壊れた世界で君を愛す

西城栞

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彼女は世界に愛されていた

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ともかく、蓮以外に聞いている人がいなかった事が幸いだ。
その晩蓮は、ベッドの上で今日の事について熟考していた。
彼女はどこから自分の能力を知ったのか?
この事を知って彼女は何をするつもりなのか?
いや、前者は取るに足らない
能力持ちはそれが運命のようにバレてしまう。
だから蓮もいつかはこんな事があるだろうと薄々思っていた。
なにより、彼女は人望が厚く、いろいろな情報が集まる 。
そう考えれば能力持ちがバレるのも自然な事だ。
、、、彼女のあの笑顔。
あの笑顔が気になる。
何故あそこで笑ったのか。
理解が出来ない。能力持ちに出会えたことがそんなにうれしいのか。それともお世辞の笑いだろうか。
お世辞で笑う程度で能力を教えるつもりが無いのも彼女は解っているはずだ。
、、、とにかく、今は彼女が何故能力を知りたがっているかの方が考える方がいい。
彼女は気持ち悪い。何を考えているのかが解らない。
「こうなったのもあの月のせいだ。」
蓮は自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
あの日、蓮は実の両親の葬式に行っていた。

*******

中学二年の夏。
「両親が無くなった。」
そう叔父、叔母に告げれた日。
よく晴れた日で空がが憎たらしいほどに青かった。
死因は飲酒運転による事故。
蓮は叔父叔母が本当の両親では無いことを12になった時に聞いていた。
蓮の両親は育児放棄をしていたらしい。
自身は覚えていないが。
だから蓮はその話を聞いても胸を痛めることは無かった。哀れな人たちだと思うと同時にやるせない怒りが沸いてきた。
『それ』はその時には解らなかったが葬式で両親の遺体を見てはっきりと解った。

『死んでたまるか』
目の前に倒れている遺体。
年齢は40代らしいがパッと見老けているためか50代に見える。
顔を見るとどうやら蓮は母親似らしい。
そんな顔を見ていると気持ち悪くなった。
親戚達からの悪評。
蓮に注がれる哀れみの目。
それら全てが気持ち悪かった。
元々両親は飲酒運転を何回もしており天罰だったという人もいた。
その通りだ。
人から疎まれるような事をするからだ。
酒なんて物に興味を示すからだ。
全てに無関心でいればいい。
そうすれば天罰もくだらない。
嫌われない。
そうすれば死なない。
これは蓮なりの復讐だ。
僕はお前達のように死なないと。
蓮はあの月の下で誓っていた。
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