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嵐の後の胸騒ぎ
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なんて奴だ。
ガキのくせに買収や脅迫をはたらくなんて恐ろしい。
確かにあいつは僕を庶民だとバカにしていた。
子供の頃からその辺はまったく変わってないと言う事だ。
杏さんにそんな奴と一緒になって欲しくない。
「それにしても……どうして杏お嬢さんは急に会社を辞めて家に戻る事にしたの?」
「うん……会社でいろいろあって……」
会社で起こった盗作騒動や、杏さんが有澤家の人間であることが社内で知られ責任を取る形で会社を辞めた事を話すと、ばあちゃんは目頭を押さえながら何度も首を横に振った。
「おかわいそうに……濡れ衣を着せられたままで会社を辞めさせられるなんて……」
「杏さんは何も悪くないのに見せしめにされてさ。杏さんはどちらにしても有澤家に戻るために会社を辞めるつもりでいたとは言ってたけど……」
盗作騒動がなければ、杏さんがあんな形で会社を辞める事はなかったはずだ。
今更ながらデータを盗んだ犯人が恨めしい。
「でもおかしな話ね。あの天下の大企業の有澤が、盗作なんてケチな事をするかしら」
「うーん……。有澤グループって言っても会社はたくさんあるからなぁ。それこそお祖父様や社長の目の届かない場所で誰かが……」
いや、待てよ。
その誰かって、結局誰なんだ?
あの盗作騒動は誰かが杏さんを陥れるために企んだとして、なぜ盗まれたのが僕のデータだけなんだろう?
他にも人気になりそうなメニューがたくさんあったはずなのに、よりによって僕の作った地味なメニューだけが盗まれた事が腑に落ちない。
「ばあちゃん。商品化が決まってた物だけじゃなくて、商品化にこぎつけなかった物まで僕のメニューだけが盗まれたんだよ。どう思う?」
僕が尋ねると、ばあちゃんはお茶を飲みながら顔をしかめた。
「章悟、誰かに恨まれるような事した?」
「僕が?」
人に恨まれるような事って……なんかしたっけ?
知らず知らずのうちに誰かを傷付けたり、恨みを買うような事はないとは言い切れないけれど、僕には心当たりがない。
「章悟に恨みのある人間が杏お嬢さんを辞めさせるための駒として章悟を狙ったのかも……。こういう場合は大抵、個人的な怨恨の可能性が高くて、実行犯と別に黒幕がいるのよね」
「そうなんだ……」
ばあちゃんは腕組みをして頭を左右に揺らし始めた。
ああ、久々に出た。
ばあちゃんは推理物のドラマが大好きで、ドラマを見ながらこのポーズを取って犯行手口や真犯人を推理する。
ばあちゃん探偵・弥栄子降臨だ。
「黒幕も実行犯も、杏お嬢さんと章悟の両方を知ってる人間じゃないの?」
「それって……社内の人間って事?」
「黒幕は二人をよく知っている社内の人間を使って犯行に及んだと……。黒幕の狙いは杏お嬢さんだとして……どんな甘い話で実行犯をたぶらかしたのかしら」
なんかいきいきしてるな。
ばあちゃんが歳の割に元気でしっかりしているのは、推理ドラマで脳を活性化させてるからなのかも知れない。
ばあちゃんはさっきから一人でブツブツ呟いている。
こうなると長いんだ。
僕は急須にお湯を注ぎ、湯飲みに熱いお茶を淹れた。
それにしても社内の人間って……一体どれだけいると思ってんだ。
そんなの、まず一番に疑われるのは僕だろう。
試作室に頻繁に出入りする社員も別室に呼ばれて、いろいろ聞かれたと言っていた。
矢野さんは普段から交遊関係が広いから、他の人たちよりあれこれ聞かれたみたいだった。
ガキのくせに買収や脅迫をはたらくなんて恐ろしい。
確かにあいつは僕を庶民だとバカにしていた。
子供の頃からその辺はまったく変わってないと言う事だ。
杏さんにそんな奴と一緒になって欲しくない。
「それにしても……どうして杏お嬢さんは急に会社を辞めて家に戻る事にしたの?」
「うん……会社でいろいろあって……」
会社で起こった盗作騒動や、杏さんが有澤家の人間であることが社内で知られ責任を取る形で会社を辞めた事を話すと、ばあちゃんは目頭を押さえながら何度も首を横に振った。
「おかわいそうに……濡れ衣を着せられたままで会社を辞めさせられるなんて……」
「杏さんは何も悪くないのに見せしめにされてさ。杏さんはどちらにしても有澤家に戻るために会社を辞めるつもりでいたとは言ってたけど……」
盗作騒動がなければ、杏さんがあんな形で会社を辞める事はなかったはずだ。
今更ながらデータを盗んだ犯人が恨めしい。
「でもおかしな話ね。あの天下の大企業の有澤が、盗作なんてケチな事をするかしら」
「うーん……。有澤グループって言っても会社はたくさんあるからなぁ。それこそお祖父様や社長の目の届かない場所で誰かが……」
いや、待てよ。
その誰かって、結局誰なんだ?
あの盗作騒動は誰かが杏さんを陥れるために企んだとして、なぜ盗まれたのが僕のデータだけなんだろう?
他にも人気になりそうなメニューがたくさんあったはずなのに、よりによって僕の作った地味なメニューだけが盗まれた事が腑に落ちない。
「ばあちゃん。商品化が決まってた物だけじゃなくて、商品化にこぎつけなかった物まで僕のメニューだけが盗まれたんだよ。どう思う?」
僕が尋ねると、ばあちゃんはお茶を飲みながら顔をしかめた。
「章悟、誰かに恨まれるような事した?」
「僕が?」
人に恨まれるような事って……なんかしたっけ?
知らず知らずのうちに誰かを傷付けたり、恨みを買うような事はないとは言い切れないけれど、僕には心当たりがない。
「章悟に恨みのある人間が杏お嬢さんを辞めさせるための駒として章悟を狙ったのかも……。こういう場合は大抵、個人的な怨恨の可能性が高くて、実行犯と別に黒幕がいるのよね」
「そうなんだ……」
ばあちゃんは腕組みをして頭を左右に揺らし始めた。
ああ、久々に出た。
ばあちゃんは推理物のドラマが大好きで、ドラマを見ながらこのポーズを取って犯行手口や真犯人を推理する。
ばあちゃん探偵・弥栄子降臨だ。
「黒幕も実行犯も、杏お嬢さんと章悟の両方を知ってる人間じゃないの?」
「それって……社内の人間って事?」
「黒幕は二人をよく知っている社内の人間を使って犯行に及んだと……。黒幕の狙いは杏お嬢さんだとして……どんな甘い話で実行犯をたぶらかしたのかしら」
なんかいきいきしてるな。
ばあちゃんが歳の割に元気でしっかりしているのは、推理ドラマで脳を活性化させてるからなのかも知れない。
ばあちゃんはさっきから一人でブツブツ呟いている。
こうなると長いんだ。
僕は急須にお湯を注ぎ、湯飲みに熱いお茶を淹れた。
それにしても社内の人間って……一体どれだけいると思ってんだ。
そんなの、まず一番に疑われるのは僕だろう。
試作室に頻繁に出入りする社員も別室に呼ばれて、いろいろ聞かれたと言っていた。
矢野さんは普段から交遊関係が広いから、他の人たちよりあれこれ聞かれたみたいだった。
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