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もうひとつの問題
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「お願い鴫野くん……。キスだけじゃやだ……。もっとして……」
……うまくいった。
僕は心の中で高笑いしながら、期待に火照る渡部さんの体を慰めてやった。
僕の手が胸の膨らみや柔らかいところを布越しに撫でるたびに、彼女は切なげに甘い声を漏らす。
下着のわきから指を滑り込ませると、僕という男に飢えた体は湿った音をたてて僕の指をやすやすと飲み込んだ。
そのうち渡部さんは椅子に座っていられなくなるほど足をガクガクさせて、ズルズルとなだれ込むようにして床の上に横たわり、全身を震わせながら僕の背中にしがみつく。
僕の指の動きに反応して喘ぐ声が、大人しそうな見た目に反してかなりエロい。
喘げ。
もっと乱れろ。
……やらしい女。
渡部さんはこうなる事を期待して、僕をここに呼び出したんだ。
望み通りに弄んでやる。
後々厄介な事になるのは避けたいから、さすがにここでは最後まで残さず食ったりはしない。
けれど、僕の指で何度も果てた彼女は満足げだった。
そこに愛もないのに、女ってわからない。
それからしばらくして、時間をずらして第2会議室を出た僕と渡部さんは別々に帰路に就いた。
電車に揺られながら、改めてさっきの出来事を振り返る。
場所をわきまえろって杏さんから叱られたとこなのに、なんで僕はあんな所であんな事をしたんだろう?
『女ってわからない』なんて、わからないのは僕自身も同じじゃないか。
彼女の事は好きだとか付き合いたいなんて、これっぽっちも思っていない。
好きだから付き合って欲しいという告白は断っておいて、どうしてあんなふうに彼女の体を弄んだりするのか。
なんだかものすごい罪悪感で、自分自身のゲスさが気持ち悪くて吐き気がする。
あんな事、もうこれっきりにしたい。
でももしかしたら、渡部さんは『体だけでもいいから』と言って今後も僕との関係を求めて来るかも知れない。
好き合ってもいない相手とあんな事して、何が楽しいんだ?
頭ではそう思っているはずなのに、あの時僕は確かに、渡部さんをめちゃくちゃに乱してやりたいと思っていた。
自分の事を好きでもなんでもないと思っている男にいいように体を弄ばれて悦ぶ渡部さんの事を、心の中で嘲笑っていたのはほかでもない僕自身だ。
やっぱりおかしい。
僕は激しく自己嫌悪に陥る。
そして自分が自分じゃないような、妙な感覚に苛まれながら電車を降りた。
「遅かったな」
リビングに入った瞬間、杏さんがこちらに目も向けずに言葉を発した。
まさか今日に限って杏さんがこんなに早く帰宅しているとは思いもしなかった。
僕は必死で頭の中を動かして言い訳を探す。
「定時で上がったんじゃなかったのか?」
さすがデキる部長……。
部下をよく見ていらっしゃる。
「そうなんですけどね……。途中で知り合いに会って、少し話し込んでしまいました。それから買い物に行ったので……」
「そうか。あんまり遅いから心配したじゃないか」
「すみません……」
この間会議室でのキスシーンを見られた女の子とチチくり合ってたなんて、杏さんには口が裂けても言えないよ……。
ふりとは言え、僕は今、杏さんの婚約者なんだから。
……うまくいった。
僕は心の中で高笑いしながら、期待に火照る渡部さんの体を慰めてやった。
僕の手が胸の膨らみや柔らかいところを布越しに撫でるたびに、彼女は切なげに甘い声を漏らす。
下着のわきから指を滑り込ませると、僕という男に飢えた体は湿った音をたてて僕の指をやすやすと飲み込んだ。
そのうち渡部さんは椅子に座っていられなくなるほど足をガクガクさせて、ズルズルとなだれ込むようにして床の上に横たわり、全身を震わせながら僕の背中にしがみつく。
僕の指の動きに反応して喘ぐ声が、大人しそうな見た目に反してかなりエロい。
喘げ。
もっと乱れろ。
……やらしい女。
渡部さんはこうなる事を期待して、僕をここに呼び出したんだ。
望み通りに弄んでやる。
後々厄介な事になるのは避けたいから、さすがにここでは最後まで残さず食ったりはしない。
けれど、僕の指で何度も果てた彼女は満足げだった。
そこに愛もないのに、女ってわからない。
それからしばらくして、時間をずらして第2会議室を出た僕と渡部さんは別々に帰路に就いた。
電車に揺られながら、改めてさっきの出来事を振り返る。
場所をわきまえろって杏さんから叱られたとこなのに、なんで僕はあんな所であんな事をしたんだろう?
『女ってわからない』なんて、わからないのは僕自身も同じじゃないか。
彼女の事は好きだとか付き合いたいなんて、これっぽっちも思っていない。
好きだから付き合って欲しいという告白は断っておいて、どうしてあんなふうに彼女の体を弄んだりするのか。
なんだかものすごい罪悪感で、自分自身のゲスさが気持ち悪くて吐き気がする。
あんな事、もうこれっきりにしたい。
でももしかしたら、渡部さんは『体だけでもいいから』と言って今後も僕との関係を求めて来るかも知れない。
好き合ってもいない相手とあんな事して、何が楽しいんだ?
頭ではそう思っているはずなのに、あの時僕は確かに、渡部さんをめちゃくちゃに乱してやりたいと思っていた。
自分の事を好きでもなんでもないと思っている男にいいように体を弄ばれて悦ぶ渡部さんの事を、心の中で嘲笑っていたのはほかでもない僕自身だ。
やっぱりおかしい。
僕は激しく自己嫌悪に陥る。
そして自分が自分じゃないような、妙な感覚に苛まれながら電車を降りた。
「遅かったな」
リビングに入った瞬間、杏さんがこちらに目も向けずに言葉を発した。
まさか今日に限って杏さんがこんなに早く帰宅しているとは思いもしなかった。
僕は必死で頭の中を動かして言い訳を探す。
「定時で上がったんじゃなかったのか?」
さすがデキる部長……。
部下をよく見ていらっしゃる。
「そうなんですけどね……。途中で知り合いに会って、少し話し込んでしまいました。それから買い物に行ったので……」
「そうか。あんまり遅いから心配したじゃないか」
「すみません……」
この間会議室でのキスシーンを見られた女の子とチチくり合ってたなんて、杏さんには口が裂けても言えないよ……。
ふりとは言え、僕は今、杏さんの婚約者なんだから。
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