天から二物も三物も与えられ過ぎた俺がダンジョンで青春を取り戻す

黒丸

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魔法

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第二階層へ続く坂道を下る。
調査によると、次も出てくる魔物は犬型だけ。あのくらいなら多少数が増えても対応できる。
うん。余裕があるうちに試しておいた方がいいかもしれない。
魔法を実戦で使いこなせるのかを。
2つの世界が1つに戻った結果、この世界に魔力が溢れた。
その魔力を利用してイメージした現象を現実に発生させる技術が魔法だ。
魔方陣も長々とした詠唱も必要ない。
ただ魔力を感じ、どれだけ強く、引き起こしたい現象をイメージできるかだけが魔法を使う鍵。
といっても、イメージを強める補助として詠唱を使うのは一般的なんだそうだけど。
自分でやるのは恥ずかしいかな。
いや、でもちょっとやってみたい気もする。
坂道が終わる。
第一階層と代わり映えのしない光景に、10匹を超える犬がたむろしている。
第一階層とは違って、無闇に襲い掛かってはこない。遠巻きにこちらを覗ってくるだけだ。
チャンスだ。
集中し周囲の魔力の流れを感じ取る。
次にイメージ。
講習では火の玉を飛ばしたりしていたが、飛ばす意味がわからない。
だから、イメージするのは正面にいる犬の頭。脳。
電磁波によって起こる水分子の動き。
動け。
動け動け。
振動しろ!
キャインと甲高い悲鳴を上げて正面の1体がのた打ち回る。うまくいった!
浮き足立った群れの中へ全速力で飛び込む。
混乱して飛び掛ってきた2体を鉄板で叩き落とし、振り返って背後を狙ってきた1体を打ち飛ばす。
これで4体。
だけど、襲いかかってくるのはそこまで。
2層の犬はよほど警戒心が強いのか、また距離をとって唸りをあげる。
2、4、6、残り10体。
試しに一歩踏み出してみると、その分だけ距離をとられる。
うーん、1層とずいぶん性質が違う。
さすがに逃げに徹されると追いきれない。
しかも俺の背後を取ろうと、ウロウロと動き回るのが気持ち悪い。
これを無理に追い掛け回わすと、数が多いぶん不覚をとる可能性もある。
うーん…、少し試してみるか。
さっきのでイメージのコツは掴めた。
過程と結果、そのイメージを強くもてば、過程を飛ばして結果だけを瞬時に発生させることができる。たとえそれが複数同時でも問題なくいけるはずだ。
さあ、沸騰しろ!
ボヂュっとくぐもった音。
10対すべての頭が変形し目玉が飛でて血が噴き出す。
うおああ、グロイ。
でもいけた!これなら実戦でも問題なくつかっうぇ
「うぉげえぇぇえぇ」
吐いた。
「うぇっ、おっ、えぇっ。」
息が苦しい。心臓がバクバクと跳ねているのがわかる。調子に乗りすぎた。
講習で、魔法を使うのは全力で走ることと同じことだって言ってたのはこういうことだったのか。
なまじ体力に自身があるせいでゆだんしてた…。
これはだめだ。
むり。
もうかえる。
ああ、でもませき…かいしゅうしないと。

「やっとついた…。」
なんとか魔石を回収して、這いずるように帰ってきたけど、1kmもない道のりが異常に長かった。
もし魔物に襲われてたら少し危なかったかもしれない。きっちり全滅させておいて良かった…。
それにしても、魔法の使いすぎがここまで辛いとは思わなかった。
強力だからといって何も考えずに使ってると、あっという間に行動不能になりそうだ。気をつけて使わないと。
「ただいまぁ」
今度は頭をぶつけないように玄関をくぐる。
帰ってきたという声とパタパタとした足音。
「お帰りなさい、はやかったの…ヒッ!」
ええっ、なにその反応。
「あなた血まみれじゃないの!どうしたの!どこか怪我したの!?」
ああー、ほんとだ、気付かなかった。
「ごめん母さん、これ返り血。怪我はしてないよ。」
無傷だとわかったとたん、露骨に嫌そうな表情に変わる。
「すぐに外で服を脱いでシャワーを浴びてきなさい。」
「えっ。」
「行きなさい。」
「はい…」
魔物の血だからなあ、気持ち悪いよなあ。
「その服は外で自分で洗いなさい。洗濯機は使っちゃだめよ。」
「そんなっ!」
「当たり前でしょ!使うにしても、せめて外で血を落としてからにしなさい!」
「ぐっ、わかりました…。」
最初の収入で一番に買うのは洗濯機になるかもしれない。
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