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第1章
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『誕生日おめでとう!』
夜になりパーティーが始まった。
ケーキはないし、砂糖・チョコレートもない。
正確に言えばあるにはあるが輸入物のため、下級貴族程度では食べることはできない。
甘いものが食べたいなら果物ぐらいのものだ。
今夜は菓子としてタルトやビスケット、プレッツェルなどが並んでいるが、砂糖の甘さはない。
ほんのり甘いと言うか、果物の甘みが活かされていると言うべきか。
普段からすれば十分ご馳走だ。
「よーしカース、私からのプレゼントだ。
これで頭も鍛えるんだぞ。」
「わーい父上ありがとう。」
これは知恵の輪か?
苦手なんだよな。
でも面白そうだ。
「私からはこれよ。循環阻害の首輪。
これでますます強くなれるわよ。」
名前からしてパワーリスト的なものだろうか。
小さいうちからこんなものを使っていたら、さぞかし強くなれそうだ。
そろそろどこかで個人魔法も試してみたいしな。
「母上もありがとう。これをつけて頑張るね。」
「うわー母上厳しい。そんなのつけたらカースは何もできないんじゃない?」
「あら、そんなことはないわよエリ?これぐらいでないと負荷にならないもの。
カースちゃんの錬魔循環ってかなりすごいのよ?」
「へぇ~カースがね~。もう三歳だしね~。」
「やっぱ姉上もう抜かされてるんじゃない?」
「なによオディロンのくせに! アンタこそ抜かされてるくせに!」
「はっはっは、お前達、兄弟なんだから抜かすも抜かされるも、どうでもいいじゃないか。
カースが強ければお前達も助かることの方が多いと思うぞ。
それに魔力が強いだけで魔境を攻略できるわけでなし、お前達にしかできないこともあるだろう。
助け合って生きていけよ。」
おお、さすが父上。
関係ありそうでなさそうなことを無難に上手くまとめた。
将来か、この個人魔法を使って不労所得で暮らしていくつもりだが。
頼れる先生や父上達、何て素晴らしい人脈なんだ。
貴族でよかった。
三男だし騎士になることもなさそうだし。
「さあカースちゃんは寝る前にもう一回アレをするわよ。
ベッドに行きましょうね。」
「お、押忍!」
「ひええ、こんな時でも修行なの? カースはすごいな。僕も学校に行きだして半年だけど負けられないなー。」
「アンタはもう負けてるでしょ。私は負けないけど。」
「ふふふ、あなた達が錬魔循環をクリアできるのを楽しみにしてるわよ。」
カースはベッドで再び魔力を抜かれてそのまま意識を失った。
目を覚ますのは翌朝だろう。
エリザベスもオディロンもすでに床に着いた。
その夜、大人達三人はテーブルを囲み酒飲み話に花を咲かせていた。
「今日は本当に驚いたわ。カースちゃんの錬魔循環、すごかったのよ?
