【完結】天使の愛は鬼を喰らう〜後日談1〜

大竹あやめ

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第七話

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 突然のことで予測ができなかった緋嶺は、まともにその攻撃を食らってしまう。

「──ッ! ってぇ!!」

「子供扱いするんじゃない、ヒヨっ子が!」

「はぁ!? どう見たって子供じゃねぇか!」

 緋嶺は痛むおでこをさすりながら叫んだ。しかし少年は緋嶺の言葉を無視し、そんなことより! と緋嶺の胸ぐらを掴む。

「力を貸せ! つがいがいなくなったんだ!」

 すると鷹使は、緋嶺の胸ぐらを掴んだ手をぴしりと叩き落とした。

「俺のだ、勝手に触るな」

「ちょ、鷹使……っ」

「大体、最初から見ていたくせに、なぜ今出てきた?」

「は?」

 緋嶺は鷹使の言葉に思わず聞き返す。彼の口ぶりだと、最初から気付いていたように聞こえるけれど。

「そりゃ、天使と鬼が連れ立って来たら警戒するだろっ。けど、ここに来てイチャイチャしだすし……」

「わー!!」

 緋嶺は慌てて少年の声に被せて叫ぶと、少年は不満そうに口を尖らせた。

「だ、大体、お前は何だ! 何者なんだ!?」

 誤魔化すために緋嶺は話題を変えるけれど、鷹使はため息をついて呆れたように言う。

「……沖縄と言ったらシーサーだろう」

 散々お前も見ていただろうが、と彼は腕を組んだ。

「シーサー!? これが?」

「これとは何だ失礼だなヒヨっ子! それより番がいなくなったんだ! ついでにヤンバルクイナのキョンキョンも!」

 探してくれ、手を貸してくれ、と騒ぐ少年はやはりよく吠える小型犬のようだ。鷹使が観光でもしてるんじゃないか、と言うけれど、ずっと本島にいるのに観光なんかするか、と更に騒ぐ。

「じゃあ知らん。離島の方にでも出て行ったんじゃないか」

 なぜか鷹使はシーサーの少年を突き放すような言い方をする。すると少年は、今度こそ目にいっぱいの涙を溜め始めてしまった。

「頼むよぉ……番に何かあったら、オレ……っ」

 基本情に厚い緋嶺は、それだけでもう絆されてしまう。少年の前にしゃがむと、詳しく話を聞かせてくれ、と彼を見つめた。

「その、番ってのは何だ?」

「シーサーは二体で一つ。今まで見てきたやつもそうだっただろ」

 鷹使の呆れた声。緋嶺は片割れがいなくなっちゃったんだな、と眉を下げた。

「……で? その片割れは何て名前なんだ?」

「名前なんてない」

「それは不便だな。シーサーって呼んだらそこら辺のシーサーみんな振り向くんだろ?」

 探すのに名前も分からないんじゃ、呼びかけることもできない。

「それより! 早く探せよヒヨっ子!」

「だれがヒヨっ子だっ! 俺は緋嶺って名前があるんだ、キャンキャン騒ぐなっ。キャンキャンうるせーからお前、今から喜屋武きゃんな!」

 緋嶺が勢いでそう言った途端、視界の端で鷹使が額を押さえた。どうして呆れているのか、と思うけれど、目の前の少年──もとい、喜屋武が大人しくなったのでよしとする。

「……とりあえず、今日はこれから日が沈む。捜索は明日からでもいいか?」

 鷹使がため息混じりに言うと、喜屋武は頷いて、オレ一人で探せるところまで探してみる、とベランダの柵をひょいっと飛び越えた。

「うわ待て! ここ三階……!」

 緋嶺が慌てて覗き込むけれど、そこにはもう、喜屋武の姿はなかった。


 うるせー奴だったな、と緋嶺はため息をつくと、鷹使も嘆息しただけだった。
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