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万が一を考えてのはずが死ぬ前提になりはじめてて怖い

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「信じられんな……」

 俺の世界のこと、性別のこと、昼の揺り籠のこと。

 眉間に皺をよせながらも黙って聞いていたリーゼが呟く。

 よく最後まで突っ込まずに聞いたよ、ほんとに。

「だが、色々と腑に落ちた。信じるしかないな」

「助かるよ」

 疑われると証明しようがないからな。

「それで、貴様はどうなると考えている」

「どうだろうな。間違いなく何かはあるだろうけど、危険はないんじゃないかとは思ってる。」

 希望的観測、なのかなあ。これ。

「ただ、俺と接触する時に周辺を攻撃する、予想に反して俺を排除しようとするとか、ないとは言えないな」

 異物を排除する、みたいな感じで。ありそうだ、こういうの。

 嫌すぎる。

「隊長は?」

「クロウくんの言う最悪の事態。それを想定して動くべきだと」

「わかった。お前がそう判断したなら従おう」

 即決か。それだけの信頼関係があるってことかね。

「それで、オレ達はどうすればいい」

 示し合わせたように、2人が立ち上がる。

 遅れて俺も。

「副隊長とミリアは、すぐにフィーオウに戻り、指示があるまで待機を。」

「了解した」「はい!」

「メイアはここに残り、何かあれば直ぐに報告に戻ってください。たとえどのような事態になっても戦闘は禁じます」

「はい! ……え? あの、ごしゅ、クロウさんは」

 ご主人様って言おうとしたな、こいつ! リサの前でやめろよ!

「クロウくんは……、もしなにかあった時には、ここで死んでください」

「わかった」

 なんか俺が死ぬのが確定みたいにされてないか?

 正直、死にたくないけどなあ。

 せっかくこんな世界にきたんだから、もっとエロいことしたい。

 けど、俺も武術を生業にする家の生まれだ。気構えはある。覚悟はできてる。

「クロウくん」

 リサが腰に佩いていた剣を外して差し出してくる。

「これを」

 あまり装飾のない、無骨な印象の剣。

 両手でも片手でも使えそうな、バスタードソードっていうんだっけか。

 受け取りはしたものの。

「これは?」

「私が10年間、魔力を通して鍛え続けたものです。どんなものでも断ち切れると、そう自負しています」

 なるほど。どんな相手でも、刃が通れば倒せるかもしれない。

「うん。使わせてもらう。でも、大事なものなんじゃないのか?」

「いいんです。私の全ては貴方のものですから」

 おお、ここで言うか。みんな唖然としてるぞ。

「それでは、私は戻ります。後は任せましたよ。」

 言い切ると同時にリサの姿がグニャリと歪む。

 あっと思った次の瞬間には、リサの姿は消えていた。

 結構、あっさり帰ったな。ちょっと寂しい。

「便利だな……」

 俺も使えるようになるかな、あれ。

「あいつくらいにしか使えんがな。あれは」

「え、そうなの!?」

「あんなのが誰でも使えたら、世の中めちゃくちゃっすよ」

 使えるといいなと思った直後に打ち砕かれた。

「でも、クロウさんならできそうですよお? あんなに魔力を集めて、一瞬で消しちゃうような人ですからぁ」

 おお、そうかな。いけるかな。魔法つかえるようになったら練習してみよう。

 魔力集めたり消したりしてるのは、あんまり関係ない気がするけどな。

「まあ、使えたら教えろ。荷運びに使ってやる。俺とミリアは戻るぞ」

 行動が早いな。

 荷物をまとめてくると、ミリアが二階への階段を上っていく。

「メイア。馬は3頭とも引き上げるぞ」

「はい。飛びますから大丈夫ですよお」

 飛ぶ?

「あと、貴様」

「そろそろ名前で呼べよ」

 尻の穴まで舐めてやったんだから。

「黙れ。貴様には言いたいことも聞きたいことも山のようにある。戻ったら連絡をよこせ」

「わかった。宿も取っとくよ」

「死ね、下衆が」

 時間おいたせいかデレがなくなったなこいつ。

「あ、自分はベッドがでっかいことがいいっす!」

 2人分の荷物を持って下りてきたミリアの能天気な声。

 お前もついてくんのか。


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