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二人のルール

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「安心してください、あんなことはもうしませんよ」
「本当だろうな……?」

杏さんは疑わしげに僕を見た。
疑われても仕方がないようなことをしてしまったのは僕だし、安心して生活してもらえるように、深く反省していることを言葉と態度で示しておかないと。

「ホントにしませんって……。いやがってる相手を無理やりどうにかしようなんて、本来の僕は思ってません」

僕の言葉を聞いて何を思ったのか、杏さんは顔を真っ赤にしてうつむいた。
もしかして……この間の事を思い出したのかな?
真っ赤になってる杏さんはいつもの杏さんとはまったく違って、ちょっとかわいい。
できればもっとそういう顔を見てみたいし、もう少しこのまま眺めていたい。

「杏さんがいやならもちろんしませんけど、合意の上ならいいですか?」

あれっ?口が勝手に……。
僕が無意識のうちに放った台詞で杏さんは更に顔を赤らめ、僕に思いきりクッションを投げ付けた。

「うわっ!」
「ばっ……バカ言うな!!合意なんかするわけないだろう!!」
「ですよね……。すみません冗談です、調子に乗り過ぎました」

そっと様子を窺うと、杏さんはまだ赤い顔をして、そっぽを向いている。
この顔、やっぱりかわいいな。

「それから……昨日も言ったように、どこで誰に見られているかわからないからな。他の女と外で会うのはしばらく我慢してくれ」
「外でダメならどこで会えばいいですか?ここにも呼べないし、会社でってわけにもいかないし……。どこでも会えませんよね?」

本当は二人きりで会いたいと思うような女の子なんていないのに、こう言えば杏さんはどう答えるのだろうと思ってわざと尋ねてみる。
杏さんは真面目な顔で少し首をかしげ、考えるそぶりを見せた。

「それもそうだな……。だったら我慢しろ」
「……できるかな。杏さんも合意してくれそうにないし……」

あっ、調子に乗ってまた余計な事を……!
僕が慌てて前言を撤回するより早く、杏さんはまた顔を赤くして、さっきより更に強い力で僕にクッションを投げ付けた。

「何がなんでも我慢しろ!!」
「が……頑張ります……」

杏さんって意外とからかい甲斐があるなぁ。
普段ポーカーフェイスで強気な分、こういう顔を見ると堪らない。
恥じらってうつむく顔を両手で押さえ込んで逃げ場を失わせて穴が空くほど眺めてやりたいとか、じわじわと追い詰めて怯えさせてすましている綺麗な顔を脅威に歪めてやりたいなんていう欲望が、僕の中でじわじわと湧いてくるのがわかる。
普段泣かない強い女が屈辱に涙している顔なんて、考えただけでゾクッとする。
ここにいる間に合意させたいな。
って言うか、杏さんからお願いさせて泣かせたいんだけど。
……って……僕はまた何を考えてるんだ?!
なんだか最近おかしいぞ?
欲望に勝てず我を忘れて無理やり襲うなんていうことが再び起きてしまったら、僕の人生は終わったも同然だ。
何があっても、何がなんでも、杏さんには触れないようにしないと!


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