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本位貨幣制度って凄く異世界っぽい

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「くろーさんは酷い。」
「すまなかった。」
「あたしらも悪かったとは思うけど、あれはねぇよ。」
「悪かったって。」
2人を乗せた馬を引きながら謝罪を繰り返す。
林を離れてからずっとこの調子だ。
女騎士は、気絶しているのを起こして、早めに離れるように言い聞かせてきた。
もちろん約束どおりに荷物には手をつけてないし馬も置いてきている。
たぶん、無事に国へ帰り着けるだろう。
というより、帰り着いてほしい。
「くろーさん。あの女のこと考えてる?」
やたら鋭いな。こいつ。
「無事に帰れるといいなって考えてた。」
「くろーさんがさらって犯したのに。」
「まあ、そうだな。お前らにも悪いことしたと思ってる。」
聞かなくていい話を聞くことになったし、見なくていい姿を見ることになったし、もう昼過ぎだし。
「本当?」
「本当だ。」
「わかった。信じる。」
どうやら、ようやく収まったらしい。
あたしは気にしてなかったけどな、とか言ってるエルダにイラっとする。
じゃあメルをなだめろよお前!
「で、これから先、どうする予定なんだ?」
蒸し返すのもあれなので、建設的な話に移る。
なにより、ちゃんと予定を聞く暇もなかったからな。
「目的地はずっと見えてる。あれ。」
と、メルが遠くに見える城壁を指差す。
もう随分と歩くが、ずっと遠くのままの城壁だ。
よほどの規模の城郭都市なんだろう。
あまり急いでいない俺達は、もう何台もの馬車に追い抜かれている。
「そういえば、追い抜いていく馬車はいるのに、すれ違う馬車がいないな。」
「そりゃそうだろ、日が昇ったらすぐ出てんだから。」
「ああ、なるほど。そういうことか。」
あの城郭都市が貿易の中継地点ってことかな。
それなら、この時間に出発する馬車なんていないだろうし、都市として発展してるのも頷ける。
「で、ついたらどうするんだ?」
「まず飯だな。いい加減まともなものが食いてぇよ…。」
エルダ、同感ではあるがそうじゃない。
「最初に通門手続き。3人で大銀貨15枚が必要。頭が痛い。」
大銀貨!異世界っぽい!
ただ15枚と言われてもピンとこない。
「すまない、貨幣価値がわからないんだが、大銀貨15枚ってどのくらいなんだ?」
なに言ってんだこいつ、と言わんばかりの2人の視線。
仕方ないだろ。
「くろー、銀貨なんてどこ行ってもかわんねぇぞ?」
「くろーさん、やっぱり貴族?自分でお金、使ったことない?」
「ちがうよ!俺のいたところは経済が発展しまくってて紙幣、手形がメインだったんだよ!」
「てがたぁ?」
「まってくろーさん、手形?銀行の?それで成り立つの?」
見事に反応が真逆だな。
「国が信用の裏付けをすることで成り立たせてた。そうしないと回らないくらい規模が大きくなってたんだよ。」
「信じられない。くろーさん、こんど詳しく教えて。」
山賊娘が興味もつ内容じゃないよな。
あんまり出自隠す気ないだろお前。
「ああ、いいぞ。専門じゃないけど概要くらいは話せる。」
「嬉しい。すごく興味深い。」
淡々とした口調に興奮をにじませ顔をほころばせる。
かわいいなこいつ。
よくわかんねぇ、とかぼやいているエルダとは大違いだ。
「で、話がずれたけど、大銀貨の価値ってどのくらいなんだ?」
艶やかな唇に手を当て、少し考えるメル。
「都市の庶民が一月働いて、大銀貨10枚くらい手元に残る、はず。」
「大銀5枚ありゃ、一月はそこそこ良いもん食えるな。」
てことは、大銀貨1枚で1万から2万円くらいかな。
「たっかいな、通行料。」
「そう、高い。手持ちは大銀貨17枚だから本当にギリギリ。」
「だからくろーを襲った訳だしな。」
あっけらかんと笑うエルダ。
「おまえな…。」
乳でも揉んでやりたいが馬に乗ってるからそうもいかない。
「入れたらすぐにギルドに加入しないといけない。ご飯はその後。」
「うう、腹へったぁ。」
ギルド、ギルドか。
ギルドかぁ!すごいな!
「なあ、ギルドってやっぱり冒険者とか?」
「ぼうけん?」
「なんで冒険すんのにギルドがいんだ?」
またも、なに言ってんだこいつという視線。
てか、冒険者ギルドじゃないのかよ!
「ギルドはあの街で商売をするには絶対に入らないといけない組織。」
「あたしらは民兵で登録だな。」
「民兵?」
なんか予想外の言葉が出てきた。
「ちょっとまってくれ、民兵って兵士か?」
「兵っつっても単なる何でも屋だな。」
「正規兵の小間使い。商人や職人の使い走り。ようは体のいい雑用係。」
俺のイメージする冒険者とだいたい同じだけど、民兵かぁ。
「報酬は安いけど食いっぱぐれはない。らしい。」
「とりあえず食ってかねぇと。」
仕方ない。
まずは、ここでの生活に慣れるのが先決だしな。
「そうだな、とりあえずやってみるか。」
「うん、くろーさんには凄く期待してる。」
「だな。頼むぜ、くろー。」
調子の良いことを、と馬上を見上げる。
期待に満ちた2人の瞳には、ちゃかすような雰囲気はなく、少しドキリとする。
「ああ、まかせとけ。」
まだ出会って1日。
すさまじく密度が濃かったが、ようやく1日だ。
けど、こいつらとならやっていけそうな気がする。
「そうだ、あの街はなんて名前なんだ?」
2人は見つめあって微笑むと、声をそろえて言った。

「「自由都市フィーオウ。」」
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