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興奮しすぎて周りが見えなくなるって本当にあるんだ

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「おおお、すごいなこれ。」
フィーオウは活気に満ち溢れていた。
城壁を潜ると大きな広場。
そこから真っ直ぐに伸びる石畳で舗装された広い街道。
道沿いに立ち並ぶ情緒ある建物。
これは殆どが宿なんだそうだ。
宿に泊まる人向けなのか多くの屋台もあり、良い匂いが漂ってくる。
ただ、若い女しかいないから違和感がすごい。
もしかすると老化とかないんだろうか。
熟女も好きなんだけどな、俺。
農家のおばちゃんと畑の横でやっちゃうようなのとか。
聞いてみようかと2人を見る。
が、とても聞ける雰囲気ではなかった。
メルフィリア・オーデール。
そう呼ばれてから、メルは一言も話すことなく俯いている。
エルダも気にかけて寄り添っているが、どう声をかけるべきか迷っているようだ。
「よっと。」
そんなメルを横抱き、いわゆるお姫様抱っこで抱え上げる。
「あっ、…クロウ…。」
儚げな表情で俺を見つめてくる。
俺も真っ直ぐに見つめ返す。
「くろーさん、じゃないのか?」
「あ…。」
また俯いてしまう。
頭でも撫でてやりたいが、手が塞がっている。
かわりに、メルの額にそっと口付けた。
「ひゃっ。」
「気にするな、メル。」
メルの瞳に涙が浮かび零れ落ちる。
「私は…、沢山の罪を犯しました…。つまらない、嫌がらせのような復讐のために…。」
「ああ。」
「今では罪悪感も薄れ…、罪を犯すことに何の呵責も感じなくなりました…。」
それはあんまり良くないな。
サイコパスか。
「けれど戦争は…。私の…私の浅はかな考えのせいで…、私が…その火種に…。」
ぽろぽろと零れ落ちる涙。
「これが無くても戦争は起こった。ここはそれだけの準備をしてたんだ。」
「そんなことは分かっています!…わかって…いるんです…。」
ああ、こいつがこんなふうに泣くのは嫌だな。
「お前とエルダは、もう俺のものだ。」
涙に濡れた瞳で、不思議そうに俺を見上げる。
「だからお前らの罪も抱え込んでるものも、ぜんぶ俺が引き受けてやる。」
くしゃりとメルの表情が歪む。
「わたっ、私はっ、貴方を利用しようとっ…、自分の身体を与えてっ、いいように使ってやろうとっ…。」
「知ってるよ、そんなこと。」
涙を拭うように、メルの頬に口付けを落とす。
「あっ…。」
「それでもお前らは俺のものだ。何があってもお前らは俺が守ってやる。いや、お前が望むなら戦争だって止めてやるよ。俺がそれだけの力をつけてな。」
「うっ、くろう、さん…。」
メルを降ろし、エルダも引き寄せて2人同時に抱きしめる。
エルダも涙を流していた。
「くろーさん、ごめんなさい、くろーさん!」
「くろー、ありがとう…」
俺の胸に顔を埋める2人の頭を優しくなでる。
てかね、いま気づいたんだけどさ。
すっげえ見られてる。
人垣できはじめてるから。
いまのを見られてたと思うと胃がぎゅってなる。
「きゃっ!」
「うわっ!」
2人を抱え上げ、そのまま足早に歩き出す。
頑張ってね!
かっこよかったよ!
と、野次馬達の声が背中に刺さる。
恥ずかしい、すっげえ恥ずかしい。
「野次馬すごい。気づかなかった。」
「あたしは気づいてたんだけど、まぁいいかぁって。」
気づいてたならっ…いや、言えないよな。
ものすごく盛り上がってたもん、俺。
「メル、口調が戻った…でいいのか?」
「いいのかな?こんなふうに喋らないと、すぐあんなふうに喋っちゃう。」
あっちが素なのか。
「でも、きっとくろーさんのメルはこっち。だからこっちがいい。」
またそんなことを。
「言っとくけど、メルフィリア・オーデールもエルシーダ・カラントも俺のものだからな。逃げんなよ。」
「…くろーさん、すき。」
「あたしもくろーのがいい…。」
抱え上げたままの2人が頭にしがみついてくる。
大きいおっぱいと小さいおっぱいに挟まれて気持ちいい、汗臭いけど。
いつかオーデール閣下プレイとカラント卿プレイもやりたい。
そんなことを考えながら、紹介された宿へと歩いていった。
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