけが流れた。
緋嶺はしばらく待ってみたけれど、何も変化はない。ダメだったかな、と思ったその時、喜屋武が声を上げる。
「緋嶺! きびこだ!」
「えっ?」
喜屋武が指を差した方を見ると、微かな星空に彗星の如く、遠くで空から降ってくる物体がある。目を凝らすと確かに、喜屋武と同じオレンジの髪の毛と、白いシャツを着ている、きびこのようだ。
しかし、このまま落ちると確実にその先は海だった。緋嶺は反射的に地面を蹴り、バレーボールのレシーブよろしくきびこをキャッチする。
「あ……」
しかし緋嶺は失念していた。このままでは自分も海に落ちる、と。
すると突然、何かに足を掬われ体勢が崩れる。思わずギュッときびこを抱きしめると、ゴウ! と轟音が鳴った。
息ができないほどの爆風にグッと身体を縮こまらせると、ふわりと何かに抱きしめられる。
「まったく……もう少し考えて行動しろ」
「鷹使!」
見ると鷹使が緋嶺を抱きかかえていた。背中には大きな純白の羽が見えて、助けてくれたのだと悟る。海に落ちずに済んだ、と思っていたら、鷹使は重いからすぐ戻る、と言い、緋嶺はきびこを抱える腕に力を込めた。
「きびこ!」
砂浜に戻ると、喜屋武はこちらに走ってきた。きびこは気を失っているらしく、その様子を見て喜屋武は目から大粒の涙を零す。
「気を失っているだけだ、大丈夫だよ」
緋嶺の腕の中で静かに眠るきびこ。その胸がやたら膨らんでいるな、と思ったら、服の中から鳩大の鳥が顔を覗かせた。
「キョンキョンも無事だったか! 良かった!」
喜屋武は今にもきびこに抱きつきそうな勢いだ。ヤンバルクイナのキョンキョンが、きびこの服から出たそうにもがいたので、とりあえず彼らを部屋に連れて帰ることにした。
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