確かに一年でそこまでできたら天才よ、とは言ったけどそんなわけないの。
あれは二年かかってできて天才、五年かけてもできるだけで優秀と言えるわ。
それなのにカースちゃんったら。」
「うむ、お前の房中錬魔循環がよほど強力なのかも知れないな。
この分だと次の子はもっとすごいのかも知れない。少し怖くなってくるな。」
「さすが奥様だと思います。旦那様はご出世の野心をお持ちでないことは存じておりますが、もしカース坊っちゃんが世に出られた際には一気に注目が集まるでしょう。」
「そうよねぇ、知られて困ることでもないけど、誰でも彼でも私の房中錬魔循環を受けられると思われるのは嫌だわ。
確かに理論上は女性なら誰でも身につけて使いこなせるし、誰にでも施すこともできることはできるけど。」
「ふふふ、少しの苦痛としばらくの倦怠感に耐えて、天国のような快楽を味わい、おまけに魔力が上がる。
男にとっては手放せない最高の女だよ、イザベル。」
「まあ、あなたったら。自分の奥さんを他の男に抱かせて趣味と実益を兼ねるなんて悪い人。」
「ふふっ、それでお前が強く綺麗になるなら構わないさ。もっとも構わないどころか私も楽しめるし強くなる。
これを古い言葉で『ウィンウィーン』と言うそうだ。お互い得する、ような意味らしい。」
「私も恩恵に預かってますので、有り難くはあります。
特にフェルナンド様のお相手をさせていただいた時はあまりの魔力に驚きました。
もちろん魔力だけでなくあちらの方も一流でしたし。」
「そうよね。フェルナンド様の魔力はすごかったわね。魔法自体は初歩的な物しか使えないらしいけど、有り余る魔力でいくらでもカバーできるわよね。
お陰で私の魔力もまた一段と強くなってしまったわ。」
「ふふ、さすが兄貴だ。そうやってイザベルやマリーの魔力が高まれば、また俺の魔力も強くなる。
房中錬魔循環とはすごいものだ。強くなって出世したいわけではないが、子供達を残して死ぬわけにはいかんからな。」
「うふふ、あなたったら。半分ぐらい趣味のくせに。
私だって知ってるわ、そういうのを古い言葉で『ネトーラッセ』って言うらしいわ。
夫婦の深い愛に基づいて行う、淫らで高尚な遊びらしいわ。」
「奴隷の身である私をこのように同席させていただくだけでなく、そのようなご夫婦の高尚な遊びにまで交えていただき光栄です。嬉しく思っております。」
「ふっふっふ、対外的には奴隷だが俺達からすると家族みたいなものだからな。
故郷に帰りたくなったらちゃんと言えよ。解放するなり、休暇を与えるなりするからさ。」
「旦那様… …ありがとうございます。」
「さあ今夜はカースちゃんが三歳になったおめでたい日だし、たまには三人で楽しむとしましょうか。」
大人達の夜はまだ終わらない。
夜になりパーティーが始まった。
ケーキはないし、砂糖・チョコレートもない。
正確に言えばあるにはあるが輸入物のため、下級貴族程度では食べることはできない。
甘いものが食べたいなら果物ぐらいのものだ。
今夜は菓子としてタルトやビスケット、プレッツェルなどが並んでいるが、砂糖の甘さはない。
ほんのり甘いと言うか、果物の甘みが活かされていると言うべきか。
普段からすれば十分ご馳走だ。
「よーしカース、私からのプレゼントだ。
これで頭も鍛えるんだぞ。」
「わーい父上ありがとう。」
これは知恵の輪か?
苦手なんだよな。
でも面白そうだ。
「私からはこれよ。循環阻害の首輪。
これでますます強くなれるわよ。」
名前からしてパワーリスト的なものだろうか。
小さいうちからこんなものを使っていたら、さぞかし強くなれそうだ。
そろそろどこかで個人魔法も試してみたいしな。
「母上もありがとう。これをつけて頑張るね。」
「うわー母上厳しい。そんなのつけたらカースは何もできないんじゃない?」
「あら、そんなことはないわよエリ?これぐらいでないと負荷にならないもの。
カースちゃんの錬魔循環ってかなりすごいのよ?」
「へぇ~カースがね~。もう三歳だしね~。」
「やっぱ姉上もう抜かされてるんじゃない?」
「なによオディロンのくせに! アンタこそ抜かされてるくせに!」
「はっはっは、お前達、兄弟なんだから抜かすも抜かされるも、どうでもいいじゃないか。
カースが強ければお前達も助かることの方が多いと思うぞ。
それに魔力が強いだけで魔境を攻略できるわけでなし、お前達にしかできないこともあるだろう。
助け合って生きていけよ。」
おお、さすが父上。
関係ありそうでなさそうなことを無難に上手くまとめた。
将来か、この個人魔法を使って不労所得で暮らしていくつもりだが。
頼れる先生や父上達、何て素晴らしい人脈なんだ。
貴族でよかった。
三男だし騎士になることもなさそうだし。
「さあカースちゃんは寝る前にもう一回アレをするわよ。
ベッドに行きましょうね。」
「お、押忍!」
「ひええ、こんな時でも修行なの? カースはすごいな。僕も学校に行きだして半年だけど負けられないなー。」
「アンタはもう負けてるでしょ。私は負けないけど。」
「ふふふ、あなた達が錬魔循環をクリアできるのを楽しみにしてるわよ。」
カースはベッドで再び魔力を抜かれてそのまま意識を失った。
目を覚ますのは翌朝だろう。
エリザベスもオディロンもすでに床に着いた。
その夜、大人達三人はテーブルを囲み酒飲み話に花を咲かせていた。
「今日は本当に驚いたわ。カースちゃんの錬魔循環、すごかったのよ?
