186 / 240
第1章
186 事件の真相
しおりを挟む
この度の蟻事件、原因はやはり冒険者であった。どうせ新人の仕業かと誰もが考えていたところ、他所のパーティー二組がやらかしていたのだ。
バランタウン側の原因となったのは領都の結成五年になるパーティー『パンクラスタ』。彼らはクタナツで一旗あげることを目標に日々励んでいた。
そんな時、開拓の話を聞き勇んでやってきたのだが、グリーディアントの獲物に手を出してしまった理由は……無知ゆえだった。
彼等は蟻の習性を知らなかったのだ。
しかしクタナツに生きる者、そして冒険者としても知らなかったでは済まされない。全員奴隷役三年の刑となった。ただしこのまま開拓業務に従事し、働き次第ではそれより早く解放されることも有り得る処置となった。
クタナツ側の元凶となったもう一組は厄介だった。
王都の五等星パーティーを名乗っていたものの実態は違法奴隷の集まり。リーダーのみ王都の七等星冒険者『劇斧のスメルニオフ』。上層部も憲兵隊もこの件には大きな裏が有ると見ている。このような小物に奴隷を五人も扱えるはずがないことも一因である。
しかも奴らは蟻の獲物をクタナツの治療院に放置していた。明らかに意図的な行動だ。
そして現在、魔法尋問の真っ最中である……
「お前の名前は?」
「劇斧のスメルニオフ」
「自称ではない、姓名を正確に言え。」
「スメルニオフ・ストロミング」
「出身地は?」
「ドナハマナ伯爵領」
「そこのどこだ?」
「テノヌ村」
「お前の年齢は?」
「三十九」
「いつクタナツに来た?」
「一月ぐらい前」
「何しに来た?」
「護衛ついでに、開拓で沸いてるからいい仕事があると思った」
「クタナツに着いてから今日までのことを詳しく話せ。」
「南の城門で割り込みをする生意気なガキがいた。貴族みたいでいい気になっていやがった。ギルドでまた会ったから後ろから殴ってやった。なぜか当たらなかった。物言いがイラつくガキだった。軽く教えてやろうと思ったら俺は治療院にいた。両方の肘と膝が砕けてると言われた。治った後で治療代は金貨六枚と言われたから逃げた。なぜか金も無かった。城門を通れないから街の中を適当に逃げた。そしたら紫の鎧を纏った男がいた。助けてやるから自分を手伝えと言われた。他にも奴隷がいた。俺がリーダーだと言われた。蟻のような魔物が持ってた何かを奪えと言われた。蟻は弱かったから簡単に奪えた。それを治療院に持っていけば金をやると言われた。なのにここ最近体がおかしい。肘が曲がらなくなった。指も曲がらない。足首も曲がらない。どんどん曲がらなくなる」
「男の名前は?」
「ムラサキ・イチロー」
「そいつがそう名乗ったのか?」
「そうだ」
「なぜ治療院にいた?」
「分からん、俺があんなガキに負けるわけない」
「その子供の名前は?」
「分からん、生意気なウエストコートを着てやがった」
「奴隷の名前は?」
「分からん」
「なぜ蟻から獲物を奪った?」
「頼まれたからだ」
「なぜ頼みをきいた?」
「金をくれると言った」
「そいつはどこにいる?」
「分からん、金を払わず逃げやがった」
「お前はなぜ逃げなかった?」
「逃げようとしたが、クタナツの城門が突破できない」
憲兵隊の面々はうんざりしていた。
尋問魔法により本音しか喋れないのだが、どいつもこいつも分からんと言うばかり。
完全に捨て駒だった。それだけに大きな裏があることが伺える。
ギルドの子供とは?
ムラサキ・イチローとは一体何者なのか?
