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さよならプリテンダー
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「ちゃんと言って。僕の事、好き?」
「……す……好き……」
「ホントに?いつから?」
「婚約者のふりを頼む前から……私はずっと鴫野の事が好きだった……。好きじゃなかったら酔っていてもあんなことをされたら絶対に許さないし、婚約者のふりして一緒に暮らせなんて言わない……」
僕が思っていたより杏さんが僕を好きでいてくれた事が嬉しくて、胸が張り裂けそうなほど高鳴る。
僕は思いきり杏さんを抱きしめた。
「僕も杏が好きだよ。ずっと言いたかったんだ。会えなくなってすごく寂しくて、ずっと杏の事ばっかり考えておかしくなりそうだった」
「……ホントに?」
「うん、ホントに。僕はもう杏がいないとダメみたいだ」
杏さんの唇に、そっと唇を重ねた。
ほんの一瞬触れ合うだけのキスに、心が温かく満たされる。
「偽物じゃなくて……今度は、本物の恋人になろう」
耳元で囁くと、杏さんは小さくうなずいた。
僕の腕の中で、杏さんが照れくさそうに笑った。
その笑顔がかわいくて、杏さんが笑ってくれた事が嬉しくて、もう一度優しいキスをした。
「お弁当作るから、また一緒に遊園地に行こう。今度は観覧車にも乗ろうね」
「うん、乗りたい」
「これからはふりじゃなくて、杏にだけ優しくしてあげる。大好きだよ」
「章悟……私も好き……」
抱きしめて、髪を撫でて、何度も優しくキスをした。
幸せで温かくて、胸がいっぱいになる。
「ずっと一緒に御飯食べよう。杏のために毎日美味しいものたくさん作るから」
「うん。私も章悟と一緒に、毎日章悟の作った料理食べたい」
杏さんは僕の手を握って穏やかに微笑んだ。
「杏にちゃんと御飯食べさせてあげられるの、僕だけだもんね」
「だったら章悟は一生私から離れるわけにはいかないね」
「もちろん絶対に離れないし、離さない。今度は僕が杏を残さず食べるから覚悟して」
首筋に軽く口付けると、杏さんは恥ずかしそうに顔を覆った。
「ばっ……バカ……!!そういうのはまだ早い……!」
僕はその手を取って、真っ赤になった顔を覗き込む。
「せっかくのかわいい顔を隠しちゃダメだよ。ホントは今すぐにでも食べたいくらいだけど、僕は杏の恥ずかしがる顔もウブでかわいいところも大好きだから、ゆっくり気長に行く事にするよ。杏の嫌がる事はしないって約束する」
頬にチュッと口付けると、杏さんはくすぐったそうに首をすくめた。
杏さんは戸惑っているみたいだ。
「……章悟、性格変わった?」
「どうかな?でももうプリテンダーはやめたんだ。これがホントの僕。だから杏もこれからは僕の前では強がらないで、ありのままの杏でいて」
「そうする。じゃあ……もっと優しくして」
「ホントは甘えん坊なんだ」
「章悟にだけはね」
「いいよ。これでもかってくらい優しくしてあげる。大好きだよ」
優しく抱きしめて、何度も優しくキスをして、僕はこの腕の中に杏さんがいる幸せを噛みしめた。
偽物の婚約者は、本物の恋人に。
自分を偽るのをやめた僕はもう、君しか要らない。
これからは一番そばで、他の誰も知らない君の素顔を見せて。
─END─
「……す……好き……」
「ホントに?いつから?」
「婚約者のふりを頼む前から……私はずっと鴫野の事が好きだった……。好きじゃなかったら酔っていてもあんなことをされたら絶対に許さないし、婚約者のふりして一緒に暮らせなんて言わない……」
僕が思っていたより杏さんが僕を好きでいてくれた事が嬉しくて、胸が張り裂けそうなほど高鳴る。
僕は思いきり杏さんを抱きしめた。
「僕も杏が好きだよ。ずっと言いたかったんだ。会えなくなってすごく寂しくて、ずっと杏の事ばっかり考えておかしくなりそうだった」
「……ホントに?」
「うん、ホントに。僕はもう杏がいないとダメみたいだ」
杏さんの唇に、そっと唇を重ねた。
ほんの一瞬触れ合うだけのキスに、心が温かく満たされる。
「偽物じゃなくて……今度は、本物の恋人になろう」
耳元で囁くと、杏さんは小さくうなずいた。
僕の腕の中で、杏さんが照れくさそうに笑った。
その笑顔がかわいくて、杏さんが笑ってくれた事が嬉しくて、もう一度優しいキスをした。
「お弁当作るから、また一緒に遊園地に行こう。今度は観覧車にも乗ろうね」
「うん、乗りたい」
「これからはふりじゃなくて、杏にだけ優しくしてあげる。大好きだよ」
「章悟……私も好き……」
抱きしめて、髪を撫でて、何度も優しくキスをした。
幸せで温かくて、胸がいっぱいになる。
「ずっと一緒に御飯食べよう。杏のために毎日美味しいものたくさん作るから」
「うん。私も章悟と一緒に、毎日章悟の作った料理食べたい」
杏さんは僕の手を握って穏やかに微笑んだ。
「杏にちゃんと御飯食べさせてあげられるの、僕だけだもんね」
「だったら章悟は一生私から離れるわけにはいかないね」
「もちろん絶対に離れないし、離さない。今度は僕が杏を残さず食べるから覚悟して」
首筋に軽く口付けると、杏さんは恥ずかしそうに顔を覆った。
「ばっ……バカ……!!そういうのはまだ早い……!」
僕はその手を取って、真っ赤になった顔を覗き込む。
「せっかくのかわいい顔を隠しちゃダメだよ。ホントは今すぐにでも食べたいくらいだけど、僕は杏の恥ずかしがる顔もウブでかわいいところも大好きだから、ゆっくり気長に行く事にするよ。杏の嫌がる事はしないって約束する」
頬にチュッと口付けると、杏さんはくすぐったそうに首をすくめた。
杏さんは戸惑っているみたいだ。
「……章悟、性格変わった?」
「どうかな?でももうプリテンダーはやめたんだ。これがホントの僕。だから杏もこれからは僕の前では強がらないで、ありのままの杏でいて」
「そうする。じゃあ……もっと優しくして」
「ホントは甘えん坊なんだ」
「章悟にだけはね」
「いいよ。これでもかってくらい優しくしてあげる。大好きだよ」
優しく抱きしめて、何度も優しくキスをして、僕はこの腕の中に杏さんがいる幸せを噛みしめた。
偽物の婚約者は、本物の恋人に。
自分を偽るのをやめた僕はもう、君しか要らない。
これからは一番そばで、他の誰も知らない君の素顔を見せて。
─END─
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