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ダンジョンもあるんですって

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とんでもないな。
英雄様は、最初からそこを目指して動いてたんだろうか。
貴族を扇動して民衆を扇動して、劇的な勝利を演出して。
俺に同じことができるか。
…たぶん無理だな。
弱いな、俺は。
くそっ。
「それから始まったのが、旧王家派や和平派への粛清。旧王家と最も繋がりの深いオーデールは一番に狙われた。」
「あいつら、オーデール家に領地替えを強要してきたんだ。んなことできるわけねぇのに!」
苛立たしげにベッドに拳を落とすエルダ。
ベッドがミシリと音を立てる。
壊すなよ、お前…。
「なんで領地替えができないんだ?」
日本でも国替えはメジャーな処分だ。
厳しい処分だけど、族滅されるよりはましだと思うんだが。
「オーデールは、森から溢れてくる魔物から国を守る、王国の盾としての役割を与えられてたの。だから領地替えは簡単に決断できることじゃなかった。」
「それでも、それでも領地替えに応じようとしてたんだ!なのに、あいつらっ!」
「…配下の暴発を抑えるために時間がほしいと願い出たら攻め込まれた。あっという間に領都は陥落。エルダと2人で逃げることしかできなかった…。」
俯いたまま、黙り込む2人。
かける言葉が見つからない。
膝立ちになって、2人を正面から抱きしめる。
「あとはくろーさんも知っての通り。山賊に拾われて、軍の物資や御用商人を狙って荒らし回って、また攻められて…、くろーさんに出会った。」
2人が抱き返してくる。
それに答えるように腕に力を込めた。
「くろーさんに出会えたのは本当に幸運だった。最悪の出会い方だったし、酷いことされたけど。」
「俺は殺されそうだったけどな。あと酷いことはこれからもっとするぞ。」
「うん…。」
「くろー、…ありがとう。」
メルが軽く俺の胸を押す。
それに答えて2人を離しベッドへ座りなおした。
「わたしとエルダの話はこれで終わり。予想通りだった?」
弱々しいながらも笑顔を見せるメル。
大丈夫そうだ。
「いや、予想よりだいぶ重かったな。」
勝った、と笑う2人。
何に勝ったんだよ。
「なぁ、2人は家の再興とか復讐とか、考えてるのか?」
「正直もうわからない。この3年で私とエルダには無理だって痛感した。」
「だな、あたしらなんて家がなければ単なる世間知らずの小娘だったし。」
軽い調子で答える。
この言葉が出てくるまでに、どれだけ苦しんだんだろう。
「今はくろーさんと一緒にいたい。お金を貯めてフィーオウに腰を落ち着けてもいいし、くろーさんが冒険したいなら迷宮に挑戦してもいい。」
なに!?
「迷宮って魔物がいて貴重な宝物が手に入る迷宮か?」
「うん。小さいのならその辺にできることもある。」
「でかいのだと街ぐるみで管理してんな。」
おおおおおお!異世界っぽい!
ダンジョン探索系異世界だったのか!
「あ、くろーさんの世界にもあった?」
「いや、無い。物語の中に出てくる憧れの存在みたいなもんだ。」
「無いのに物語にでてくるの?」
「くろーの世界ってよくわかんねぇな…。」
この世界の方がよくわかんねえよ。
「ほっとけ。でも迷宮は行ってみたいな。」
「んじゃ決まりだな。」
「うん。お金貯めて準備しよう。」
民兵の仕事頑張らないとな。
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