確かに一年でそこまでできたら天才よ、とは言ったけどそんなわけないの。
あれは二年かかってできて天才、五年かけてもできるだけで優秀と言えるわ。
それなのにカースちゃんったら。」
「うむ、お前の房中錬魔循環がよほど強力なのかも知れないな。
この分だと次の子はもっとすごいのかも知れない。少し怖くなってくるな。」
「さすが奥様だと思います。旦那様はご出世の野心をお持ちでないことは存じておりますが、もしカース坊っちゃんが世に出られた際には一気に注目が集まるでしょう。」
「そうよねぇ、知られて困ることでもないけど、誰でも彼でも私の房中錬魔循環を受けられると思われるのは嫌だわ。
確かに理論上は女性なら誰でも身につけて使いこなせるし、誰にでも施すこともできることはできるけど。」
「ふふふ、少しの苦痛としばらくの倦怠感に耐えて、天国のような快楽を味わい、おまけに魔力が上がる。
男にとっては手放せない最高の女だよ、イザベル。」
「まあ、あなたったら。自分の奥さんを他の男に抱かせて趣味と実益を兼ねるなんて悪い人。」
「ふふっ、それでお前が強く綺麗になるなら構わないさ。もっとも構わないどころか私も楽しめるし強くなる。
これを古い言葉で『ウィンウィーン』と言うそうだ。お互い得する、ような意味らしい。」
「私も恩恵に預かってますので、有り難くはあります。
特にフェルナンド様のお相手をさせていただいた時はあまりの魔力に驚きました。
もちろん魔力だけでなくあちらの方も一流でしたし。」
「そうよね。フェルナンド様の魔力はすごかったわね。魔法自体は初歩的な物しか使えないらしいけど、有り余る魔力でいくらでもカバーできるわよね。
お陰で私の魔力もまた一段と強くなってしまったわ。」
「ふふ、さすが兄貴だ。そうやってイザベルやマリーの魔力が高まれば、また俺の魔力も強くなる。
房中錬魔循環とはすごいものだ。強くなって出世したいわけではないが、子供達を残して死ぬわけにはいかんからな。」
「うふふ、あなたったら。半分ぐらい趣味のくせに。
私だって知ってるわ、そういうのを古い言葉で『ネトーラッセ』って言うらしいわ。
夫婦の深い愛に基づいて行う、淫らで高尚な遊びらしいわ。」
「奴隷の身である私をこのように同席させていただくだけでなく、そのようなご夫婦の高尚な遊びにまで交えていただき光栄です。嬉しく思っております。」
「ふっふっふ、対外的には奴隷だが俺達からすると家族みたいなものだからな。
故郷に帰りたくなったらちゃんと言えよ。解放するなり、休暇を与えるなりするからさ。」
「旦那様… …ありがとうございます。」
「さあ今夜はカースちゃんが三歳になったおめでたい日だし、たまには三人で楽しむとしましょうか。」
大人達の夜はまだ終わらない。
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