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男友達の裏の顔
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舞は実家から通っている事もあってか、生活費に苦労した事はなかったのだろう。
持ち物はいつも割と高そうなブランド物が多かったし、仕事の後も同僚の若い子たちと連れだって、オシャレなレストランで女子会だとか、金銭感覚はあまりなさそうだった。
よほど高収入の人でない限り、結婚後もあんな生活をしていたら破産しかねない。
「結婚して生活やってけるのかな?」
「そこだよ。料理もまともにできないのに結婚して専業主婦になって、旦那に甘えようとしてる感じだった」
應汰は結婚相手には厳しいのか、それなりの理想があるみたいだ。
完璧な奥さんを求めているとまでは言わないけど、彼女と奥さんは別。
そんな気がする。
「……じゃあなんで付き合ってたの?」
「付き合ってくれって言われたから。付き合ってみないと相手の事はわからないだろ」
確かに、應汰の言うことはもっともだ。
應汰は付き合ってみて初めて、舞が生活力のない浪費家で結婚願望が強いということを知ったと、そんなとこか。
「まあ、そうだね。私はてっきり顔で選んでるのかと思ってた」
「顔は確かにかわいかったけどな。正直言うとさ……付き合ってみて、ちょっと合わないかもって思い始めてたから、別れようって向こうが言ってくれてホッとした」
なるほど。
舞は應汰よりも早くそれを察知して、結婚する気のない應汰に、とっとと見切りをつけたわけだな。
お互いに求めるものが違うと気付いて別れたのなら、円満な破局と言えるだろう。
別れて間もないうちに他の人と結婚すると知ったときには驚きもしただろうけど、付き合っているときに他の人と結婚された私に比べたら、まだまだ救いようがあると思う。
「芙佳、もっと飲めよ。ビールおかわりは?」
「もらう」
残っていたビールを飲み干して、ビールのおかわりを受け取った。
なんだかさっきから聞いていると、應汰はたいしたダメージを受けていなさそうだ。
むしろ私の方が結婚という現実を考えて重い気持ちになっているような気がする。
他の人と結婚してしまった元恋人の話なんて、いくら話してもしょうがないことばかりだから、こんな話は早いとこ切り上げてしまおう。
「なんか……別れてホッとしてるなら、私が泣く必要なんてなさそうだけど?」
「確かにそうだ。じゃあ、今日は芙佳の話、聞かせてもらおうか」
應汰の言葉に驚いた私は、口に含んでいたビールを危うく吹き出しそうになった。
「えっ、私?!」
「たまには聞かせろよ」
私ねー、実はなんと、不倫してるんだー。
しかも相手は、専務の娘を妻に持つ上司!
直属の上司と不倫なんて、私、ヤバくない?
……とか、話せるわけないでしょ!!
「……イヤだ、話さない」
「なんで?」
「なんでも。何も面白い事なんかないから」
應汰は、かたくなに拒否する私を、怪訝な顔で見ながらビールを飲む。
「別に面白い事なんかなくてもいいけどなぁ。前に言ってた歳上の彼氏とは続いてんの?」
「……とりあえず」
「付き合ってもう長いんだろ?」
「……4年半……かな……」
「それこそ結婚の話とか、出るだろ?」
4年半も付き合っていれば、これは当然の反応なんだと思う。
だけどそれは普通の恋人同士の話であって、私の場合は相手が結婚しているんだから、そんな話があるわけがない。
「……それはないよ」
「なんで?もしかしてわけあり?」
「……うん、大有り」
「それでも付き合ってるのはなんで?」
「なんで?って……。好きだからなんだと思う。でも……この先どんなに一緒にいても、その人とは結婚とか無理だし、もういい加減やめようかなって思ってる」
應汰は首をかしげながらビールを飲んだ。
もうこれ以上話せることなんてないんだから、余計な突っ込みを入れるのはやめて欲しい。
持ち物はいつも割と高そうなブランド物が多かったし、仕事の後も同僚の若い子たちと連れだって、オシャレなレストランで女子会だとか、金銭感覚はあまりなさそうだった。
よほど高収入の人でない限り、結婚後もあんな生活をしていたら破産しかねない。
「結婚して生活やってけるのかな?」
「そこだよ。料理もまともにできないのに結婚して専業主婦になって、旦那に甘えようとしてる感じだった」
應汰は結婚相手には厳しいのか、それなりの理想があるみたいだ。
完璧な奥さんを求めているとまでは言わないけど、彼女と奥さんは別。
そんな気がする。
「……じゃあなんで付き合ってたの?」
「付き合ってくれって言われたから。付き合ってみないと相手の事はわからないだろ」
確かに、應汰の言うことはもっともだ。
應汰は付き合ってみて初めて、舞が生活力のない浪費家で結婚願望が強いということを知ったと、そんなとこか。
「まあ、そうだね。私はてっきり顔で選んでるのかと思ってた」
「顔は確かにかわいかったけどな。正直言うとさ……付き合ってみて、ちょっと合わないかもって思い始めてたから、別れようって向こうが言ってくれてホッとした」
なるほど。
舞は應汰よりも早くそれを察知して、結婚する気のない應汰に、とっとと見切りをつけたわけだな。
お互いに求めるものが違うと気付いて別れたのなら、円満な破局と言えるだろう。
別れて間もないうちに他の人と結婚すると知ったときには驚きもしただろうけど、付き合っているときに他の人と結婚された私に比べたら、まだまだ救いようがあると思う。
「芙佳、もっと飲めよ。ビールおかわりは?」
「もらう」
残っていたビールを飲み干して、ビールのおかわりを受け取った。
なんだかさっきから聞いていると、應汰はたいしたダメージを受けていなさそうだ。
むしろ私の方が結婚という現実を考えて重い気持ちになっているような気がする。
他の人と結婚してしまった元恋人の話なんて、いくら話してもしょうがないことばかりだから、こんな話は早いとこ切り上げてしまおう。
「なんか……別れてホッとしてるなら、私が泣く必要なんてなさそうだけど?」
「確かにそうだ。じゃあ、今日は芙佳の話、聞かせてもらおうか」
應汰の言葉に驚いた私は、口に含んでいたビールを危うく吹き出しそうになった。
「えっ、私?!」
「たまには聞かせろよ」
私ねー、実はなんと、不倫してるんだー。
しかも相手は、専務の娘を妻に持つ上司!
直属の上司と不倫なんて、私、ヤバくない?
……とか、話せるわけないでしょ!!
「……イヤだ、話さない」
「なんで?」
「なんでも。何も面白い事なんかないから」
應汰は、かたくなに拒否する私を、怪訝な顔で見ながらビールを飲む。
「別に面白い事なんかなくてもいいけどなぁ。前に言ってた歳上の彼氏とは続いてんの?」
「……とりあえず」
「付き合ってもう長いんだろ?」
「……4年半……かな……」
「それこそ結婚の話とか、出るだろ?」
4年半も付き合っていれば、これは当然の反応なんだと思う。
だけどそれは普通の恋人同士の話であって、私の場合は相手が結婚しているんだから、そんな話があるわけがない。
「……それはないよ」
「なんで?もしかしてわけあり?」
「……うん、大有り」
「それでも付き合ってるのはなんで?」
「なんで?って……。好きだからなんだと思う。でも……この先どんなに一緒にいても、その人とは結婚とか無理だし、もういい加減やめようかなって思ってる」
應汰は首をかしげながらビールを飲んだ。
もうこれ以上話せることなんてないんだから、余計な突っ込みを入れるのはやめて欲しい。
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