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不条理な関係
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「そう思うなら、誰か他の人見つけて。渡部さんは僕を買い被りすぎなんだ。僕は渡部さんが思ってるような優しい男じゃない。キスぐらい好きでもなんでもない女の子とだってするし、体を弄んだりもする。それは渡部さんが一番わかるよね?」
ひどい事を言っている自覚はある。
だけどこれが僕の本音なのだ。
今度こそ帰ろう。
そう思って立ち上がろうとした時、渡部さんが僕の手を掴んだ。
「待って、鴫野くん……これで終わりにするから……」
渡部さんは大粒の涙をこぼしながら、「一度だけでいいから抱いて」と言った。
胸にしがみついて涙を流す渡部さんを、僕は他人事みたいに冷めた気持ちで眺めた。
もうこの涙にも欲情を煽られたりはしない。
涙は男をおとすための切り札か何かだと思ってるんだろうか。
とんだ勘違いだよ、それ。
往生際が悪いって、こういう事を言うんだな。
しつこいのは好きじゃない。
ホントに一度だけでキッパリあきらめるのか?
「お願い……」
渡部さんがまた呟いた。
「ホントに一度だけ?」
「……うん」
「優しくなんかできないけど、それでもいい?」
渡部さんは少し悲しげにうなずいた。
「だったら渡部さんがその気にさせてよ」
僕がネクタイをゆるめながら冷たい口調でそう言うと、渡部さんは僕の前に跪き、ズボンのファスナーを下ろして自らそれを口に含んだ。
今まで大事に付き合ってきた女の子にはこんなことさせなかったし、渡部さんにも強要はしていない。
これは渡部さんの意志でしていることだ。
さっさと事を終わらせるために体の奥を激しくかき混ぜてやると、彼女はくぐもった声をあげながら蜜を滴らせた。
愛情はなくても性感帯を刺激されれば体はそれなりに反応するものだ。
渡部さんのお世辞にもうまいとは言えない舌使いで準備が整うと、泣き顔が見えないように這いつくばらせた彼女の体を後ろから乱暴に突き上げ無機的に抱いた。
そこには優しさどころか欠片ほどの同情さえもなかった。
この曖昧で不条理な関係を終わらせるためだけの愛のないセックスは、何も満たしてはくれない。
虚しさと自分の薄汚さで吐き気がした。
それから渡部さんは泣きながら僕の手を握って眠ってしまった。
渡部さんだってきっと、こんな事したってなんの意味もないってわかってる。
結局、僕の胸に残ったのは後悔だけ。
僕はもう何も考えたくなくて、激しく回り始めた酔いと疲労感に抗えない体を横たえ目を閉じた。
いつの間に眠っていたのか、見慣れない天井の下で目が覚めた。
状況がよくつかめず、ここはどこだろうとぼんやり考えていると、すぐ隣に人の気配を感じた。
……矢野さんの家に泊まったんだっけ?
少し首を動かして視線をそちらに向けると、渡部さんが裸で寝息をたてている。
僕は散らかった頭の中を必死でフル回転させた。
矢野さんと食事をしようと一緒に会社を出て、その店に渡部さんがいて、3人で食事をして、それから……。
店からこの部屋まで渡部さんを送った後の記憶が少しずつ蘇り、僕は一気に青ざめる。
ひどい事を言っている自覚はある。
だけどこれが僕の本音なのだ。
今度こそ帰ろう。
そう思って立ち上がろうとした時、渡部さんが僕の手を掴んだ。
「待って、鴫野くん……これで終わりにするから……」
渡部さんは大粒の涙をこぼしながら、「一度だけでいいから抱いて」と言った。
胸にしがみついて涙を流す渡部さんを、僕は他人事みたいに冷めた気持ちで眺めた。
もうこの涙にも欲情を煽られたりはしない。
涙は男をおとすための切り札か何かだと思ってるんだろうか。
とんだ勘違いだよ、それ。
往生際が悪いって、こういう事を言うんだな。
しつこいのは好きじゃない。
ホントに一度だけでキッパリあきらめるのか?
「お願い……」
渡部さんがまた呟いた。
「ホントに一度だけ?」
「……うん」
「優しくなんかできないけど、それでもいい?」
渡部さんは少し悲しげにうなずいた。
「だったら渡部さんがその気にさせてよ」
僕がネクタイをゆるめながら冷たい口調でそう言うと、渡部さんは僕の前に跪き、ズボンのファスナーを下ろして自らそれを口に含んだ。
今まで大事に付き合ってきた女の子にはこんなことさせなかったし、渡部さんにも強要はしていない。
これは渡部さんの意志でしていることだ。
さっさと事を終わらせるために体の奥を激しくかき混ぜてやると、彼女はくぐもった声をあげながら蜜を滴らせた。
愛情はなくても性感帯を刺激されれば体はそれなりに反応するものだ。
渡部さんのお世辞にもうまいとは言えない舌使いで準備が整うと、泣き顔が見えないように這いつくばらせた彼女の体を後ろから乱暴に突き上げ無機的に抱いた。
そこには優しさどころか欠片ほどの同情さえもなかった。
この曖昧で不条理な関係を終わらせるためだけの愛のないセックスは、何も満たしてはくれない。
虚しさと自分の薄汚さで吐き気がした。
それから渡部さんは泣きながら僕の手を握って眠ってしまった。
渡部さんだってきっと、こんな事したってなんの意味もないってわかってる。
結局、僕の胸に残ったのは後悔だけ。
僕はもう何も考えたくなくて、激しく回り始めた酔いと疲労感に抗えない体を横たえ目を閉じた。
いつの間に眠っていたのか、見慣れない天井の下で目が覚めた。
状況がよくつかめず、ここはどこだろうとぼんやり考えていると、すぐ隣に人の気配を感じた。
……矢野さんの家に泊まったんだっけ?
少し首を動かして視線をそちらに向けると、渡部さんが裸で寝息をたてている。
僕は散らかった頭の中を必死でフル回転させた。
矢野さんと食事をしようと一緒に会社を出て、その店に渡部さんがいて、3人で食事をして、それから……。
店からこの部屋まで渡部さんを送った後の記憶が少しずつ蘇り、僕は一気に青ざめる。
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