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戦利品って響きに心が躍る

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夜の森の中を急ぎ進む。
と言っても、暗すぎて走ることはできず、手探りで進んでいるようなものだ。
松明の灯りが見えれば身を隠し、追っ手に見つからないよう進む。
夜が明け始めると、少しずつ森の中も明るくなり、俺達の進むペースも上がっていく。
手頃なサイズの石ころが欲しいが、苔や落ち葉が降り積もっているせいで、なかなか数が揃わない。
「くろー、まずいぞ。たぶん追われてる。」
「みたいだな。気にせず走るぞ。」
まだ距離はあるみたいだが、人のざわめきが聞こえてくる。
見つかってると考えたほうがいいだろう。
「お前らいったい何やったんだよ。残党狩りにここまでやるとか異常だろ。」
「えっ!いや、その。」
「いろいろっ。いろいろやったの。」
いろいろか。
山賊団の首領だったんじゃないだろうな。
「まあいい、そのうち聞かせろよ。」
明るくなるにつれ、木々が小さくなり下草が多く走りにくくなってくる。
それでも走るペースを落とす訳にはいかない。
たぶん、もうすぐ森を抜ける。
「はぁっ、待ち伏せ、あるかな?」
「わからん。けど、あるって思っといたほうがいいな。」
「はぁ、はっ、やってやるよ!くそっ!」
2人とも息があがりはじめている。
街道まで出れれば、こっちの勝ちだ。
2人がもってくれるといいが。
正面が明るくなった。
もうすぐ森を抜ける。
「作戦はおぼえてるな!?」
「大丈夫っ。」
「はっ、覚えてる!」
森の切れ目に向けて走る。
一気に視界が開けた。
「正面なし!」
「右いない!」
「左、いる!遠い!」
「無視だ!走れえ!」
左手、500mは離れてるか!?
運がいい!この距離なら弓は届かない!
だが騎兵がいるか!?
「騎士2!ちくしょう!動いた!」
「矢で狙われないぶんマシだ!走れ!」
貯めていた、細かい礫をバラバラと捨てる。
「くろー!それ捨てんのかよ!」
「これは弓兵用だよ!この距離で届くか!」
かわりに拳大の石を取り出す。
世界最古の戦闘技術、くらってみやがれ!
騎士の胸元に飛礫がめり込む。
ロープとハンカチで作った即席のスリング。
騎兵が相手でも威力は充分だ!
バランスを崩した騎士は哀れにも落馬。
主を失った馬は少し速度を落とし進む向きを変えた。
「馬だ!奪え!」
2人が馬へ向かって走る。
あと一騎。
右手に剣を握り、左手で手綱を握っている。
槍じゃなくて良かった。
今度は普通に石を投げつける。
簡単にかわされるがこちらへ向かってきた。
よし、来い、来い!
頼むから馬の扱いに慣れててくれよ。
メルから奪ったナイフを握る。
ドドドッドドドッと蹄の音を響かせ騎士が迫り、
掬い上げるような斬り上げ。
当然、かわす。
その瞬間、馬体が向きを変え、俺を目掛けて馬の後脚が跳ね上がる。
ありがとう!読み通り!
後脚をかわし、騎士の脚を掴む。
いまの動きでも騎士は体制を崩していない。
鋭い斬り下ろしが俺を襲う!
けど、そこまで読んでんだよ!
ナイフを剣の刃元に叩きつけ逸らす。
そのまま一気に馬上へ上がって騎士と正面から向き合う。
「こんにちは!」
「んなっ!?」
「お前が馬の扱いが上手くて助かった。おやすみ。」
あそこで蹴り上げてくれなかったら上れなかったからな。
ナイフを握ったまま、顎を下から殴り上げる。
兜が重いからよく揺れるだろ?
「よし!逃げるぞ!メル!エルダ!」
気絶した騎士を落とさないように抱きかかえて正面へ向きなおる。
2人も馬を捕まえられたようで、エルダがメルを抱きかかえるように乗っていた。
もちろん俺は馬が使える。
裸馬にでも問題なく乗れる。
馬上で弓もあつかえず何が武芸者か、が家訓だ。
「先行しろエルダ!場所がわからん!」
よっしゃ戦利品げっとおおおおおお!


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