17 / 54
興梠さんの心配
しおりを挟む
甲斐君に手を振って駆け足でダンジョン入り口前に向かう。
家のものよりずっと大きな四角いコンクリートと鉄扉。その前に興梠さんと中武さんが立っている。
「おはようございます!来ました。」
「おはよう、秋月くん。」
「おはようございます。ごめんなさい、名指しで呼び出してしまって。」
ぺこりと頭を下げる興梠さん。カウンター越しじゃないのは初めてだ。
「大丈夫です。何かあったんですか?」
「いやね、大したことじゃないんだけど。作戦前の説明の時に、秋月くんにも前に立ってもらおうと思って。」
ええ!?
「いや、それはちょっと…。」
「うん、そう言うとは思ったんだけどね。これは本当に大事なことなんだ。」
「大事、ですか?」
「そう。今日の作戦の中心は秋月くんだ。ようはここに集まった探索者全員が君に命を預けるわけだよ。」
それは確かに…。
「それなのに作戦の中心人物が自分達の中にこそこそと紛れてたらどう思う?あまりいい気分はしないよね。」
そうかな、そうかもしれない。
「やっぱり全員の前に堂々と立ってたほうが気持ちいいと思わないかな?」
「あの、やめてください室長。」
「おっと。」
興梠さんの制止がはいる。
「秋月さんも。簡単に丸め込まれたらダメですよ?」
「すいません…。」
たしかに丸め込まれそうだった。危ない。
「でもですね、秋月さん。」
「はい。」
「今日、一番頑張るのは秋月さんなんだって、最初に見せておくのは大事だと思うんです。」
「…そういうものでしょうか。」
「そういうものです。きっと秋月さんにとってプラスになりますから。年上の助言は聞いておくべきですよ?」
んんん。そこまで言われてしまうと断れない。
でも年上か。興梠さんっていくつなんだろう。
「わかりました。興梠さんを信じます。」
にっこりと笑う興梠さん。なんか少しドキドキする。
「まってまって、僕が言ったことも間違ってないからね?」
中武さんが何か言っている。確かに間違ってないけど、やり方があくどいんですよ。
「それじゃあ、秋月さん。私は戻らないといけないので。」
「あ、はい。ありがとうございました。」
頭を下げると、近づいてきた興梠さんが、そっと俺の手を取る。
「うぇっ?」
柔らかくて小さな手。
興梠さんの顔を見ると真剣な顔で俺を見つめている。
「秋月さん。どうか無理をせずに頑張ってください。危ないときは逃げてもいいんですからね。」
「あ…、はい。」
顔が熱い。ぜったい真っ赤になってる。
「約束です。それじゃ室長、あとはお願いします。」
はいはい、という中武さんの返事を聞いて、興梠さんが走り去っていった。
フォーム綺麗だな。
「じゃ、そろそろ集まるだろうから準備しようか。」
今のやり取りに突っ込まないのは、この人なりの優しさなんだろうか。
家のものよりずっと大きな四角いコンクリートと鉄扉。その前に興梠さんと中武さんが立っている。
「おはようございます!来ました。」
「おはよう、秋月くん。」
「おはようございます。ごめんなさい、名指しで呼び出してしまって。」
ぺこりと頭を下げる興梠さん。カウンター越しじゃないのは初めてだ。
「大丈夫です。何かあったんですか?」
「いやね、大したことじゃないんだけど。作戦前の説明の時に、秋月くんにも前に立ってもらおうと思って。」
ええ!?
「いや、それはちょっと…。」
「うん、そう言うとは思ったんだけどね。これは本当に大事なことなんだ。」
「大事、ですか?」
「そう。今日の作戦の中心は秋月くんだ。ようはここに集まった探索者全員が君に命を預けるわけだよ。」
それは確かに…。
「それなのに作戦の中心人物が自分達の中にこそこそと紛れてたらどう思う?あまりいい気分はしないよね。」
そうかな、そうかもしれない。
「やっぱり全員の前に堂々と立ってたほうが気持ちいいと思わないかな?」
「あの、やめてください室長。」
「おっと。」
興梠さんの制止がはいる。
「秋月さんも。簡単に丸め込まれたらダメですよ?」
「すいません…。」
たしかに丸め込まれそうだった。危ない。
「でもですね、秋月さん。」
「はい。」
「今日、一番頑張るのは秋月さんなんだって、最初に見せておくのは大事だと思うんです。」
「…そういうものでしょうか。」
「そういうものです。きっと秋月さんにとってプラスになりますから。年上の助言は聞いておくべきですよ?」
んんん。そこまで言われてしまうと断れない。
でも年上か。興梠さんっていくつなんだろう。
「わかりました。興梠さんを信じます。」
にっこりと笑う興梠さん。なんか少しドキドキする。
「まってまって、僕が言ったことも間違ってないからね?」
中武さんが何か言っている。確かに間違ってないけど、やり方があくどいんですよ。
「それじゃあ、秋月さん。私は戻らないといけないので。」
「あ、はい。ありがとうございました。」
頭を下げると、近づいてきた興梠さんが、そっと俺の手を取る。
「うぇっ?」
柔らかくて小さな手。
興梠さんの顔を見ると真剣な顔で俺を見つめている。
「秋月さん。どうか無理をせずに頑張ってください。危ないときは逃げてもいいんですからね。」
「あ…、はい。」
顔が熱い。ぜったい真っ赤になってる。
「約束です。それじゃ室長、あとはお願いします。」
はいはい、という中武さんの返事を聞いて、興梠さんが走り去っていった。
フォーム綺麗だな。
「じゃ、そろそろ集まるだろうから準備しようか。」
今のやり取りに突っ込まないのは、この人なりの優しさなんだろうか。
0
お気に入りに追加
561
あなたにおすすめの小説
貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです
卯ノ花
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる