44 / 52
少しだけ、このままで
3
しおりを挟む
「バカ芙佳、ヤキモチくらい妬けよ」
「なんで私が……。それにバカは余計でしょ」
「バカだからバカって言ってんだよ!俺はムカついてんの!芙佳がなんも言わないせいでめちゃくちゃ落ち込んだんだからな!俺がいなくて死ぬほど寂しかったって言え!ずっと一緒にいてって、今すぐ言え!!」
素直じゃないけど、それが應汰の本音のようだ。
應汰らしいと言えば應汰らしい。
應汰がいなくて寂しいと私が思っていたのと同じように、應汰も私がいないと寂しいと思ってくれていたんだと思うと、少し嬉しかった。
だけどここで『私も寂しかったよ』なんて言えるほど、私は素直じゃない。
「そんなこと言わないよ。言うわけないでしょ?」
「こいつ……絶対言わせてやるからな!もっと飲め!!ベロベロに酔え!!襲ってやる!!」
「断る!!」
久しぶりに應汰と軽口を叩きながら飲んだビールは美味しかった。
あんまり美味しくて、楽しくて、つい飲みすぎてしまった。
酔っていい気分で居酒屋を出ると、應汰は私の手を引いて歩き出した。
「ありがと、應汰」
「ん?急にしおらしくなってどうした?」
「うん……。應汰がいてくれて良かった」
「んー?やっと俺に惚れたな?早速抱いてやろうか?」
「バカ……」
今ここでそんな事言うの、ずるい。
應汰が優しいことも、私を大事に思ってくれていることも、私は知っている。
このまま流されてしまえたら幸せなのかも知れない。
だけどそれでは以前の私と何も変わらないから、また應汰の優しさに甘えそうになる心を戒める。
「ねぇ應汰、プリン買って」
「は?ガキじゃあるまいし……」
「ガキでもなんでもいいよ。私は今、とにかくプリンが食べたいの。だから買って」
「はぁ……色気より食い気だな」
憎まれ口を叩きながらも、應汰は私の手を引いて、コンビニに向かって歩き出した。
私の手を引いて歩く應汰の手はいつも少し強引だけど、大きくてあたたかくて、とても優しい。
自分の力で前を向いて歩ける私になれるまで、この手のぬくもりと應汰の優しさを忘れないように、もう少しだけ、このままでいさせて。
コンビニで應汰にプリンを買ってもらって、公園のベンチに座って食べた。
應汰は缶コーヒーを飲みながら、プリンを食べる私を横目で眺めている。
「美味いか?」
「うん、美味しいよ」
「俺にも食わせろ」
「ん、食べる?」
スプーンでプリンをすくおうとすると、應汰が突然私の頭を引き寄せて、唇を重ねた。
應汰の形の良い唇で優しく唇をなぞられ、柔らかい舌で私の舌を味わうようにゆっくりと絡め取られて体の奥が疼く。
「……甘いな」
應汰は私の手から取り上げたプリンをベンチの上に置いて、私をギュッと抱きしめた。
久しぶりに感じた應汰の胸の広さと温かさに、心がギュッとしめつけられて泣きそうになる。
「早くあんなやつ忘れちまえ。あんなやつとっとと忘れて、俺を好きになれ」
わかってないな。
應汰が離れて行ってどれだけ私が落ち込んだか、應汰が私にとってどれほど大きな存在なのか、應汰は知らないでしょ。
勲の事をまだ完全に忘れられないのに、應汰にすべてを奪われてしまいたいなんて、そんなの勝手すぎるかな。
「芙佳、今日は帰るなよ」
「えっ……」
「今度こそ……ちゃんと俺に抱かれて、俺を感じろ。どんだけ俺が芙佳を好きか教えてやる」
「なんで私が……。それにバカは余計でしょ」
「バカだからバカって言ってんだよ!俺はムカついてんの!芙佳がなんも言わないせいでめちゃくちゃ落ち込んだんだからな!俺がいなくて死ぬほど寂しかったって言え!ずっと一緒にいてって、今すぐ言え!!」
素直じゃないけど、それが應汰の本音のようだ。
應汰らしいと言えば應汰らしい。
應汰がいなくて寂しいと私が思っていたのと同じように、應汰も私がいないと寂しいと思ってくれていたんだと思うと、少し嬉しかった。
だけどここで『私も寂しかったよ』なんて言えるほど、私は素直じゃない。
「そんなこと言わないよ。言うわけないでしょ?」
「こいつ……絶対言わせてやるからな!もっと飲め!!ベロベロに酔え!!襲ってやる!!」
「断る!!」
久しぶりに應汰と軽口を叩きながら飲んだビールは美味しかった。
あんまり美味しくて、楽しくて、つい飲みすぎてしまった。
酔っていい気分で居酒屋を出ると、應汰は私の手を引いて歩き出した。
「ありがと、應汰」
「ん?急にしおらしくなってどうした?」
「うん……。應汰がいてくれて良かった」
「んー?やっと俺に惚れたな?早速抱いてやろうか?」
「バカ……」
今ここでそんな事言うの、ずるい。
應汰が優しいことも、私を大事に思ってくれていることも、私は知っている。
このまま流されてしまえたら幸せなのかも知れない。
だけどそれでは以前の私と何も変わらないから、また應汰の優しさに甘えそうになる心を戒める。
「ねぇ應汰、プリン買って」
「は?ガキじゃあるまいし……」
「ガキでもなんでもいいよ。私は今、とにかくプリンが食べたいの。だから買って」
「はぁ……色気より食い気だな」
憎まれ口を叩きながらも、應汰は私の手を引いて、コンビニに向かって歩き出した。
私の手を引いて歩く應汰の手はいつも少し強引だけど、大きくてあたたかくて、とても優しい。
自分の力で前を向いて歩ける私になれるまで、この手のぬくもりと應汰の優しさを忘れないように、もう少しだけ、このままでいさせて。
コンビニで應汰にプリンを買ってもらって、公園のベンチに座って食べた。
應汰は缶コーヒーを飲みながら、プリンを食べる私を横目で眺めている。
「美味いか?」
「うん、美味しいよ」
「俺にも食わせろ」
「ん、食べる?」
スプーンでプリンをすくおうとすると、應汰が突然私の頭を引き寄せて、唇を重ねた。
應汰の形の良い唇で優しく唇をなぞられ、柔らかい舌で私の舌を味わうようにゆっくりと絡め取られて体の奥が疼く。
「……甘いな」
應汰は私の手から取り上げたプリンをベンチの上に置いて、私をギュッと抱きしめた。
久しぶりに感じた應汰の胸の広さと温かさに、心がギュッとしめつけられて泣きそうになる。
「早くあんなやつ忘れちまえ。あんなやつとっとと忘れて、俺を好きになれ」
わかってないな。
應汰が離れて行ってどれだけ私が落ち込んだか、應汰が私にとってどれほど大きな存在なのか、應汰は知らないでしょ。
勲の事をまだ完全に忘れられないのに、應汰にすべてを奪われてしまいたいなんて、そんなの勝手すぎるかな。
「芙佳、今日は帰るなよ」
「えっ……」
「今度こそ……ちゃんと俺に抱かれて、俺を感じろ。どんだけ俺が芙佳を好きか教えてやる」
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
想い出は珈琲の薫りとともに
玻璃美月
恋愛
第7回ほっこり・じんわり大賞 奨励賞をいただきました。応援くださり、ありがとうございました。
――珈琲が織りなす、家族の物語
バリスタとして働く桝田亜夜[ますだあや・25歳]は、短期留学していたローマのバルで、途方に暮れている二人の日本人男性に出会った。
ほんの少し手助けするつもりが、彼らから思いがけない頼み事をされる。それは、上司の婚約者になること。
亜夜は断りきれず、その上司だという穂積薫[ほづみかおる・33歳]に引き合わされると、数日間だけ薫の婚約者のふりをすることになった。それが終わりを迎えたとき、二人の間には情熱の火が灯っていた。
旅先の思い出として終わるはずだった関係は、二人を思いも寄らぬ運命の渦に巻き込んでいた。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる