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なりそこない

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「だっ、大丈夫か!?」
息を荒げながら駆け寄ってくる河野さん、川越さん、松田さんの3人。
「あ、すいません。心配させてしまって。けっこう強かったですけど大丈夫でした。」
足元の死体を指差す。
「うっ。」
「なんっだこれ。」
「デザインに悪意があるな…。」
三者三様の反応。
「こいつで最後みたいなんで、ちょっと報告してきます。自衛隊の調査になかった奴なんで。」
こいつは第1層の敵にしては危険すぎる。
なにか起こってるなら、対処してもらわないと何人死ぬかわからない。
「わかった。ついでに作戦完了ってのも伝えといてくれ。」
「はい。」
死体の長い両腕を左手で掴む。
「あ、すいません松田さん。借りたマグライト、途中に置いてるんで…。」
「わかった。回収しとく…。」
「それじゃ、いってきます。」
死体を引きずって歩く。
気持ち悪いから抱えたくない。
ここから入り口まで1km以上あることを考えると結構だるいけど。
「秋月くん!」
心配だったのか、よたよたと近づいてくる甲斐君。ありがたいけど休んでていいのに。
俺を見てほっとした表情を浮かべて、すぐにそれが引きつる。引きずってるものに気づいたらしい。
「あっ、秋月くん、なにそれ…。」
「それが分かんないんだよ。だから報告してくる。」
「そっか。それが最後だったの?」
「そう。作戦完了。」
よかったぁ、とへなへなと座り込む。
「ボクはもう少し休んだから片付けを手伝うから。報告がんばってね!」
「了解。いってくる。」
作戦完了を叫びながら、ずるずると死体を引きずって進む。
途中、田中さんと山本さんに引きつった顔で声をかけられ、魔石を回収してる人達にもギョッとした目を向けられる。
この死体のインパクトが凄すぎる。キモすぎるもんこれ。
それでも皆、声をかけてくれて少しいい気分でダンジョンの入り口通路をくぐって外に出る。
「秋月君。」
中武さんが立っていた。
「すまなかった。」
深々と頭を下げる中武さん。
「あっ、え?どうしたんですか?」
「君が引きずっている、その魔物。そんな危険なものが出ることを予見できていなかった。完全に僕のミスだ。」
「すいません。やっぱりよくわかりません。」
確かに危険だけど、俺がいるときに出て良かったとも言えるし、第一、魔物の出現って予想できるの?
中武さんが頭を上げる。
「それは、"なりかけ"、いやこの場合は"なりそこない"か。そう呼ばれているものなんだ。」
「なりそこない…。」
「そう。実際に見てもらった方が早いか。ナイフを貸してもらえるかな。コアを取り出す。」
コア?
「いや、俺がやりますよ。中武さん、スーツじゃないですか。」
入り口を塞いだままだと困るので、少し脇に場所を映す。
ナイフを抜いてゴリゴリと胸を割っていく。かったいな、これ。
「開いてみてくれ。」
指を突っ込み両側へとメリメリと開いていく。鉄骨を曲げてるような感じだ。
見えてきた胸の中にあったのは、薄い肉の膜に包まれた拳大くらいの宝石のような六面体。
まったく同じものの写真を講習でみたことがある。
「これ…。コアってもしかして。」
「そう。ダンジョンコアだ。」
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