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第1章

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そして次の日の体育。

「今日からしばらく昨日と同じことをするからなー。あぁメイヨール君とマーティン君はあっちでやっててくれ。マーティン君、水壁は使えるよな?」

「押忍、使えます。」

「よし、じゃあ昨日ぐらいのサイズでやっておいてな。」

そうしていつも通りなのか私とスティード君は二人で隅に行き練習を始めた。

『水壁』

「カース君て水壁が使えるんだね。すごいや。
やっぱりイザベルおば様に習ったの?」

「そうだよ。母上の魔法ってすごいんだよ。ブワーッとなってドカーンてなるんだよ。
でもあんまり丁寧には教えてくれないんだ、最初だけ一緒にやってくれるんだけど、すぐに後は自分で地道にやりなさいって言うんだよ。」

「へえーすごいんだねー。アランおじ様もかなり強いそうだしカース君ちはすごいんだね。」

「どうなんだろうねー。スティード君だって剣がすごいよね。やっぱりおじ様に習ってるんだよね。
今気づいたけど、僕は父上から剣を習ったことがないや。」

「そうなの!? 意外だね。ウリエンお兄さんだって騎士学校に行ったんだよね? それなっ」

突如私達の頭上から水球が落ちてきた。
結構大きい、フェルナンド先生がよくやったやつだ。

「こーらお前ら、さっきから喋ってばかりで手が動いてないなー。
剣・木刀を上段に構えたまま校庭十周だ。終わるまで帰るなよ。」

「「押忍、ごめんなさい!」」

こうして私達はずぶ濡れのまま校庭を走った。服は重いし上段に構えてるものだから手がかなり怠い。
結局私達が学校を出たのはみんなより三十分遅れだった。
途中で乾かすのはフェアじゃないと考えて自然乾燥に任せたのだが、意外と乾いてない。
先生の魔法だからだろうか。

途中、フランソワーズちゃんのグループが薄ら笑いを浮かべながらこちらを見ていたのが気になったものだ。

ちなみにアレックスちゃん達は、がんばってねーなんて言いながらすぐに帰っていった。




「お帰りなさいませ。遅かったですね。」

「ごめんよマリー。授業中にお喋りをしてたら先生に叱られて走ってたんだ。あはは、恥ずかしい。」

「おや、カース坊ちゃんにしては珍しいですね。授業は真面目に受けるお人でしょうに。」

「いやーそれが珍しくスティード君と話が弾んでしまってさ。頭から水球をくらってしまったよ。」

「ふふ、たまにはいいですよね。それも青春ですよ。」

「青春! すごくいい言葉だね! そうだ青春だ! 僕は今、青春の真っ只中なんだ!
マリー! いつも通り走って帰るから荷物を頼むね!
うおー青春だー! 夕日に向かって走るんだ!」

「何が琴線に触れるものがあったのでしょうか。人の子はかわいいものですね。」




いい年したオッサンが青春を思い出し懐しむ。
本来なら不可能なことを実現できているだけで一生分、いやそれ以上の幸運を使い果たしたのではないか?
中身はカスでも行動が少しずつ真人間になっているカース。
果たして徳は貯まるのか?
たぶんカースは来世の徳のことなど考えてない。それでいいのか?
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