バランタウン側の原因となったのは領都の結成五年になるパーティー『パンクラスタ』。彼らはクタナツで一旗あげることを目標に日々励んでいた。
そんな時、開拓の話を聞き勇んでやってきたのだが、グリーディアントの獲物に手を出してしまった理由は……無知ゆえだった。
彼等は蟻の習性を知らなかったのだ。
しかしクタナツに生きる者、そして冒険者としても知らなかったでは済まされない。全員奴隷役三年の刑となった。ただしこのまま開拓業務に従事し、働き次第ではそれより早く解放されることも有り得る処置となった。
クタナツ側の元凶となったもう一組は厄介だった。
王都の五等星パーティーを名乗っていたものの実態は違法奴隷の集まり。リーダーのみ王都の七等星冒険者『劇斧のスメルニオフ』。上層部も憲兵隊もこの件には大きな裏が有ると見ている。このような小物に奴隷を五人も扱えるはずがないことも一因である。
しかも奴らは蟻の獲物をクタナツの治療院に放置していた。明らかに意図的な行動だ。
そして現在、魔法尋問の真っ最中である……
「お前の名前は?」
「劇斧のスメルニオフ」
「自称ではない、姓名を正確に言え。」
「スメルニオフ・ストロミング」
「出身地は?」
「ドナハマナ伯爵領」
「そこのどこだ?」
「テノヌ村」
「お前の年齢は?」
「三十九」
「いつクタナツに来た?」
「一月ぐらい前」
「何しに来た?」
「護衛ついでに、開拓で沸いてるからいい仕事があると思った」
「クタナツに着いてから今日までのことを詳しく話せ。」
「南の城門で割り込みをする生意気なガキがいた。貴族みたいでいい気になっていやがった。ギルドでまた会ったから後ろから殴ってやった。なぜか当たらなかった。物言いがイラつくガキだった。軽く教えてやろうと思ったら俺は治療院にいた。両方の肘と膝が砕けてると言われた。治った後で治療代は金貨六枚と言われたから逃げた。なぜか金も無かった。城門を通れないから街の中を適当に逃げた。そしたら紫の鎧を纏った男がいた。助けてやるから自分を手伝えと言われた。他にも奴隷がいた。俺がリーダーだと言われた。蟻のような魔物が持ってた何かを奪えと言われた。蟻は弱かったから簡単に奪えた。それを治療院に持っていけば金をやると言われた。なのにここ最近体がおかしい。肘が曲がらなくなった。指も曲がらない。足首も曲がらない。どんどん曲がらなくなる」
「男の名前は?」
「ムラサキ・イチロー」
「そいつがそう名乗ったのか?」
「そうだ」
「なぜ治療院にいた?」
「分からん、俺があんなガキに負けるわけない」
「その子供の名前は?」
「分からん、生意気なウエストコートを着てやがった」
「奴隷の名前は?」
「分からん」
「なぜ蟻から獲物を奪った?」
「頼まれたからだ」
「なぜ頼みをきいた?」
「金をくれると言った」
「そいつはどこにいる?」
「分からん、金を払わず逃げやがった」
「お前はなぜ逃げなかった?」
「逃げようとしたが、クタナツの城門が突破できない」
憲兵隊の面々はうんざりしていた。
尋問魔法により本音しか喋れないのだが、どいつもこいつも分からんと言うばかり。
完全に捨て駒だった。それだけに大きな裏があることが伺える。
ギルドの子供とは?
ムラサキ・イチローとは一体何者なのか?
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌
力水
ファンタジー
楠恭弥は優秀な兄の凍夜、お転婆だが体が弱い妹の沙耶、寡黙な父の利徳と何気ない日常を送ってきたが、兄の婚約者であり幼馴染の倖月朱花に裏切られ、兄は失踪し、父は心労で急死する。
妹の沙耶と共にひっそり暮そうとするが、倖月朱花の父、竜弦の戯れである条件を飲まされる。それは竜弦が理事長を務める高校で卒業までに首席をとること。
倖月家は世界でも有数の財閥であり、日本では圧倒的な権勢を誇る。沙耶の将来の件まで仄めかされれば断ることなどできようもない。
こうして学園生活が始まるが日常的に生徒、教師から過激ないびりにあう。
ついに《体術》の実習の参加の拒否を宣告され途方に暮れていたところ、自宅の地下にある門を発見する。その門は異世界アリウスと地球とをつなぐ門だった。
恭弥はこの異世界アリウスで鍛錬することを決意し冒険の門をくぐる。
主人公は高い技術の地球と資源の豊富な異世界アリウスを往来し力と資本を蓄えて世界一を目指します。
不幸のどん底にある人達を仲間に引き入れて世界でも最強クラスの存在にしたり、会社を立ち上げて地球で荒稼ぎしたりする内政パートが結構出てきます。ハーレム話も大好きなので頑張って書きたいと思います。また最強タグはマジなので嫌いな人はご注意を!
書籍化のため1~19話に該当する箇所は試し読みに差し換えております。ご了承いただければ幸いです。
一人でも読んでいただければ嬉しいです。
まもののおいしゃさん
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
まもののおいしゃさん〜役立たずと追い出されたオッサン冒険者、豊富な魔物の知識を活かし世界で唯一の魔物専門医として娘とのんびりスローライフを楽しんでいるのでもう放っておいてくれませんか〜
長年Sランクパーティー獣の檻に所属していたテイマーのアスガルドは、より深いダンジョンに潜るのに、足手まといと切り捨てられる。
失意の中故郷に戻ると、娘と村の人たちが優しく出迎えてくれたが、村は魔物の被害に苦しんでいた。
貧乏な村には、ギルドに魔物討伐を依頼する金もない。
──って、いやいや、それ、討伐しなくとも、何とかなるぞ?
魔物と人の共存方法の提案、6次産業の商品を次々と開発し、貧乏だった村は潤っていく。
噂を聞きつけた他の地域からも、どんどん声がかかり、民衆は「魔物を守れ!討伐よりも共存を!」と言い出した。
魔物を狩れなくなった冒険者たちは次々と廃業を余儀なくされ、ついには王宮から声がかかる。
いやいや、娘とのんびり暮らせれば充分なんで、もう放っておいてくれませんか?
※魔物は有名なものより、オリジナルなことが多いです。
一切バトルしませんが、そういうのが
お好きな方に読んでいただけると
嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる