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もうひとつの問題
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よくもまぁ自分が出来もしないことを偉そうに言えたもんだな。
『野菜中心のヘルシーメニュー』なんて、若い女性の大半がサラダとかポトフなんかの洋風のものを選ぶに違いない。
そんな女性受けしそうなメニューも、今回のシリーズ企画のラインナップにたくさん入っている。
だけどコンビニは若者だけのものではないから、こういったシニアが好みそうな和風のお総菜も必要だと僕は思う。
ばあちゃんがこの料理を見たらなんて言うだろう?
シニア向けの商品は味も見た目もシニア世代の人に見てもらうのが一番だと思うのに、広報部はよりによって、なんでこんな若いのを寄越すんだ。
広報部は少し不服そうではあったけど、角度がどうとか光の加減がどうとか、なんだかんだ言いながら写真を撮った。
渡部さんはカメラを持ったこの若い男の後ろで何やらメモを取っている。
まさか『地味すぎて商品化する価値無し』なんてことを書かれているんだろうか?
広報部内の会議でまるごとボツにされそうな予感しかしない。
「一応、改善策も考えてみますよ」
「それじゃ、次の試作ができ次第連絡お願いします。なる早で!」
「はぁ……わかりました」
なる早で!って……。
どう見てもこの男は僕より歳上だろう?
入社何年目だか知らないけれど、『なるべく早くお願いします』とは言えんもんかね?
もしかして杏さんは、僕のこういう年寄りくさいところが『ばあやっぽい』と言ったのか?
納得がいかないながらもなんとか撮影を終えて片付けをしていると、渡部さんが試作室を出る直前に僕の白衣のポケットに何かをねじ込んだ。
ポケットを探ると折り畳まれた紙切れが指先に当たる。
ああ……見たくないよ……。
しかしブツを残されたからには無視することもできない。
僕は矢野さんがパソコンに向かっている隙に、ポケットから渡部さんのねじ込んだメモをコソッと取り出した。
これは返事を急かされるパターンかな?
できれば、この間の話はなかった事に……って言ってくれたらいいんだけど。
そんなことを思いながらおそるおそるメモを開く。
『5時半に第2会議室で待ってます』
やっぱりそう来たか……。
返事急かされるパターンだ、これ。
広報部に出す改善策も考えなきゃいけないのに、定時で仕事終われるかな?
僕は渡部さんへの断りの文句を考えながら片付けの続きに取り掛かった。
午後5時半、いつも通りに定時のチャイムが鳴った。
いつもは仕事からやっと解放されると心踊るはずの聞き慣れたチャイムの音が、今日は地獄に繋がる門の開く音に聞こえる。
一応、仕事は定時で終わった。
僕は鞄を持って席を立ち、できるだけ自然に部署を出た。
しかしその足取りは、とてつもなく重い。
それにしても……第2会議室を指定して来るあたり、渡部さんは本気で僕と決着をつけたいらしい。
第2会議室は少し不便な場所にあるので、あまり使われていないようだ。
それにこの時間は会議なんてしていない。
この間みたいに邪魔が入るのを避けたいんだろう。
それって考えようによっては、僕と成り行きで何があってもいいって事にも思える。
渡部さんって純情そうな見掛けによらず、やっぱり怖い。
『野菜中心のヘルシーメニュー』なんて、若い女性の大半がサラダとかポトフなんかの洋風のものを選ぶに違いない。
そんな女性受けしそうなメニューも、今回のシリーズ企画のラインナップにたくさん入っている。
だけどコンビニは若者だけのものではないから、こういったシニアが好みそうな和風のお総菜も必要だと僕は思う。
ばあちゃんがこの料理を見たらなんて言うだろう?
シニア向けの商品は味も見た目もシニア世代の人に見てもらうのが一番だと思うのに、広報部はよりによって、なんでこんな若いのを寄越すんだ。
広報部は少し不服そうではあったけど、角度がどうとか光の加減がどうとか、なんだかんだ言いながら写真を撮った。
渡部さんはカメラを持ったこの若い男の後ろで何やらメモを取っている。
まさか『地味すぎて商品化する価値無し』なんてことを書かれているんだろうか?
広報部内の会議でまるごとボツにされそうな予感しかしない。
「一応、改善策も考えてみますよ」
「それじゃ、次の試作ができ次第連絡お願いします。なる早で!」
「はぁ……わかりました」
なる早で!って……。
どう見てもこの男は僕より歳上だろう?
入社何年目だか知らないけれど、『なるべく早くお願いします』とは言えんもんかね?
もしかして杏さんは、僕のこういう年寄りくさいところが『ばあやっぽい』と言ったのか?
納得がいかないながらもなんとか撮影を終えて片付けをしていると、渡部さんが試作室を出る直前に僕の白衣のポケットに何かをねじ込んだ。
ポケットを探ると折り畳まれた紙切れが指先に当たる。
ああ……見たくないよ……。
しかしブツを残されたからには無視することもできない。
僕は矢野さんがパソコンに向かっている隙に、ポケットから渡部さんのねじ込んだメモをコソッと取り出した。
これは返事を急かされるパターンかな?
できれば、この間の話はなかった事に……って言ってくれたらいいんだけど。
そんなことを思いながらおそるおそるメモを開く。
『5時半に第2会議室で待ってます』
やっぱりそう来たか……。
返事急かされるパターンだ、これ。
広報部に出す改善策も考えなきゃいけないのに、定時で仕事終われるかな?
僕は渡部さんへの断りの文句を考えながら片付けの続きに取り掛かった。
午後5時半、いつも通りに定時のチャイムが鳴った。
いつもは仕事からやっと解放されると心踊るはずの聞き慣れたチャイムの音が、今日は地獄に繋がる門の開く音に聞こえる。
一応、仕事は定時で終わった。
僕は鞄を持って席を立ち、できるだけ自然に部署を出た。
しかしその足取りは、とてつもなく重い。
それにしても……第2会議室を指定して来るあたり、渡部さんは本気で僕と決着をつけたいらしい。
第2会議室は少し不便な場所にあるので、あまり使われていないようだ。
それにこの時間は会議なんてしていない。
この間みたいに邪魔が入るのを避けたいんだろう。
それって考えようによっては、僕と成り行きで何があってもいいって事にも思える。
渡部さんって純情そうな見掛けによらず、やっぱり怖い。
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